こんにちは!Digital Piano Navi運営者のピア憎です。
これから電子ピアノを始めよう!と思ったとき、ネットで「買ってはいけない電子ピアノ」なんて言葉を見かけると、急に不安になってしまいますよね。どんなモデルが自分に合っているのか、膨大な情報の中から最適な一台を見つけ出すのは、本当に大変な作業だと思います。
特に初心者の方は、安いモデルに潜むデメリットは何か、鍵盤数はいくつあれば十分なのか、そして気になる寿命はどれくらいなのか、分からないことだらけかもしれません。さらに、ヤマハやカシオ、ローランドといった有名メーカーの中でも注意すべきモデルはあるのか、あるいは中古での購入を考えているけれど、どんな状態のものは避けるべきか、その具体的な特徴を知っておきたい、と考えている方も多いのではないでしょうか。
実は私も、最初に電子ピアノを選んだときは同じような疑問や不安でいっぱいでした。だからこそ、この記事ではあなたのそんな不安を解消するために、後悔しない電子ピアノ選びのポイントを、私の経験も交えながら、できるだけ分かりやすく、そして詳しく解説していきますね。この記事を最後まで読めば、漠然とした不安が解消され、自信を持ってあなたにピッタリの一台を選ぶための確かな知識が身についているはずです。
- 買ってはいけない電子ピアノに共通する具体的な特徴
- 価格やスペックで後悔しないための重要チェックポイント
- ヤマハ・カシオ・ローランドなど人気メーカーごとの賢い選び方
- 最終的に自分に合った一台を見つけるための思考法
後悔する買ってはいけない電子ピアノの特徴
まず最初に、一体どんな電子ピアノが「買ってはいけない」と言われてしまうのか、その具体的な特徴から詳しく見ていきましょう。これらのポイントは、単にスペックの話だけではなく、あなたの練習の質やモチベーション、ひいてはピアノの上達スピードにまで大きく影響する重要な要素です。ここをしっかり押さえておくだけで、致命的な失敗を避け、満足のいくピアノ選びができるようになりますよ。
買ってはいけない電子ピアノに共通する特徴
「買ってはいけない」と評価されてしまう電子ピアノには、いくつかの明確な共通点があります。これらは価格に関わらず見られる特徴で、特にピアノという楽器の本質に関わる部分です。これからピアノを長く楽しむためにも、以下の4つのポイントは必ずチェックするようにしてください。
1. 鍵盤のタッチが致命的に悪い
最も重要なのが、この「鍵盤のタッチ」です。アコースティックピアノは、鍵盤を押すとハンマーが動いて弦を叩くという仕組みで音を出します。そのため、鍵盤にはしっかりとした重みと手応えがあります。このリアルな弾き心地を再現できていない、スカスカと軽いタッチの鍵盤は絶対に避けるべきです。
軽い鍵盤で練習を続けると、指の力が全く育たず、正しい打鍵の仕方が身につきません。その結果、たまに本物のピアノを弾く機会があった時に、音が全く出せなかったり、指がすぐに疲れてしまったりして、「こんなはずじゃなかった…」と愕然とすることになります。
良い電子ピアノは、「ハンマーアクション」と呼ばれる機構を搭載し、低音域はずっしりと重く、高音域にいくにつれて軽くなるというグランドピアノの特性まで再現しています。購入前には必ず試弾して、自分の指で弾き心地を確かめることが不可欠です。
2. 音源(サウンド)の表現力が乏しい
次に重要なのが、ピアノの「脳」とも言える音源です。性能の低い音源だと、どれだけ強く弾いても弱く弾いても、音の大きさが少し変わるだけで、音色そのものが変化しません。これでは、楽曲に表情をつける練習ができず、演奏は非常に単調なものになってしまいます。
一方で、優れた音源は、ピアニッシモ(とても弱く)で弾いたときの優しく繊細な音色から、フォルテッシモ(とても強く)で弾いたときの華やかで力強い音色まで、打鍵のニュアンスに応じて無限とも言える多彩な音色を奏でてくれます。
また、「最大同時発音数」もチェックポイントです。これは同時にいくつの音を出せるかという性能値で、最低でも64音、できれば128音以上あるモデルを選びましょう。これが少ないと、ペダルを使って多くの音を重ねた際に、先に弾いた音から消えてしまう「音切れ」が発生し、演奏に集中できなくなってしまいます。
3. スピーカーの品質が低く音がこもる
いくら音源が素晴らしくても、その音を再生するスピーカーの品質が低ければ台無しです。安価なモデルでは、スピーカーが小さく、数も少ないため、音がこもって聞こえたり、高音域がキンキンしたり、低音域がスカスカだったりと、非常にチープなサウンドになりがちです。
良い音で練習することは、耳を育てる上でも非常に重要です。ピアノ本来の豊かな響きを感じられないと、練習のモチベーションも上がりませんよね。ヘッドホンを使えば解決する部分もありますが、やはりスピーカーから直接出る音の良さは、演奏の臨場感や楽しさに直結します。スピーカーのワット数だけでなく、搭載されている数や配置にも注目してみると良いでしょう。
4. ペダルの機能が不十分である
意外と見落としがちなのがペダルです。特に重要なのが、右側のダンパーペダル。安価なモデルに付属しているスイッチ式のペダルは、踏むか離すかのオンオフしかできず、微妙な響きのコントロールができません。
ピアノの演奏では、ペダルを半分だけ踏む「ハーフペダル」というテクニックが不可欠です。このハーフペダルに対応しているかどうかは、表現の幅を大きく左右する重要なポイントです。最初は必要ないと感じるかもしれませんが、上達するにつれて必ず必要になります。最初からハーフペダル対応のペダルが付属しているか、後から追加できるモデルを選ぶようにしましょう。
安いモデルに潜むデメリット
電子ピアノを探し始めると、2〜3万円台といった驚くほど安いモデルが目に入り、心が揺らぐこともあるかもしれません。もちろん、価格が安いこと自体は大きな魅力ですが、その安さの裏には必ず理由があり、後で後悔につながるデメリットが潜んでいることが多いのです。
最も大きなデメリットは、前述した「買ってはいけない共通点」の多くに当てはまってしまうことです。つまり、練習の質を著しく下げ、上達の妨げになる可能性が非常に高いということです。具体的に、価格帯によってどのような違いがあるのか、一般的な傾向をまとめてみました。
| 価格帯の目安 | 鍵盤 | 音源・スピーカー | その他 |
|---|---|---|---|
| ~5万円 | ハンマーアクション無し、または簡易的なもの。タッチが軽い。 | 同時発音数が少ない(32~64音)。スピーカーが小型で音が平面的。 | 本体がプラスチック製で安定感に欠ける。ペダルがスイッチ式。 |
| 5万円~10万円 | ハンマーアクション搭載。段階的重さの再現も。 | 同時発音数128音以上。スピーカーの質が向上し、立体感が出てくる。 | デザインの選択肢が増える。ハーフペダル対応モデルも多い。 |
| 10万円~ | 木製鍵盤や高度なセンサーを搭載し、よりリアルなタッチ感。 | モデリング技術など高度な音源。複数のスピーカーで豊かな響きを再現。 | 本体の作りがしっかりし、アコースティックピアノに近い佇まい。 |
安いモデルは、鍵盤のタッチが軽すぎて正しい指の訓練にならなかったり、音の表現力が乏しくて演奏の楽しさを感じにくかったりします。また、耐久性にも不安が残ります。内部のセンサーや電子基板に安価な部品が使われていることが多く、数年で鍵盤がガタついたり、特定の音が出なくなったりといったトラブルが発生するリスクが高まります。
「最初は安いもので初めて、続いたら良いものに買い替えよう」という考え方もありますが、最初に触れる楽器の質が低いと、そもそも続けること自体が難しくなってしまう、という本末転倒な事態に陥りかねません。結果的にすぐに買い替えることになり、「安物買いの銭失い」になってしまうケースは本当に多いのです。
鍵盤数が88鍵盤未満の注意点
電子ピアノの中には、鍵盤数が61鍵や76鍵といった、標準的な88鍵よりも少ないモデルが存在します。これらは「電子キーボード」や「ポータブルキーボード」と呼ばれることも多く、コンパクトで価格も手頃なため、初心者の選択肢として魅力的に映るかもしれません。しかし、「ピアノを弾けるようになりたい」という目的を持っている場合、88鍵盤未満のモデルを選ぶことには大きな注意が必要です。
その最大の理由は、現代のピアノ曲のほとんどが88鍵盤の音域を前提として作られているからです。アコースティックピアノの鍵盤数が88鍵(7オクターブとちょっと)に定着したのは19世紀後半のこと。それ以来、クラシックの作曲家から現代のポップスアーティストまで、この広大な音域をフルに使って楽曲を制作しています。
弾きたい曲が弾けない、という現実
練習を始めたばかりの頃は、中央の数オクターブしか使わない簡単な曲が多いので、61鍵でも問題ないように感じるかもしれません。しかし、少し上達して、憧れのあの曲を弾いてみたい!と思った時、楽譜に書かれている音域が、自分の持っているピアノには存在しないという悲しい現実に直面します。例えば、久石譲さんの「Summer」やショパンの「ノクターン第2番」など、多くの有名曲では高音域や低音域の鍵盤が使われます。
鍵盤が足りない場合、1オクターブ上げたり下げたりしてごまかして弾くことになりますが、それでは曲本来の響きや雰囲気が台無しになってしまいます。これでは、せっかくの練習のモチベーションも下がってしまいますよね。
寿命が極端に短いモデルとは
電子ピアノは精密な電子機器ですから、いつかは寿命が訪れます。一般的に、大手国内メーカーの製品であれば、適切な環境で普通に使用していれば5年から10年、あるいはそれ以上使い続けることも十分可能です。しかし、中には数年で深刻な不具合が発生してしまうような、寿命が極端に短いモデルも残念ながら存在します。
そうしたモデルには、いくつかの共通した危険信号があります。これらを知っておくことで、購入後の「すぐに壊れた…」という最悪の事態を避けることができます。
信頼性の低いノーブランド品・激安品
ネット通販サイトなどで見かける、聞いたことのない海外メーカー製や、メーカー名すら記載されていない数万円の激安電子ピアノは最も注意が必要です。これらの製品は、コストを極限まで切り詰めるために、耐久性の低い安価な部品を使用しているケースがほとんどです。特に、打鍵の衝撃を常に受け止める鍵盤のセンサー部分や、内部の電子基板は壊れやすい部分です。
さらに深刻なのは、故障した際のサポート体制が全く期待できない点です。国内に修理拠点がないため修理を依頼することすらできず、部品の取り寄せも不可能です。メーカー保証があったとしても、そのメーカー自体がすぐになくなってしまうことも…。結局、壊れたら粗大ごみとして捨てるしかなく、安く買ったつもりが、わずか数年でお金をドブに捨てることになってしまいます。
ユーザーレビューでの故障報告の多さ
購入を検討しているモデルがあれば、そのモデル名で検索してユーザーレビューや口コミをチェックしてみましょう。その際、「すぐに音が出なくなった」「鍵盤が戻ってこない」といった故障に関する報告が複数のユーザーから頻繁に投稿されている場合は、そのモデルの設計や品質管理に何らかの問題がある可能性が高いと考えられます。個体差の問題もありますが、あまりにも悪い評判が目立つモデルは避けるのが賢明です。
中古で買ってはいけないピアノの状態
新品にこだわらず、中古の電子ピアノを探すというのも賢い選択肢の一つです。状態の良いものを見極めることができれば、ワンランク上のモデルを非常に安価に手に入れることができます。しかし、中古市場には、まさに「安物買いの銭失い」の典型となるような、手を出してはいけない状態のピアノも数多く出回っています。特に個人間取引(フリマアプリなど)で購入する場合は、細心の注意が必要です。
中古品で最も警戒すべきなのは、外観の綺麗さだけでは判断できない「内部の劣化」です。鍵盤機構の摩耗や電子部品の寿命は、着実に進んでいます。以下に、絶対に避けるべき中古ピアノの具体的な状態をリストアップしました。
試弾でわかる物理的なチェックポイント
可能であれば、購入前に必ず実物を試弾させてもらいましょう。その際に確認すべきポイントです。
- 鍵盤のガタつき・異音:鍵盤を軽く左右に揺すってみて、過度にガタガタしないか。打鍵時に「カコカコ」「キーキー」といった異音がしないか。
- 鍵盤の戻り:全ての鍵盤を弾いてみて、押した後にスムーズに戻ってくるか。戻りが遅い、または引っかかる鍵盤がある場合は、内部のグリス切れや部品の摩耗が考えられます。
- 打鍵の重さのばらつき:隣り合う鍵盤を弾き比べたときに、明らかに重さが違う鍵盤はないか。
- 全鍵盤の発音:全ての鍵盤を、弱いタッチと強いタッチの両方で弾き、きちんと音が出るか、音量に不自然なばらつきがないかを確認します。
- ペダルやボタンの反応:ペダルを踏んでしっかり機能するか。ボリュームや各種ボタンが正常に反応するか。
- スピーカーからのノイズ:音量を上げたときに「ジー」といったノイズが乗らないか。
見た目や情報で判断するポイント
試弾できない場合でも、以下の情報からある程度状態を推測できます。
- 製造年:電子ピアノの寿命は一般的に5年〜10年です。製造から10年以上経過しているモデルは、いつ故障してもおかしくない状態だと考えた方が良いでしょう。特に主要メーカーは公式サイトで型番から製造年を調べられることが多いです。
- 使用環境:喫煙環境やペットのいる環境で使用されていたピアノは避けるべきです。タバコのヤニやペットの毛が内部に入り込み、接触不良や故障の大きな原因となります。
- 鍵盤の黄ばみ:古いモデルに見られる鍵盤の黄ばみは、単なる汚れではなく、ABS樹脂という素材自体が紫外線などで劣化した証拠です。もろくなっている可能性があり、演奏中に割れてしまうリスクもあります。
買ってはいけない電子ピアノを避ける選び方
さて、ここまで「買ってはいけない」電子ピアノの特徴を見てきました。ここからは、その知識を踏まえて、実際に自分に合った一台を賢く選ぶための具体的な方法論について解説していきます。初心者の方が陥りやすい失敗パターンを知り、人気メーカーそれぞれの特徴を理解することで、数多くの選択肢の中から迷うことなく、後悔のないピアノ選びができるようになりますよ。
初心者が選びがちな失敗モデル
「ピアノを始めよう!」というワクワクした気持ちで楽器を探している時こそ、冷静な判断が難しくなり、後から「こうすれば良かった…」と後悔する選択をしてしまいがちです。ここでは、多くの初心者が経験する典型的な失敗パターンを3つご紹介します。これらのパターンを知っておくだけで、同じ轍を踏むリスクをぐっと減らせます。
失敗パターン1:とにかく「安さ」最優先で選んでしまう
これは、最も陥りやすい失敗かもしれません。「続くかどうかわからないし、最初は一番安いものでいいや」という考え方です。もちろん、初期投資を抑えたい気持ちは痛いほど分かります。しかし、これまで何度も説明してきたように、極端に安いモデルは、ピアノとしての基本性能が著しく低い場合がほとんどです。
タッチが軽すぎて練習にならない、音が悪くて弾いていても楽しくない…。そんな楽器では、練習すること自体が苦痛になり、本来なら続くはずだったピアノへの情熱も、楽器のせいで萎えてしまうという本末転倒な結果になりかねません。結局すぐに良いものが欲しくなって買い替えることになり、最初の購入費用が無駄になってしまいます。ある程度の基本性能を備えた、最低でも5〜6万円以上のクラスから検討することが、結果的に最もコストパフォーマンスの良い選択になることが多いのです。
失敗パターン2:「多機能」という言葉の響きで選んでしまう
スペック表に「音色数:300」「リズムパターン:200」などと書かれていると、何だかすごく高機能でお得なモデルのように感じられますよね。しかし、冷静に考えてみてください。ピアノの練習で、オルガンやストリングスの音色をどれだけ使うでしょうか?サンバやロックのリズムに合わせて練習する機会はどれくらいあるでしょうか?
もちろん、これらの機能を使って楽しむこともできますが、ピアノの上達という目的においては、ほとんど使われない機能であることが大半です。本当に重要なのは、ピアノの音色が一種類だけでも、そのクオリティが非常に高いこと、そして鍵盤のタッチがリアルであることです。使わない多くの機能にお金を払うくらいなら、その予算をピアノとしての基本性能に特化したモデルに投じる方が、はるかに満足度の高い買い物になります。本当に必要な機能(メトロノーム、録音機能など)は、今やほとんどの電子ピアノに標準搭載されています。
失敗パターン3:見た目の「デザイン」や「コンパクトさ」だけで決めてしまう
お部屋のインテリアに馴染むか、限られたスペースに置けるか、という点は、もちろん重要な選択基準です。最近は、奥行きが非常にスリムでおしゃれなモデルも増えています。しかし、そのデザイン性を実現するために、何かを犠牲にしている可能性があることも理解しておく必要があります。
特にスリムさを追求したモデルでは、本格的なハンマーアクション機構を搭載するスペースが限られるため、鍵盤のタッチが簡略化されていたり、豊かな響きを生み出すスピーカーボックスの容量が小さかったりする場合があります。デザインの良さと演奏性の高さは、必ずしも両立するとは限りません。自分の部屋に置いた時のイメージを膨らませつつも、「楽器としての性能」という最も重要な軸をブラさずに、バランスの取れた一台を見つけることが大切です。まずは性能で候補を絞り、その中からデザインが好みのものを選ぶ、という手順が失敗しにくいかなと思います。
ヤマハで避けるべきモデルはある?
電子ピアノの代名詞とも言える存在、ヤマハ(YAMAHA)。その安定した品質と、アコースティックピアノ製造の長い歴史に裏打ちされたリアルなサウンドとタッチは、多くの人に愛されています。結論から言うと、ヤマハが現在販売しているラインナップの中に、品質的に「絶対に買ってはいけない」と断言できるような粗悪なモデルは存在しないと言って良いでしょう。どのモデルを選んでも、一定水準以上の満足感は得られるはずです。
しかし、注意すべきは「品質」の問題ではなく、「あなた自身の目的や使い方とのミスマッチ」です。ヤマハの電子ピアノは、価格帯やコンセプトによっていくつかのシリーズに分かれており、それぞれに得意なこと、不得意なことがあります。この特性を理解せずに選んでしまうと、「こんなはずじゃなかった」という後悔につながる可能性があります。
| シリーズ名 | 主な特徴 | 向いている人 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| Clavinova (クラビノーバ) | 最上位シリーズ。リアルな鍵盤タッチと豊かな音響。 | 本格的にクラシックなどを学びたい人。最高の演奏体験を求める人。 | 価格が高価。設置に広いスペースが必要。 |
| ARIUS (アリウス) | 家庭用ピアノのスタンダード。基本性能と価格のバランスが良い。 | 趣味でピアノを楽しみたい初心者〜中級者。 | クラビノーバと比較すると表現力やスピーカーの響きは一歩譲る。 |
| Pシリーズ | コンパクトなポータブルタイプ。持ち運びも可能。 | 設置スペースが限られている人。ライブなどで外に持ち出したい人。 | 据え置き型に比べスピーカーが簡易的。鍵盤の安定感もやや劣る。 |
例えば、「将来はグランドピアノでショパンを弾きたい!」という高い目標を持っている方が、設置場所の手軽さからPシリーズを選んだとします。もちろん練習はできますが、本格的な楽曲の表現を追求し始めると、スピーカーの響きや鍵盤の繊細なコントロール性に物足りなさを感じる時が来るかもしれません。逆に、「気軽にポップスを弾きたいだけ」という方が、オーバースペックなクラビノーバの最上位モデルを選んでも、その性能を十分に活かしきれない可能性があります。
また、中古市場に目を向けると、製造から15年以上経過したような古いクラビノーバが出回っていることがありますが、これは避けるのが賢明です。電子部品の寿命が近づいているリスクが高いだけでなく、当時の最高級モデルであっても、現在の入門〜中級モデルの方が音源技術や鍵盤のアクションが格段に進化しています。(参考:ヤマハ クラビノーバの特長)
ヤマハの電子ピアノ選びで失敗しないコツは、「どのモデルが良いか」ではなく、「どのシリーズが自分のピアノライフに最も合っているか」という視点で考えることです。
カシオで注意したいポイント
カシオ(CASIO)の電子ピアノは、先進的な技術と洗練されたデザイン、そして何よりも優れたコストパフォーマンスで、近年非常に高い人気を誇っています。特に奥行きがスリムな「Privia(プリヴィア)」シリーズは、デザイン性を重視する層から絶大な支持を得ていますね。
カシオのモデルも品質が高く、明確な「買ってはいけない」モデルというのはありません。ただし、カシオならではの特徴を理解した上で選ばないと、後から「あちらのモデルにしておけば良かった」と感じる可能性があります。その注意したいポイントとは、同じシリーズ内でも、価格によって鍵盤のアクションや音響システムに明確なグレード差が設けられている点です。
例えば、人気のPriviaシリーズを見てみましょう。エントリーモデルのPX-S1100は、その驚異的なスリムさとスタイリッシュさで大ヒットしていますが、搭載されている鍵盤は「スマートハイブリッドハンマーアクション鍵盤」です。一方、同じPriviaの上位モデルであるPX-S7000は、鍵盤の素材に木材を使用し、より繊細なタッチの表現を可能にしています。スピーカーシステムも、PX-S7000の方がはるかに凝った作りになっており、音の広がりや臨場感が全く異なります。
これは悪いことではなく、むしろユーザーが予算に応じて最適な選択をしやすいように、きめ細かくラインナップを揃えてくれているということです。だからこそ、購入前にはぜひ、少し背伸びしてでも、気になるシリーズの上位モデルと下位モデルを弾き比べてみることを強くお勧めします。「自分にはこのレベルのタッチ感が必要だ」「このスピーカーの響きは譲れない」といった、自分なりの基準が明確になるはずです。その上で、自分の予算と照らし合わせて最適な一台を見つけることが、カシオの電子ピアノ選びで後悔しないための最大のコツと言えるでしょう。
ローランドのモデル選びと評判
ヤマハ、カシオと並び、電子楽器の世界で絶大な信頼を集めるメーカー、ローランド(Roland)。特に、そのサウンド技術には定評があり、多くのプロミュージシャンからも愛用されています。ローランドの電子ピアノは、全体的にユーザーからの評判も高く、品質面で大きく失敗するということは考えにくいでしょう。
ローランドの最大の特徴は、「スーパーナチュラル・ピアノ音源」や、さらに進化した「スーパーナチュラル・ピアノ・モデリング音源」に代表される、そのリアルで表現力豊かなサウンドです。これは、単にピアノの音を録音(サンプリング)して再生するだけでなく、弦の共鳴やハンマーが弦を叩く音、鍵盤から指を離した瞬間の音の変化といった、アコースティックピアノが持つ複雑な要素をコンピュータで演算してリアルタイムに作り出す技術です。これにより、まるで生きているかのように滑らかで、表情豊かな演奏が可能になります。
モデル選びで意識したいのは、この「音色の好み」です。一般的に、ヤマハのサウンドがクリアで華やかな「THE・日本のピアノ」という印象なのに対し、ローランドは少し暖かみがあり、しっとりとした深みのある、ヨーロッパ製のピアノを彷彿とさせるサウンドが特徴と言われます。これはどちらが優れているという話ではなく、完全に個人の好みの問題です。
また、ローランドは鍵盤のアクションにもこだわりがあり、「PHA-4スタンダード鍵盤」や上位モデルに搭載される「PHA-50ハイブリッド鍵盤」など、こちらも価格帯に応じて様々な種類があります。さらに、家具メーカーのカリモクとコラボした「KIYOLA」のような、インテリアとして非常に優れたデザインのモデルもラインナップしており、機能性だけでなく、生活空間との調和を重視する方にとっても魅力的な選択肢が多いメーカーです。
結論:買ってはいけない電子ピアノとは
ここまで、買ってはいけない電子ピアノの様々な特徴や、メーカーごとの選び方のポイントについて、詳しく解説してきました。安いモデルのデメリット、鍵盤数の重要性、中古品のリスク、そして各メーカーの個性。たくさんの情報をお伝えしましたが、最後に、これら全てを踏まえた上での「結論」をお話ししたいと思います。
結論として、私が考える「買ってはいけない電子ピアノ」とは、特定のメーカーや特定のモデルのことではありません。それは、「あなたの『ピアノを弾きたい』という大切な気持ちを、無意識のうちに削いでしまうピアノ」のことです。どんなに高価なピアノでも、どんなに評判の良いピアノでも、それがあなたにとっての「買ってはいけない電子ピアノ」になる可能性はあります。
例えば、
- 鍵盤が重すぎて弾くのが億劫になってしまうピアノ
- 音が自分の好みではなく、弾いていても心が躍らないピアノ
- 機能が複雑すぎて、使いこなせずにストレスを感じるピアノ
- 練習の成果が実感できず、上達を妨げてしまうピアノ
これら全てが、あなたにとっての「買ってはいけない電子ピアノ」です。ピアノの上達には、日々の地道な練習が欠かせません。その練習を支えてくれるのは、「ピアノを弾くのが楽しい!」という純粋な気持ちです。その気持ちを育んでくれる楽器こそが、あなたにとって最高のパートナーなのです。
電子ピアノは、決して安い買い物ではありません。だからこそ、スペック表の数字やネットの評判だけで決めるのではなく、ぜひ、あなた自身の指で触れ、あなた自身の耳で聴き、そしてあなた自身の心で感じて選んでほしいと思います。この記事が、そのための羅針盤として、あなたの素晴らしいピアノライフの第一歩を後押しできれば、私にとってこれほど嬉しいことはありません。


