YAMAHA CLP-775というキーワードで検索している読者は、クラビノーバシリーズの中でも特に高性能なモデルの具体的な特徴や、それが自身の演奏環境や練習目的に適合するかどうかを知りたいと考えているだろう。現在、CLP-775は生産完了品となっているものの、そのグランドタッチ鍵盤と木製鍵盤の特長、そしてトランスデューサーによる音響空間と響きの再現技術は、CLP-700シリーズの中でも特筆すべき優位性を持つ。ただ、上位機種ならではの懸念点や、下位モデルのCLP-745との具体的な仕様の違いを把握した上で購入を検討しなければ、後悔する可能性がある。
本稿では、CLP-775が実現する高い演奏性や音響技術を深く掘り下げるとともに、中古市場価格帯や、購入前に留意すべき鍵盤アクションの懸念点まで多角的に分析する。
この記事を読むことで「YAMAHA CLP-775」と検索した読者が具体的に何について理解を深められるか
- グランドピアノに迫る演奏性を実現する鍵盤アクションと機構の全容
 - CFXとベーゼンドルファーを含むCLP-775の音響システムとVRM技術の詳細
 - CLP-745と比較した際の具体的な優位点と中古市場での価格相場
 - 購入後に後悔しないために、事前に把握すべき鍵盤タッチや機構音の注意点
 
YAMAHA CLP-775の演奏性と音響システムを分析

- グランドタッチ鍵盤と木製鍵盤の特長
 - 演奏の表現力を支える鍵盤長と機構
 - GPレスポンスダンパーペダルの再現性
 - 世界的なCFXとベーゼンドルファーの音色
 - VRMやグランドエクスプレッションモデリングの技術
 - トランスデューサーによる音響空間と響き
 
グランドタッチ鍵盤と木製鍵盤の特長
CLP-775は、グランドピアノの演奏フィールを追求するため、最上位クラスの鍵盤技術であるグランドタッチ鍵盤を採用している。この鍵盤は、単にハンマーの重さを再現するだけでなく、指先に手応えを感じながら、繊細な音色から雄大な音色まで、ダイナミックレンジに応じて多彩な表現を可能とする。
鍵盤の素材には、楽器用に乾燥させた「むく材」が白鍵部分に使用されている。このむく材を採用することで、積層タイプの木製鍵盤と比較して歪みにくいというヤマハならではの特長を持つ。多くのピアノ学習者はアコースティックピアノに近いフィーリングを求めるため、木製鍵盤の採用は表現力を養う上で大切である。
加えて、白鍵は象牙調、黒鍵は黒檀調の仕上げが施されている。これにより、長時間の演奏においても吸湿性が高く滑りにくいタッチ感が得られ、ピアニストが求める快適な演奏環境を提供する。
演奏の表現力を支える鍵盤長と機構
鍵盤アクションの設計において、CLP-775のグランドタッチ鍵盤は、電子ピアノとしての表現力を高める複数の機構を備えている。
まず、鍵盤の奥側に支点までの距離が長く取られている点だ。クラビノーバの鍵盤は、演奏者が弾く手前部分から、本体奥側の支点までの長さが可能な限り長く設計されている。この鍵盤支点までの距離がヤマハ電子ピアノの中で最長であるという特徴は、黒鍵を多く使用する楽曲などにおいて、白鍵の奥側を弾く際でも表現豊かな演奏を可能にする。
そして、「88鍵リニアグレードハンマー」が搭載されている点も特筆すべきだ。グランドピアノでは、低音域から高音域へ向かうにつれて弦の太さや長さが変わり、それを打つハンマーの重みも変化する。この88鍵すべてで異なる鍵盤の重みや戻りの感触を、電子ピアノとして忠実に再現しているのがこの機構だ。これにより、ピアニストはより正しいタッチ感を身に付け、アコースティックピアノに近い感覚で演奏技術を磨くことができる。
また、打鍵時にハンマーが弦から速やかに離れ、弦の振動を妨げないようにするグランドピアノ特有の仕組みであるエスケープメント機構も、全ての鍵盤で再現されている。弱い力で鍵盤を押した際に感じるわずかな手ごたえは、繊細な演奏のニュアンスを掴む上で重要だ。
GPレスポンスダンパーペダルの再現性

ペダル操作はピアノの音の表情を繊細に変化させるために不可欠な要素である。CLP-775は、ペダルユニットにもグランドピアノさながらの踏み心地を再現するGPレスポンスダンパーペダルを採用している。
GPレスポンスダンパーペダルの特徴は、ペダルを踏み始めた瞬間は軽く、ペダルの効果が出始めるところで重く感じるというグランドピアノ特有の荷重変化を再現している点にある。この構造は、ダンパーペダルの踏み込みの深さを連続的に感知し、響きの量や伸び方を調節するハーフペダル操作を正確に体感し、身に付けるのに役立つ。
ダンパーペダルの他に、左側のソフトペダル、中央のソステヌートペダルの計3本が装備されており、ダンパーペダルはハーフペダルにも対応している。また、ボイスメニューやシステムメニューからペダル機能の割り当てを変更することができ、例えばピッチベンドアップやロータリースピードなど、計9種類の機能を割り当てることが可能だ。
世界的なCFXとベーゼンドルファーの音色
CLP-775は、世界最高峰のコンサートグランドピアノの音色を、贅沢に選んで楽しめるよう設計されている。
その中でも特に重要なのは、ヤマハ最高峰のコンサートグランドピアノ「CFX」と、長い歴史を持つウィーンのピアノブランド、ベーゼンドルファー社のフラッグシップモデル「インペリアル」の音色が新たにサンプリングされ搭載されている点である。CFXの音色は、力強く煌びやかで表情豊かな響きが特長であり、世界各地のコンサートホールで高く評価されている。一方、ベーゼンドルファー・インペリアルの音色は、豊かな色彩と木の温もりを感じさせる深みのある響きが特長で、美しいピアニッシモの表現に適している。
奏者は曲のイメージや気分に合わせて、これら2種類のグランドピアノの音色を切り替えることが可能だ。また、最大同時発音数は256音であり、複雑な演奏でも音が途切れることなく、豊かな表現が可能である。
VRMやグランドエクスプレッションモデリングの技術
CLP-775の音源部は、サンプリングされた音色をさらにリアルな響きへと昇華させる高度なモデリング技術を備えている。
その一つがVRM(バーチャル・レゾナンス・モデリング)である。アコースティックグランドピアノの魅力である、楽器全体が振動して生まれるふくよかな共鳴音を、この画期的な技術が緻密に再現する。弦の振動が他の弦や響板に伝播する複雑で多彩な共鳴に加え、鍵盤を押す瞬間やペダルを踏むタイミングとその強さに応じた共鳴音を響かせることで、変化に富んだ音色を作り出す。CLP-700シリーズでは、アリコート、弦、響板全域、側板が生み出す響きに加え、ダンパーが上がり弦が開放される時に生じるダンパーノイズまでシミュレートされているため、ピアノの筐体全体で生み出されるダイナミックな共鳴が体感できる。
さらに、「グランドエクスプレッションモデリング」は、指先からのインプットの違いによる音色の変化を、グランドピアノと同様に無限に生み出す技術だ。鍵盤を押し込む深さや強弱、スピードといったタッチのわずかな違いが音色の変化に反映されるため、トリルやレガートなどの奏法においても、奏法に応じた軽やかでスムースな音色表現が可能となる。これにより、演奏者が思い描く細やかなニュアンスまで、より忠実に表現することができる。
トランスデューサーによる音響空間と響き
CLP-775は、本体から出る音の響き方にもこだわった音響システムを搭載している。
このモデルのアンプ出力は (42 W + 50 W + 50 W) x 2 であり、スピーカーは (16 cm + 8 cm + 5 cm + トランスデューサー) x 2 という独自の構成を持っている。一方、下位モデルであるCLP-745のスピーカー構成は (16 cm + 8 cm) x 2であるため、この点がCLP-775の音響面の大きな優位性となる。
特に「トランスデューサー」の搭載が重要である。トランスデューサーは、グランドピアノを演奏したときに体感できる奥行感を再現し、響板全体から音が鳴っているような立体的な鳴り方を実現する。この技術は、最新の音響設計技術に基づいた「グランドアコースティックイメージング」の一部として機能しており、コンパクトな電子ピアノでありながらグランドピアノの音像や音場を再現する。
これにより、奏者の前でハンマーが弦を打っているような感覚や、弦の響きの余韻が奥へ消える感じまでも再現されるため、よりリアルな空間への音放射と音の重心を感じながら演奏に集中できる。
YAMAHA CLP-775の機能と購入時の重要比較点

- Bluetooth接続とタッチセンサーの利便性
 - 豊富なレッスン曲とUSBオーディオ録音
 - CLP-745との主な仕様の違いと優位性
 - 生産完了品であることと中古市場価格帯
 - 購入前に知っておくべき鍵盤アクションの懸念点
 - YAMAHA CLP-775の持つ魅力と選び方の総括
 
Bluetooth接続とタッチセンサーの利便性
CLP-775は、現代のデジタル環境に対応するための接続機能と、演奏への集中力を高めるための操作パネルデザインを両立させている。
まず、Bluetoothオーディオ受信とMIDI送受信に対応している。Bluetooth接続を使うことで、スマートフォンやタブレットなどの対応デバイス内の音楽アプリで楽曲を再生し、その音をクラビノーバのスピーカーから鳴らしたり、曲に合わせて演奏したりすることが可能である。
操作パネルには、CLP-745までのボタンタイプではなく、タッチセンサーコントロールパネルが採用されている。このパネルの大きな特長は、操作していない時は表示が消灯する点だ。このため、演奏に集中したい時でも、操作パネルの視覚的な存在感に邪魔されることなく、グランドピアノのように上質な演奏空間を作り出すことができる。
ただし、タッチセンサーパネルは、指で押して操作する仕組みであり、CLP-775の操作パネルは画面(フルドットLCD 128 x 64 ドット)とタッチセンサーが統合されている。タッチパネル操作音をオフに設定することも可能であるため、より静かな環境での操作も実現できる。
豊富なレッスン曲とUSBオーディオ録音
ピアノ学習者の練習を強力にサポートするため、CLP-775には豊富な内蔵コンテンツが用意されている。
プリセットされている内蔵曲は、クラシック名曲50選に加え、ピアノ教則本『バイエル』、『ブルグミュラー』、『チェルニー』、『ハノン』の主なレッスン曲303曲を収録している。これらのレッスン曲は、テンポの変更や、片手パートずつの再生など、練習に役立つ機能が充実しているため、ピアノ教室で使われる教材をそのまま練習に組み込める。
また、演奏の記録方法も充実している。本体にはMIDI録音機能が搭載されており、最大250曲、16トラックの録音が可能である。これにより、両手で弾くのが難しい曲でも、右手と左手の演奏を別々に録音し、重ねて仕上げることができる。
さらに、USBフラッシュメモリー(別売)を使えば、演奏をオーディオファイル(WAV形式、44.1kHz、16 bit、ステレオ)として録音できるUSBオーディオレコーダー機能が搭載されている。オーディオデータとして保存されるため、コンピューターで管理したり、携帯音楽プレーヤーに転送して客観的に演奏を聞き返したりすることが可能である。
CLP-745との主な仕様の違いと優位性

CLP-775は、CLP-700シリーズの中位機種であるCLP-745と比較して、鍵盤アクションと音響システムにおいて顕著な優位性を持つ。
決定的な違いは、鍵盤の種類である。CLP-775は「グランドタッチ鍵盤」を搭載し、鍵盤先端から支点までの距離がヤマハ電子ピアノの中で最長である。一方、CLP-745は「グランドタッチ-エス鍵盤」を搭載している。この違いは、特に鍵盤奥側を弾く際の弾きやすさや表現力に直結する。
音響面では、前述の通り、CLP-775はトランスデューサーを含む (16 cm + 8 cm + 5 cm + トランスデューサー) x 2の多層的なスピーカー構成を持ち、アンプ出力も大幅に向上している。CLP-745のスピーカー構成は (16 cm + 8 cm) x 2であり、音響空間の再現性でCLP-775が優れていると言える。
機能面では、CLP-775がタッチセンサーコントロールパネルを採用しているのに対し、CLP-745はボタンタイプである。
CLP-775とCLP-745の主な比較点を以下の表にまとめる。
| 項目 | CLP-775 | CLP-745 | 
|---|---|---|
| 鍵盤種 | グランドタッチ鍵盤 (木製白鍵、むく材) | グランドタッチ-エス鍵盤 (木製白鍵) | 
| 鍵盤長(支点距離) | ヤマハ電子ピアノの中で最長 | グランドタッチ鍵盤より短い | 
| 操作パネル | タッチセンサー | ボタン | 
| アンプ出力 | (42 W + 50 W + 50 W) x 2 | (50 W + 50 W) x 2 | 
| スピーカー | (16 cm + 8 cm + 5 cm + トランスデューサー) x 2 | (16 cm + 8 cm) x 2 | 
| 質量 | 71 kg | 60 kg | 
生産完了品であることと中古市場価格帯
CLP-775は、ヤマハによって生産完了品として案内されているモデルである。したがって、新品での入手は難しく、在庫限りとなるか、主に中古市場で取引されることになる。
このため、購入を検討する際は、最新機種との性能差だけでなく、中古市場価格の変動や、製品の状態を詳細に確認することが重要だ。
2024年現在、中古品や未開封品の取引価格を見ると、その価格帯はかなり幅広く、メルカリの取引事例では11万円から26万9千円程度で取引されている実績が見られる。この価格差は、製造年(20年製、22年製など)や、カラー(ブラックウッド調、ニューダークローズウッド調、黒鏡面艶出しなど)、そして商品の状態によって生じる。
購入する際は、商品のシリアルナンバーや製造年を確認し、保証やアフターサービス(修理相談など)の有無についても留意する必要がある。なお、ヤマハの電子ピアノの仕様に関する詳細情報は、ヤマハの公式サイトのサポートページ(https://jp.yamaha.com/support/)などで確認できる。
購入前に知っておくべき鍵盤アクションの懸念点
CLP-775の最大の特長であるグランドタッチ鍵盤は、その高い表現力とリアルなタッチ感で高く評価されている一方で、購入前に留意すべき点も存在する。
一部のユーザーレビューでは、CLP-775のアクションは他のモデルに比べて「かなり重め」であるという意見が見られる。これは、表現力豊かに演奏する能力を養うのに役立つという肯定的な意見がある一方で、鍵盤の重さに慣れるまでに時間がかかる可能性があるという指摘も同時に存在する。
また、電子ピアノの構造上、鍵盤を弾いた際に生じる機構音(「カツン」や「ペチッ」といった打鍵音)に関する懸念も一部のユーザーから報告されている。鍵盤機構はグランドピアノの機構をシミュレートして設計されているため、ある程度の機構音は出るものだが、特に集合住宅などで使用する場合、この打鍵音が気になる可能性がある。
そのため、CLP-775の購入を検討する際は、カタログスペックやレビュー情報だけでなく、可能な限り実機を試弾し、ご自身の演奏スタイルや好みに合う鍵盤の重みであるか、そして設置環境で機構音が許容範囲内であるかを確認することが、後悔しない選択をするための鍵となる。
YAMAHA CLP-775の持つ魅力と選び方の総括

YAMAHA CLP-775は、鍵盤アクション、音源技術、音響システムにおいて、電子ピアノのミドルレンジからハイエンドの橋渡しとなる高い完成度を持つモデルである。
このモデルを選ぶことで、演奏者はグランドピアノに近いタッチ、世界的なコンサートグランドピアノの音色、そして高度なデジタル技術による共鳴の再現性を享受できる。現在生産完了品となっているが、中古市場で適切な価格と状態のものを見つけられれば、高いコストパフォーマンスを発揮すると考えられる。
この機種の鍵盤支点までの距離は長く設計されているため鍵盤奥側でも弾きやすい CFXとベーゼンドルファーインペリアルの二種類の音色を選べる贅沢さがある ペダルは踏み込みの深さに応じて応答するGPレスポンスダンパーペダルを採用する VRM技術により弦や響板などピアノ全体の複雑な共鳴音が緻密に再現される トランスデューサーを含む独自設計のスピーカー構成が立体的な音場を提供する アンプ出力は三層構成で下位モデルCLP-745よりもパワフルな音響性能を持つ 鍵盤アクションは上級者に求められる「重め」のタッチ感を忠実に再現している CLP-745と比較して鍵盤はグランドタッチ鍵盤、操作パネルはタッチセンサー式である 演奏に集中できるタッチセンサーコントロールパネルは操作時以外は表示が消える Bluetooth接続に対応しておりオーディオ再生やアプリ連携がスムーズに行える レッスン曲はバイエルやチェルニーなど303曲が内蔵され練習を強力に支援する 本体録音だけでなくUSBフラッシュメモリーへのオーディオ録音も可能である 生産完了品のため中古品を選ぶ際は鍵盤の重みや機構音を試弾で確認すべきだ 最新機種が発表された後でもCLP-775の基本性能は十分な価値を維持している 本格的な演奏経験を求める学習者や愛好家にとって満足度の高い一台となる


