こんにちは、Digital Piano Navi運営者のピア憎です。私が人生で初めて手にした鍵盤楽器は、親に買ってもらった61鍵盤でした。当時は毎日夢中で弾いていましたし、初心者のうちは何の不満もなかったんですよ。
ところが、少し上達してくると「あれ、この曲、鍵盤が足りない…」という場面に何度もぶつかりました。その後、楽器店で販売員をしていた頃も、61鍵盤と88鍵盤のどちらを買うべきかという相談は本当に多かったです。
私の答えはシンプルで、歌の伴奏や気軽な演奏が目的なら61鍵盤、ピアノとして続けたいなら最初から88鍵盤。この記事では、その理由を実体験と販売現場での経験を交えながら、じっくり掘り下げていきます。
- 61鍵盤と88鍵盤の音域やタッチの具体的な違い
- 61鍵盤で十分な人と足りなくなる人の分かれ目
- ヤマハを中心とした61鍵盤モデルの選び方
- 後悔しないステップアップと手放し方の手順
61鍵盤と88鍵盤の基本的な違い
まずは2つの違いを全体像からつかみましょう。音域、鍵盤構造、サイズ、価格という4つの軸で比べると、性格の違いがはっきり見えてきます。先に表でまとめておきますね。
| 比較項目 | 61鍵盤 | 88鍵盤 |
|---|---|---|
| 音域 | 約5オクターブ(C2〜C7が一般的) | 7オクターブと4鍵(A0〜C8) |
| 鍵盤の構造 | 軽量な非ハンマー鍵盤が中心 | 電子ピアノではハンマーアクションが一般的 |
| 横幅 | 約90〜105cm程度 | 約130〜140cm程度 |
| 重さ | 約4〜7kg程度 | ポータブル型で約11kg〜、据え置き型は30kg台以上も多い |
| 価格帯 | 1万円台〜4万円前後が目安 | ハンマーアクション搭載機は5万円前後〜 |
| 主な用途 | 伴奏、弾き語り、音楽入門 | ピアノ練習、レッスン、本格演奏 |
音域は5オクターブと7オクターブ強
標準的なピアノの88鍵盤はA0からC8まで、7オクターブと4鍵あります。対して61鍵盤のキーボードでは、C2からC7までの5オクターブという配列が一般的です。鍵盤数にすると27鍵の差があります。
「たった27鍵の差でしょ?」と思うかもしれません。ところが、ピアノ曲では低音側や高音側まで使う作品が珍しくありません。左手で響かせる低音や、右手の高音域まで含めて原曲どおり弾こうとすると、この27鍵の差が効いてきます。
童謡や簡単な歌の伴奏なら中央付近の音域だけで収まる曲も多く、61鍵盤で困らないケースは少なくありません。一方、クラシックや原曲に近いポップスアレンジへ進むと、61鍵盤の外側の音が必要になる曲が増えてきます。
鍵盤のタッチと構造が違う
鍵盤数と同じくらい重要なのが、鍵盤そのものの構造です。ピアノ練習向けの88鍵電子ピアノでは、アコースティックピアノの演奏感を意識したハンマーアクション系の鍵盤が一般的です。低音側と高音側で重さを変えたグレードハンマー系の機構を採用するモデルもあります。
一方、61鍵盤のポータブルキーボードでは、ハンマーアクションを使わない軽量な鍵盤が中心です。ただし「61鍵だから1鍵あたりの横幅が必ず狭い」というわけではありません。一般的なピアノに近い鍵盤幅を採用するモデルもあり、鍵盤の寸法や支点、奥側を弾いたときの感触は製品ごとに異なります。
また、音の強弱を検知する「タッチレスポンス」と、鍵盤そのものに重さを持たせる「ハンマーアクション」は別物です。軽い鍵盤でも譜読み、リズム、運指、両手の協調などは練習できますが、アコースティックピアノへ移ったときには鍵盤の抵抗感や戻り方の違いを感じることがあります。
サイズと重さは61鍵盤が有利
省スペース性と持ち運びやすさは61鍵盤の大きな魅力です。たとえばヤマハPSR-E383は幅941mm、重さ4.4kg。Piaggero NP-15は幅1,052mm、重さ5.2kgです。同じ61鍵でも横幅には10cm以上の差があるので、購入前には必ず実寸を確認しましょう。
88鍵盤のハンマーアクション搭載モデルでは、ヤマハP-145が幅1,326mm・11.1kg、P-225が幅1,326mm・11.5kgです。据え置き型になると30kg台以上の製品も多く、専用スタンドを含めて置き場所を決めて使うスタイルが基本になります。
ワンルームで暮らしている人や、リビングの一角にしか置けない家庭にとって、この差は重要です。鍵盤本体だけでなく、譜面台やペダル、椅子を含めた演奏スペースをメジャーで測ってから選ぶと、購入後の失敗を減らせます。
価格差と2026年の値上げ事情
61鍵盤のポータブルキーボードは1万円台から4万円前後まで選択肢があります。対する88鍵盤は、ハンマーアクション搭載のポータブル電子ピアノで5万円前後からがひとつの目安。据え置き型まで含めると価格帯はさらに広くなります。
なお、ヤマハは原材料価格の高騰やサプライチェーン環境の変化を理由に、2026年9月1日からクラビノーバ、ARIUS、Pシリーズなどの電子ピアノの価格を改定すると案内しています。すべての電子キーボードが一律に値上げされるという意味ではないため、検討中の製品が対象かどうかは公式情報を確認してください。
記事内の価格は2026年8月時点の目安です。実売価格は販売店や時期によって変わりますから、購入前に必ずメーカー公式サイトや販売店で最新価格を確認しましょう。予算を抑えたい人は電子ピアノ5万円以下のおすすめ10選もあわせてどうぞ。
61鍵盤の電子ピアノが向いている人
61鍵盤を否定したいわけではありません。むしろ目的が合えば、とても使いやすい楽器です。販売員時代に私が「61鍵盤で十分ですよ」と案内してきたのは、次のような使い方を考えている人たちでした。
歌の伴奏や弾き語りが中心の人
コードを押さえて歌う、保育の現場で童謡を弾く、バンドで鍵盤を担当する。こうした用途では、61鍵盤で対応できる曲がたくさんあります。
しかも61鍵盤のポータブルキーボードには、多数の音色や自動伴奏、録音、リズム機能などを搭載したモデルがあります。ピアノ音と鍵盤タッチを重視した電子ピアノとは、得意分野そのものが違うわけです。
たとえば自動伴奏を使えば、左手でコードを指定しながら一人でバンドのような演奏を楽しめます。歌が主役で鍵盤は伴奏役という人なら、88鍵盤より61鍵盤の機能性が合う場合もあります。
保育士試験の「音楽に関する技術」は課題曲の弾き歌いで、ピアノまたはギターを使用します。ピアノを選ぶ場合、自宅練習を61鍵盤で行うこと自体は可能ですが、編曲や移調によって使う音域は変わります。また、本番で使う楽器と自宅のキーボードではタッチが異なる可能性があるため、事前にアコースティックピアノやハンマーアクション鍵盤にも触れておくと安心です。最新の試験内容は全国保育士養成協議会の受験案内で確認してください。
置き場所と持ち運びを優先したい人
「88鍵盤を置くスペースがそもそもない」という場合、61鍵盤は立派な現実解です。88鍵盤の横幅約130cmを確保できない部屋でも、61鍵盤なら設置できる可能性が高まります。
4〜7kg程度のモデルが多いため、88鍵のハンマーアクション搭載機と比べれば持ち運びも容易です。PSR-E383のように電池駆動へ対応したモデルなら、コンセントのない場所でも使用できます。
出しっぱなしにできる場所がなく、使うたびに収納するスタイルなら、本体の軽さは練習頻度にも関わります。ただし、使用時は安定したキーボードスタンドや耐荷重を満たす台の上に設置し、転倒しやすい保管方法は避けましょう。
続くか分からず安く試したい人
1〜3万円程度から音楽生活を始められるハードルの低さは、61鍵盤の大きな魅力です。続けられるかまだ分からない段階で、いきなり高価格帯の据え置き型電子ピアノを買うのは勇気がいりますよね。
実際、私も61鍵盤スタート組です。まず鍵盤楽器に触れてみるための入り口として考えるなら、61鍵盤には十分な価値があります。
ただし、最初からピアノ教室へ通って長く続ける予定なら話は変わります。その理由を次の章で説明します。
61鍵盤では足りなくなる3つの場面
61鍵盤で始めた人がどこで不便を感じやすいのか。音域、タッチ、ペダルや同時発音数という3つの方向から見ていきましょう。私自身が61鍵盤から始めた経験でも、弾きたい曲が増えるにつれて違いを実感しました。
エリーゼのためにで音域が足りない
象徴的な例が、ベートーヴェンの「エリーゼのために」です。一般的な61鍵盤はC2〜C7ですが、原曲ではそれより低いA1付近からC7を超える高音域まで使用するため、一般的な61鍵盤だけでは原曲どおりの音域をカバーできません。
簡易アレンジ版なら61鍵盤でも演奏できますし、音域をオクターブ移動して対応する方法もあります。ただし、原曲の響きや音域をそのまま再現したいなら88鍵盤のほうが安心です。
教本が進んでブルグミュラー25の練習曲などへ入る頃にも、61鍵盤の範囲を超える音を使う作品が出てきます。すべての曲で不足するわけではありませんが、教材が進むほど88鍵盤の必要性が高まると考えておくとよいでしょう。
ポップスでも、原曲再現系のピアノアレンジでは低音のオクターブや高音フレーズを多用することがあります。弾きたい曲リストにクラシックや本格アレンジが多いなら、最初から88鍵盤を選ぶメリットは大きいです。
軽いタッチとの差を感じやすい
音域よりも長期的に影響しやすいのが、鍵盤タッチの違いです。ピアノ教室では、グランドピアノやアップライトピアノなど、ハンマー機構を持つ88鍵盤でレッスンするケースが一般的です。
自宅で軽いキーボードを中心に練習していると、教室のピアノを弾いたときに「鍵盤が重い」「同じ強さで弾いているつもりなのに音量が違う」と感じることがあります。これは練習が無駄という意味ではなく、鍵盤構造の違いに適応する時間が必要になるということです。
61鍵盤でも譜読み、リズム、運指、両手の協調などは十分練習できます。一方、ピアノ特有のタッチや細かなダイナミクスまで身につけたいなら、ハンマーアクションを搭載した88鍵盤で練習するほうが、本番やレッスンとの環境差を小さくできます。
ペダルと同時発音数も確認が必要
見落とされやすいのが、ペダル対応と最大同時発音数です。ただし、ここは「61鍵だから劣る」「88鍵だから高性能」と単純には分けられません。モデルごとの仕様確認が必要です。
たとえば61鍵のヤマハPSR-E383はサステインペダルを接続できます。一方、同じ61鍵のNP-15は別売FC3Aを使用するとハーフペダルにも対応します。つまり、61鍵盤でもハーフペダル対応モデルは存在します。
最大同時発音数も鍵盤数だけでは決まりません。PSR-E383は48音、NP-15は64音。一方、88鍵のP-145も64音で、P-225は192音です。このようにモデルによる差が大きいため、ペダルを多用する曲、デュアル音色、伴奏機能などを使いたい人は仕様表の「最大同時発音数」を確認しましょう。
同時発音数が足りなくなると、演奏中に古い音から消えていく場合があります。ただし必要な発音数は音源方式や使う音色、重ね方でも変わるため、「○音あれば絶対十分」と一律には決められません。
61鍵盤で始めた私の体験談
ここで、私自身の話を少しだけ。子どもの頃、親が買ってくれたのは61鍵盤でした。予算のハードルが低かったからこその選択で、これ自体は今でも感謝しています。初心者のうちは本当に十分でしたから。
転機は、弾きたい曲の楽譜を買ってきた日。左手で押さえるはずの音が、私の鍵盤のどこにも存在しなかったんです。あのときの「え、ない…?」という感覚は今でも忘れられません。オクターブをずらして対応することはできても、原曲とは響きが変わってしまいます。
結局、後から88鍵盤に買い替えることになりました。だからこそ私は61鍵盤スタートを否定しません。ただ、弾きたい曲や練習内容によっては足りなくなるのも事実です。「いつか本格的にピアノを弾きたい」と思っているなら、買い替えの可能性まで考えて選ぶことをおすすめします。
ピア憎置き場所と予算に余裕があり、ピアノを長く続けるつもりなら、最初から88鍵盤を選んだほうが買い替えを避けやすいです。
ピアノを続けるなら88鍵盤を選ぶ理由
「ピアノを弾けるようになりたい」が目的なら、私は88鍵盤をおすすめします。単に鍵盤数が多いからではありません。練習環境をアコースティックピアノに近づけやすいことが大きな理由です。
レッスンとの環境差を減らせる
ピアノ教室で使われるグランドピアノやアップライトピアノは88鍵盤です。自宅の練習環境がそれに近いほど、レッスンで学んだタッチやペダル操作を再現しやすくなります。
特にピアノレッスンを継続するなら、88鍵盤に加えてハンマーアクションの有無も確認したいところです。将来的にペダルを使う曲まで進むことを考えるなら、3本ペダルユニットを追加できるモデルも候補になります。
もちろん、初心者が61鍵盤で基礎を学ぶこと自体はできます。ただ、最初からピアノ教室へ通うことが決まっているなら、自宅と教室の環境差を小さくするという意味で88鍵盤を選ぶメリットは大きいでしょう。
買い替えの二度手間を防げる
お金の話も具体的にしましょう。仮に61鍵盤を2万5,000円で買い、1年後に88鍵盤の入門機を7万円で買い直すと、購入額の合計は9万5,000円です。最初から7万円の88鍵盤を選んでいれば、2台購入する必要はありません。
もちろん、使わなくなった61鍵盤を中古で売れば一部は戻ってきます。ただし買取価格はメーカー、型番、年式、状態、付属品、需要によって大きく変わるため、「いくらで売れる」と一律には言えません。
買い替えには梱包、発送、設置、古い楽器の処分といった手間もかかります。ピアノを続ける意思が固まっている人ほど、最初から88鍵盤を選ぶ価値は高くなります。
88鍵盤にもスリムな機種がある
「88鍵盤は大きいから無理」と諦める前に、ポータブル型のサイズも確認してみてください。最近の88鍵電子ピアノには、奥行きを抑えたモデルがあります。
たとえばヤマハP-145は奥行268mm、P-225は272mmです。横幅はどちらも1,326mmなので61鍵より長くなりますが、奥行きは30cm未満に収まっています。
ただし設置場所は、鍵盤本体の寸法だけで決めないことが大切です。演奏時には椅子を引くスペースも必要ですし、専用スタンドや十分な耐荷重・安定性を持つ台を使いましょう。スタンドやペダルを含めた選び方は88鍵盤ペダル付き電子ピアノの記事で詳しく解説しています。88鍵盤エントリーモデルの価格と設置寸法を比較すると、自宅に置ける機種が見つかるかもしれません。
ピア憎「ピアノとして練習したい」と考えているなら、鍵盤数だけでなくハンマーアクションの有無まで見て選ぶのがポイントです。
61鍵盤でピアノタッチは可能なのか
電子ピアノ選びでは、「61鍵盤のままピアノらしい重さの鍵盤が欲しい」という声をよく聞きます。省スペース性と本格的な弾き心地を両立したいわけですが、現行製品では選択肢がかなり限られます。
ハンマー式61鍵盤はかなり少ない
家庭向けの61鍵盤で、本格的なハンマーアクションを搭載した現行モデルは非常に少ないのが実情です。国内大手メーカーの一般家庭向けラインナップでは、ハンマーアクション搭載モデルは88鍵盤を中心に展開されています。
理由のひとつは製品コンセプトです。61鍵盤には軽量性、持ち運びやすさ、価格の手頃さが求められる一方、ハンマー機構を入れると重量とコストが増えます。そのため「省スペースな61鍵」と「本格的なハンマー鍵盤」を同時に満たす製品は少なくなります。
「61鍵盤で本格的なピアノタッチ」を最優先にすると、選択肢はかなり限定されます。ピアノタッチを優先するなら88鍵盤、サイズや軽さを優先するなら61鍵盤という考え方が現実的です。
タッチレスポンスとの違いに注意
ここで気をつけたいのが、商品説明の言葉です。「タッチレスポンス搭載」とは、主に鍵盤を弾く強さや速さに応じて音量や音色表現を変化させる仕組みです。鍵盤そのものをハンマーで重くしているという意味ではありません。
「ピアノタッチ風」「ピアノスタイル」「ボックス型」といった表現だけでは、ハンマーアクションかどうか判断できません。購入前に仕様表の「鍵盤種」を確認し、「ハンマー」「グレードハンマー」などの記載があるかチェックしましょう。
タッチにこだわるなら、価格の安さだけで決めないことが大切です。鍵盤構造の見分け方は本物に近いタッチの電子ピアノの記事で掘り下げているので、あわせて読んでみてください。
76鍵盤という中間の選択肢
音域の不足を少しでも減らしたいなら、76鍵盤という選択肢もあります。ヤマハではPiaggero NP-35が76鍵モデルです。61鍵より低音側・高音側へ音域が広がり、ポップスや伴奏で対応できる範囲も広がります。
NP-35は「ボックス型・グレードソフトタッチ鍵盤」を採用していますが、ハンマーアクションではありません。また、横幅は1,260mm。88鍵のP-145は1,326mmなので、横幅の差は66mmです。61鍵から76鍵へ増やすと、想像以上に本体も長くなる点には注意してください。
76鍵盤が合うのは、「88鍵までは必要ないけれど、61鍵より広い音域が欲しい」「持ち運びや軽さも重視したい」という人です。一方、アコースティックピアノに近い練習環境を重視するなら、88鍵ハンマーアクション搭載機を優先したほうが選びやすいでしょう。
ヤマハの61鍵盤モデルの選び方
61鍵盤をヤマハで探している人向けに、現行ラインナップの考え方を整理します。ヤマハではPSRシリーズや61鍵のPiaggero NP-15を「電子キーボード」として展開し、Pシリーズなど88鍵のハンマーアクション搭載モデルを「電子ピアノ」として展開しています。
多機能で楽しむならPSRシリーズ
ヤマハの61鍵盤で代表的なのがPSRシリーズです。スタンダードモデルのPSR-E383は、650種類の音色と260種類のスタイルを搭載。幅941mm、重さ4.4kgで、タッチレスポンス、自動伴奏、オートコードプレイなどにも対応しています(出典:ヤマハ株式会社「PSR-E383」製品ページ)。
エントリーモデルのPSR-E283、スタンダードなPSR-E383、2026年3月発売の上位モデルPSR-E483と、用途や予算に応じて選べます。PSR-E483は61鍵ながら860音色、345スタイル、ライブコントロールノブやピッチベンドなども搭載し、ライブ演奏まで視野に入れたモデルです。
ただし、PSRシリーズはハンマーアクション鍵盤ではありません。ピアノの練習だけを目的に選ぶというより、音色、自動伴奏、レッスン機能なども含めて「鍵盤楽器を幅広く楽しみたい人」に向いています。
ピアノ寄りならPiaggero
「多機能よりも、シンプルにピアノを弾きたい」という人にはPiaggero(ピアジェーロ)のNP-15が候補になります。61鍵のボックス型鍵盤を採用し、ピアノ音を中心としたシンプルな構成です。幅1,052mm、重さ5.2kg、最大同時発音数64音となっています(出典:ヤマハ株式会社「NP-15」製品ページ)。
ヘッドホンを使った練習や電池駆動にも対応し、別売FC3Aを接続すればハーフペダルも利用できます。61鍵盤の軽量性を保ちつつ、ピアノ演奏へ寄せた仕様が魅力です。
ただし、NP-15の鍵盤もハンマーアクションではありません。ピアノへの入り口としては使いやすい一方、アコースティックピアノに近い鍵盤の重さを求めるなら、88鍵のPシリーズなどと弾き比べて決めましょう。
ピアノ目的なら88鍵盤のPシリーズ
ヤマハで「ピアノの練習」を優先するなら、88鍵盤のPシリーズが候補になります。P-145とP-225はともに88鍵のGHC(グレードハンマーコンパクト)鍵盤を採用し、2026年8月時点のヤマハミュージック直営店価格ではP-145が52,800円、P-225が68,200円です。
P-145の最大同時発音数は64音、P-225は192音と、同じ88鍵・同じGHC鍵盤でも音源や機能には大きな違いがあります。「88鍵なら中身も同じ」と考えず、鍵盤、音源、スピーカー、ペダル対応、端子などを比較しましょう。
さらに据え置き型を考えるなら、ARIUSやClavinovaも候補です。ヤマハはPシリーズを含む電子ピアノについて2026年9月1日から価格改定を案内しているため、購入時には最新価格を確認してください。
最終的にどのモデルが合うかは、弾きたい曲や練習目的、設置場所でも変わります。できれば楽器店で試弾し、ピアノの先生や販売員にも相談したうえで決めてください。
後悔しないステップアップの進め方
「まずは61鍵盤から」という選択も、買い替えの基準まで考えておけば立派な戦略です。重要なのは「いつまで61鍵盤を使うか」を年数で決めるのではなく、自分の練習内容から判断することです。
61鍵盤から買い替えるタイミング
- 弾きたい曲で61鍵盤の音域が足りなくなった
- ピアノ教室へ通い、本番とのタッチ差が気になってきた
- ハンマーアクションや3本ペダルを使った表現を練習したくなった
この3つのどれかが出てきたら、88鍵盤へのステップアップを検討するタイミングです。何か月、何年で必要になるかは、練習頻度や弾く曲によって大きく異なります。
子どものレッスンでも、教材の進み方は一人ひとり違います。「ブルグミュラーに入ったら必ず買い替える」と決めつけるのではなく、実際に使う楽譜の音域と先生の方針を確認して判断するのが確実です。
鍵盤が足りなくなったり、タッチへの要求が高くなったりするのは、練習内容がステップアップしている証拠でもあります。今の楽器でできないことが増えてきたら、次の1台を考えてみましょう。
使わなくなった61鍵盤の手放し方
買い替えた後の61鍵盤には、いくつかの使い道があります。サブ機として実家や別の部屋に置く、フリマアプリで売る、楽器買取業者へ査定を依頼するといった方法が代表的です。
61鍵盤は大型の据え置き電子ピアノより発送しやすいものの、サイズや重量によって利用できる配送方法は異なります。楽器専門の買取業者に査定を依頼し、フリマアプリの相場や送料まで含めて比較すると判断しやすいでしょう。
買取価格はメーカー、型番、年式、状態、付属品、市場需要によって変わります。数千円程度になることもあれば、それ以上の価格がつくモデルもあるため、事前査定がおすすめです。詳しい売却方法は電子ピアノ買取の解説記事にまとめています。
ピアノ教室の先生に相談する
楽器選びに迷ったら、これから習う予定のピアノ教室で相談するのも有効です。先生によって使う教材や練習方針が違うため、「何鍵必要か」「ペダルはどこまで必要か」を具体的に確認できます。
順番を逆にして、近くのピアノ教室の体験レッスンに参加してから楽器を選ぶのもひとつの方法です。88鍵盤のアコースティックピアノや電子ピアノを実際に弾いてみれば、61鍵盤との違いを自分の指で確認できます。
大人向けのレッスンを用意している教室もあります。独学かレッスンかにかかわらず、自分が何を弾けるようになりたいのかを整理してから楽器を選ぶことが、後悔を減らす近道です。
61鍵盤と88鍵盤のよくある質問
最後に、61鍵盤と88鍵盤にまつわる疑問へ一問一答で答えます。購入前の最終チェックにどうぞ。
まとめ 迷ったら88鍵盤という結論
61鍵盤と88鍵盤の違い、そして選び方の考え方をお伝えしてきました。最後に要点を振り返っておきましょう。
- 61鍵盤は約5オクターブで、伴奏や弾き語りには十分なケースが多い
- 教材や曲が進むと、61鍵盤の音域では足りない作品が出てくる
- 家庭向け61鍵盤でハンマーアクション搭載モデルは非常に少ない
- ピアノを長く続けるなら88鍵盤+ハンマーアクションが選びやすい
- 同時発音数やペダル性能は鍵盤数ではなくモデルごとに確認する
- 61鍵盤で始めるなら将来の買い替えも想定しておく
私自身、61鍵盤から始めてピアノを好きになった人間です。だから61鍵盤を「ダメな楽器」とはまったく思いません。大切なのは、自分の目的に合っているかどうかです。歌や伴奏を気軽に楽しむなら61鍵盤、ピアノと長く付き合うなら88鍵盤。これが元販売員としての結論です。
置き場所と予算が許し、本格的にピアノを続けるつもりなら、88鍵盤を選んでおくと音域による買い替えは避けられます。ただし「88鍵なら何でも同じ」ではありません。ハンマーアクション、ペダル対応、最大同時発音数、サイズまで確認することが重要です。最終的な購入判断は、楽器店での試弾やピアノの先生への相談、メーカー公式サイトでの最新仕様・価格の確認も踏まえて決めてください。
