電子ピアノでグランドピアノに近い体験を|上級者も満足の選び方

grand piano コラム

「電子ピアノ グランドピアノに近い」というキーワードで検索しているあなたは、自宅で本格的なピアノ演奏を楽しみたいと考えているのではないだろうか。高価なグランドピアノを置くのは難しいが、限りなく本物に近い弾き心地や音色を電子ピアノに求めていることだろう。各メーカーは鍵盤アクション、音源、スピーカー、ペダル操作において、グランドピアノの感触を再現するために独自の技術を投入している。この記事は、電子ピアノでグランドピアノに近い体験を得るための多角的な分析を通して、あなたのピアノ選びの疑問を解消することを目指す。

この記事を読むことで「電子ピアノ グランドピアノに近い」と検索した読者が具体的に理解を深められることは以下の通りだ。

  • 電子ピアノの鍵盤構造がグランドピアノのタッチ感にどのように影響するか
  • 主要メーカーが開発する木製鍵盤やハイブリッドピアノの技術について
  • グランドピアノの響きを再現する音源の種類とスピーカーの役割
  • 予算に応じた、グランドピアノに近い感覚で演奏できる電子ピアノの選び方

電子ピアノ グランドピアノに近い鍵盤アクションの比較

grand piano
  • 電子ピアノの鍵盤構造とグランドピアノタッチ
  • 各メーカーの木製鍵盤が再現するグランドピアノのタッチ
  • ハイブリッドピアノの鍵盤で得るグランドピアノの感触
  • 連打性重視で選ぶ電子ピアノの鍵盤アクション
  • グランドピアノに近いペダル操作の重要性

電子ピアノの鍵盤構造とグランドピアノタッチ

電子ピアノを選ぶ際、鍵盤のタッチは演奏感に直結するため、非常に重視される要素だ。電子ピアノの鍵盤は主に3つの種類に分けられ、それぞれに異なる特徴がある。一つ目は樹脂鍵盤で、比較的軽いタッチが特徴である。二つ目は木製鍵盤で、樹脂鍵盤に比べて鍵盤が長く、グランドピアノのタッチに近づく傾向がある。そして三つ目がハイブリッドピアノの鍵盤で、これはアコースティックピアノの鍵盤の仕組み(アクション)をほぼそのまま搭載しており、限りなくアコースティックピアノのタッチに近い感触が得られる。

ハイブリッドピアノの鍵盤には、グランドピアノの鍵盤と同じ仕組みのものと、アップライトピアノの鍵盤と同じ仕組みのものと、二種類が存在する。グランドピアノの鍵盤は、押す強さや離すタイミングによって音の表情が無限に変化するため、電子ピアノでもこの特性をどこまで再現できるかが表現力育成の鍵となる。鍵盤の長さ、具体的には支点までの距離は、タッチ感に大きく影響する。上位の木製鍵盤は支点までの距離がグランドピアノのように長く設計されているため、より自然なタッチ感で、鍵盤の奥の方を弾く際も弾きやすさを感じるメリットがある。ピアノ上級者にとっては、このようなハイブリッドピアノの鍵盤や木製鍵盤が、演奏表現力を養う上で特に推奨されている。

各メーカーの木製鍵盤が再現するグランドピアノのタッチ

グランドピアノに近いタッチ感を再現するため、主要な電子ピアノメーカーはそれぞれ独自の木製鍵盤技術を開発している。ヤマハ、カワイ、ローランドにはそれぞれ二種類の木製鍵盤があり、上位の鍵盤ほどグランドピアノのタッチに近づく。

ヤマハの木製鍵盤

ヤマハの「グランドタッチ鍵盤」は、グランドピアノの特徴である「1鍵1鍵重さが違う」点や、「タッチによって指先の感触が変わる」点を再現している。特に、弱く弾くと軽く、強く弾くとしっかりとした手応えを感じられるように設計されており、鍵盤を押し切った際に底でしっかりと止まる感覚があるため、コントロールしやすいと評価されている。最新の「グランドタッチ-エス™鍵盤」や「グランドタッチ™鍵盤」は、繊細な表現やグランドピアノ特有のエスケープメント(ハンマーが弦を叩かずに離れる感触)を忠実に再現しているモデルに搭載されている。CLP-885の鍵盤には、ピアニッシモのような繊細なタッチの演奏性を高めるカウンターウェイトも搭載されている。

カワイの木製鍵盤

カワイの「グランド・フィール・アクションⅢ鍵盤」は、白鍵だけでなく黒鍵も木製である点が大きな特徴だ。グランドピアノと同じシーソー式構造を採用し、ハンマーが鍵盤の上側に配置されている点も共通する。また、カウンターウェイトを搭載することで、弱いタッチでも繊細なコントロールが可能になっている。カワイの木製鍵盤は、最もグランドピアノに近い感触が得られると多くのユーザーから評価されており、特にCA401に搭載されている「グランド・フィール・スタンダード・アクション」は、高速の連打やトリル、なめらかなレガートをグランドピアノに近いタッチで演奏できる。CA901の「グランド・フィール・アクションⅢ」は、電子ピアノとして最長クラスの支点距離や、鍵盤をゆっくり押した時に感じるクリック感など、細部にわたるこだわりが詰まっており、音域別に分類されたハンマーウェイトとカウンターウェイトの組み合わせにより、グランドピアノ特有のタッチ感を実現している。さらに、鍵盤の動きを支えるフロントピンやバランスピンには、グランドピアノと同様の真鍮製素材が採用されており、より本格的なタッチ感をもたらす。

ローランドの木製鍵盤

ローランドは「PHA-4アクション」のような鍵盤機構を、FP-30xからHP702まで幅広いモデルに搭載しており、これらのモデルで同様の感触を得られる。ハイエンドのアクションには「PHA-50」や「ハイブリッド・グランド」があり、これらも複数の価格帯のモデルで採用されている。ローランドの「ハイブリッド・グランド鍵盤」は、樹脂と木材を組み合わせた構造で、グランドピアノに近いタッチ感と高い耐久性を両立させている。ヤマハやカワイの鍵盤と比較するとやや軽く感じられる場合もあるが、非常に弱いタッチから強いタッチまで幅広い表現に対応できる点が特徴だ。LX705では、木材と樹脂のハイブリッド鍵盤が、アコースティックピアノの演奏性と耐久性、安定性を兼ね備えていると評されている。また、LX-6ではグランドピアノの鍵盤と同じ長さにすることで、よりグランドピアノに近い鍵盤タッチを実現している。FP-10に採用されている鍵盤は、鍵域ごとの異なるハンマーアクションや高精細なセンサー、そしてグランドピアノのエスケープメント機構を再現することで、リアルなタッチ感を提供している。

カシオの鍵盤技術

カシオは、樹脂鍵盤以外のモデルではハイブリッドピアノに特化している。カシオのCELVIANO GP-310やGP-510BPでは、世界三大ピアノメーカーの一つであるベヒシュタインのグランドピアノの鍵盤と同じ、オーストラリア産のスプルース材を鍵盤に使用している。グランドピアノと同じ乾燥・加工を施し、白鍵、黒鍵、土台の全てを木製にしている徹底ぶりで、鍵盤表面素材もグランドピアノと同じ素材を使うことで、タッチはグランドピアノそのものと評価されている。また、CASIO Privia PX-S7000に搭載される「スマートハイブリッドハンマーアクション鍵盤」は、ハンマーの自重を最新デジタル制御技術でコントロールし、弾きごたえのある本格的なタッチでの演奏を実現している。

ハイブリッドピアノの鍵盤で得るグランドピアノの感触

ハイブリッドピアノは、アコースティックピアノの鍵盤機構をほぼそのまま搭載しているため、限りなくグランドピアノのタッチ感を実現しているのが特徴だ。ヤマハのアバングランドシリーズは、まさにこのハイブリッドピアノの代表例であり、プロのピアニストが練習用として購入するだけでなく、ツアー時にホテルの部屋に設置を契約条件にするほど、その演奏性が高く評価されている。アバングランドの最大の特徴は、グランドピアノと全く同じ木製鍵盤とアクション機構を搭載していることにある。発音はデジタル方式だが、鍵盤からハンマーまでのアクションの動きはグランドピアノと同一であるため、本物ならではの弾き応えのあるタッチで演奏することができる。

ヤマハのアバングランドは、弦を持たないためコンパクトでありながら、グランドピアノの演奏感を忠実に再現している。ペダルについても、踏み出しは軽く、ペダル効果が出始める部分で重くなるグランドピアノの踏み心地を再現しており、ハーフペダルのような繊細な操作感も得られる。この技術の融合は、アコースティックとデジタルのそれぞれの長所を組み合わせることで、新しい価値を提案するというヤマハの「トータルピアノ戦略」から生まれたものだ。

カシオのハイブリッドピアノ、特にGP-310やGP-510BPも、グランドピアノの感触を追求したモデルとして注目されている。これらのモデルでは、世界三大ピアノメーカーの一つであるベヒシュタインのグランドピアノの鍵盤と同じ、オーストラリア産のスプルース材を鍵盤に使用し、グランドピアノと同じ乾燥・加工を施している。白鍵、黒鍵、土台の全てが木製であり、鍵盤表面素材もグランドピアノと同じ素材を用いることで、「タッチはグランドピアノそのもの」という評価を得ている。ヤマハやカワイのハイブリッドピアノが65万円から90万円程度の価格帯であるのに対し、カシオのGP-310は30万円台から購入可能であり、高い品質を比較的手頃な価格で提供している。グランドピアノに近い鍵盤の戻りの速さや安定性から、ハイブリッド鍵盤は連打性にも優れており、特にピアノ上級者におすすめの選択肢となっている。

連打性重視で選ぶ電子ピアノの鍵盤アクション

連打性は、トリルや同音連打のような速いパッセージを演奏する際に、鍵盤がどれだけ速く、安定して次の打鍵を受け付けられるかを示す重要な指標だ。特にピアノ上級者にとっては、自身の意図した通りの表現を可能にするために、この連打性の高さが不可欠である。安価な電子ピアノでは、指の動きに鍵盤が追いつかず、音が途切れてしまうことがあるが、木製鍵盤やハイブリッド鍵盤を採用したモデルは、鍵盤の戻りが早く安定しているため、優れた連打性を発揮する。

カワイの木製鍵盤は、鍵盤の戻りが非常に速く、鍵盤を完全に元の位置に戻しきらなくても次の音が出せるように設計されているため、速い同音連打やトリルの演奏が容易である。特にCA401は、鍵盤から指を離した瞬間に次の打鍵が可能になるほどの高い連打性を持ち、グランドピアノと遜色ない演奏感を提供すると評されている。

一方、メーカーやモデルによって連打性への評価は異なる。CASIO Privia PX-S1100はトリルや連打に対する鍵盤の反応が良いとされているが、Roland FP-10やKAWAI CA401は、連打やトリル時の鍵盤の反応がやや遅いと感じられる場合もある。しかし、Roland DP603やLX705は、連打やトリル演奏時の鍵盤の反応が良いと評価されており、CASIO CELVIANO GP-510BPも、トリル、連打、高速のパッセージを弾いた際の鍵盤の反応が非常に良い。このモデルは、トリルや同音連打、瞬間的な動きや速いパッセージを意のままに操る演奏性を実現している。

グランドピアノに近いペダル操作の重要性

ピアノ演奏において、ペダルは響きを豊かにし、楽曲に深みや華やかさを加えるために不可欠な要素である。現代のピアノは3本ペダルが主流であり、その役割はグランドピアノとアップライトピアノで一部異なるが、電子ピアノのペダルはグランドピアノと同じ役割を持つように設計されている。

3本ペダルの役割

  • ダンパー・ペダル:最も頻繁に使用されるペダルであり、踏み込むと全てのダンパーが弦から離れ、音が長く響き続ける。
  • ソステヌート・ペダル:直前に押された鍵盤のダンパーのみが弦から離れ、その特定の音だけが持続して響くため、複雑なハーモニー表現が可能となる。
  • ソフト・ペダル:グランドピアノの場合、打弦位置がわずかにずれることで、叩く弦の本数が3本から2本に変わり、音量が弱まると同時に柔らかい音色変化が生まれる。アップライトピアノのソフトペダルはハンマー全体が弦に近づくことで音を弱める。

ペダル操作は単に「踏む」「踏まない」だけでなく、「ハーフペダル」と呼ばれる半分だけ踏み込む繊細なコントロールが必要となる。これは、音の響きの量や伸び方を微調整するために重要であり、上級者にとって必須のテクニックである。

ヤマハのアバングランドは、ペダルの踏み出しは軽く、ペダルの効果が出始めるポイントで重くなるグランドピアノの踏み心地を忠実に再現している。これにより、ハーフペダルの繊細な操作感も自然に習得できる。ヤマハのCVP-909に搭載された「グランドタッチ™ペダル」は、踏み込む際に重く、離す際に軽くなるというグランドピアノ特有の踏み心地を再現し、さらにリアルな感覚を提供する。

ローランドは、ペダル操作の再現性にも力を入れている。「プログレッシブ・ダンパー・アクション・ペダル」は、踏み始めてから実際に音が伸び始めるポイントでぐっと重みが増すため、アコースティックピアノと同様の感覚で自然なペダリング技術を練習できる。また、LX708に搭載された「レスポンシブ・ダンパー・アクション・ペダル」は、ペダルを踏んだ時と戻す時の重みの違いまで再現しており、上級者の繊細な演奏表現にも対応する。

カシオのCELVIANO GP-510BPは、本物のペダル動作を追求した独自のシステムを搭載し、ハーフペダルはもちろんのこと、ソフトペダルによる音色変化も忠実に再現できる点が特筆される。このようなペダル機能の再現性は、過去にグランドピアノのタッチの難しさを経験した演奏者にとって、自宅での練習環境を劇的に向上させるだろう。ペダルの感触は電子ピアノ開発における最後の難関の一つであったとも言われている。


電子ピアノ グランドピアノに近い音源と響きを追求

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  • サンプリングとモデリング音源の違いを理解する
  • グランドピアノに近い音を生むスピーカーの配置
  • 各メーカーがこだわるグランドピアノの音色
  • 予算別電子ピアノ グランドピアノに近いおすすめモデル
  • 電子ピアノ グランドピアノに近い選び方のまとめ

サンプリングとモデリング音源の違いを理解する

電子ピアノの音の生成方法には、主に「サンプリング音源」と「モデリング音源」の二種類がある。これら二つの音源方式は、それぞれ異なるアプローチでグランドピアノの音を再現しようとしている。

サンプリング音源

サンプリング音源は、実際のグランドピアノの88鍵盤全ての音を、1音ずつ丁寧に録音(サンプリング)し、その音データを使用する方式だ。グランドピアノはタッチの強弱や音の長さによって音色が無限に変化するため、サンプリング音源では、これらの弾き方による音色の違いを細かく録音することで、豊かな表現力を実現している。グランドピアノを製造するメーカー、例えばヤマハやカワイの電子ピアノの多くは、このサンプリング音源を採用している。これらのメーカーは、自社のフルコンサートグランドピアノの音をサンプリングしており、ステージでしか味わえないような本物のグランドピアノの音色を家庭で楽しめるようにしている。カシオの一部上位機種でも、世界的に有名なベヒシュタインのピアノ音をサンプリングしたものを使用している。

モデリング音源

一方、モデリング音源は、録音された音を使用するのではなく、弾いた瞬間のタッチ情報に基づいて「どのような音が出るか」をシミュレーションし、リアルタイムで音を作り出す方式である。グランドピアノは、鍵盤が押されることで弦が振動し、その振動が響板や他の弦に伝わって複雑な共鳴音を生み出す。モデリング音源は、この共鳴部分も含めて音を計算して生成できるため、曲の流れや演奏者の微細なタッチの変化に応じて、音色がリアルタイムかつ自然に変化する特徴がある。この技術は、特に電子楽器に強みを持つメーカー、例えばローランド、カシオ、コルグなどで採用されている。ローランドの上位機種ではモデリング音源が採用されており、非常に豊かな表現力を持っている。弱いタッチから強いタッチまで、弾く強さに応じた音がしっかりと鳴り、LX708などには「ヨーロピアン」と「アメリカン」というキャラクターの異なる二つのピアノ音色が搭載され、さらに表現の幅を広げている。

どちらの音源方式を選ぶかは、最終的には「好み」が大きく影響する。実際に楽器店で両方の音源を試奏し、自身の感じる音色の好みやタッチへの反応を確かめることが、最適な電子ピアノを見つける鍵となるだろう。

グランドピアノに近い音を生むスピーカーの配置

電子ピアノから生み出される音がグランドピアノに近いと感じられるかどうかは、音源の質だけでなく、スピーカーの性能と配置が非常に重要な役割を果たす。スピーカーの数が多い電子ピアノほど、音に立体感が生まれ、まるで楽器全体から音が鳴っているかのような臨場感を演出できるため、グランドピアノの音色に近づく。スピーカーの配置は、音の表現力にも深く関係しており、スピーカーの数が多いモデルほど、音の強弱の幅が広がり、より自然な変化を表現できる傾向がある。

ヤマハのアバングランドシリーズは、このスピーカー配置と音響設計に特にこだわっている。グランドピアノの響板や共鳴弦の響きを忠実に再現するため、響板に近い位置で4か所の音をサンプリングしている。さらに、音を収録した位置に合わせたスピーカーを配置し、本体の上部、下部、背面など、複数の方向から音を放つことで、奏者を包み込むような立体的な響きを実現している。CLP-885のようなモデルでは、スピーカーにアコースティックピアノの響板と同じ素材を使用しており、より自然な響きを追求している。CLP-775は、高・中・低の3Wayスピーカーとアコースティックピアノの振動を再現するトランスデューサーを搭載し、「グランドアコースティックイメージング」という音響設計により、まるで響板から音が出ているかのような自然なサウンドを再現している

カワイのCA901は、独自のTWIN DRIVE響板スピーカーを核として、ディフュージングスピーカーやダイレクトスピーカーなど、合計6つのスピーカーを最適に組み合わせている。響板に設置された2種類の加振器が振動することで、スピーカーだけでは再現が難しいグランドピアノの荘厳で伸びやかな低音や奥行き感のある響きを、振動そのものから忠実に再現している。CA401にも高性能なスピーカーが4つ搭載されている。

ローランドの電子ピアノも、スピーカー配置に独自の工夫を凝らしている。LX705では4つのスピーカーによる「アコースティック・プロジェクション」がクリアで明瞭なピアノサウンドを生み出す。LX708も複数のスピーカー配置により立体的な音場を構築し、LX-9では他社モデル(6スピーカーが多い)を上回る8つのスピーカーを搭載することで、より広がりと深みのある響きを実現している。カシオのCELVIANO GP-510BPも、16cm×2と(10cm+5cm)×2の3ウェイ6スピーカーシステムを採用している。

スピーカーの配置と数は、電子ピアノが単なる楽器の音を出すだけでなく、その音が空間を満たし、演奏者を包み込むような体験を提供できるかどうかに直結するのだ。

各メーカーがこだわるグランドピアノの音色

電子ピアノの音色は、メーカーごとに独自のこだわりと技術が反映されているため、それぞれ異なる個性を持っている。グランドピアノのように、タッチの強弱によって音色が豊かに変化する電子ピアノでなければ、演奏表現力を育むことができない。そのため、各メーカーは音源のサンプリングやモデリングに細心の注意を払っているのだ。

カワイの音色

カワイの電子ピアノは、国際コンクールで公式採用されている同社のフルコンサートピアノ「SK-EX」の音色を基盤としている。CA401にはSK-EXの音色が搭載されており、SK-EXのピアノ音をタッチの強弱ごとに1音1音丁寧にサンプリングすることで、幅広い強弱表現とスムーズでリアルな音色変化を実現している。CA901に搭載されている「SK-EXレンダリング音源」は、SK-EXの音色一つだけのためにシステム全体を稼働させる革新的な音源システムだ。国際ピアノコンクールで調律経験のある熟練の調律師が選び抜いた一台を、最高の音響環境で録音することで、突き抜けるような強打音からささやくような弱打音まで、広範なダイナミックレンジとコンサートホールのような響きを実現している。

ヤマハの音色

ヤマハの電子ピアノは、世界に誇るコンサートグランドピアノ「ヤマハ CFX」と、世界三大ピアノメーカーの一つであるベーゼンドルファーの最上級モデル「インペリアル」の音色をサンプリングしている。CLP-735やCLP-775、そしてCVP-809/909といったモデルには、これらの名器の音が収録されており、熟練の調律師が最良の状態に調整した88鍵盤全ての音色を丁寧に録音している。ヤマハは独自の「スムースリリース」技術により、スタッカートでは歯切れの良い音、ゆっくり指を離した際には長く余韻を残す音を表現可能にし、タッチの強弱による音色変化を無段階でスムーズに実現している。また、CVP-909では「グランド・エクスプレッション・モデリング」により、鍵盤を押し込んでから離すまでの微細なタッチの変化が音に反映される技術が搭載されている。

ローランドの音色

ローランドの電子ピアノは、独自の「スーパーナチュラル・ピアノ・モデリング音源」や「ピアノ・リアリティ・モデリング音源」を核としている。これらのモデリング音源は、あらかじめ録音された音を再生するのではなく、弾いた瞬間のタッチに応じて音をリアルタイムで作り出すため、豊かな表現力を可能にする。DP603では「生きたピアノの音色」を楽しめるとされており、LX705やLX708には、ローランドが理想とする「ヨーロピアン」(優雅で滑らか)と「アメリカン」(明るく煌びやか)という二種類の異なるキャラクターのピアノ音色が搭載されている。モデリング音源は、ハンマーが弦を打ち、弦の振動が響板に広がるというピアノの「振る舞い」そのものを忠実に再現し、倍音の生成や離鍵、ハーフペダルの微細なコントロールにも応える。

カシオの音色

カシオの電子ピアノ、特にPrivia PX-S1100では「マルチ・ディメンショナル・モーフィングAiR音源」が採用されており、鮮やかで豊かな響きを特徴としている。CELVIANO GP-510BPでは、世界三大ピアノメーカーの一つである「C.ベヒシュタイン」と共同開発された「ベルリン・グランド」という音色を収録しており、リストやドビュッシーが愛したとされる音色を奏者の感性で表現できる。また、「ウィーングランド」の音色もリアルだと評価されており、独自の「マルチ・ディメンショナル・モーフィング」や「弦共鳴システム」などの最高峰技術により、本格的なピアノ演奏を可能にしている。このモデルは、音がタッチの変化に瞬時に反応し、音色や音量をコントロールしやすいという特徴も持つ。

このように、各メーカーはグランドピアノの持つ多様な音色と、それらが奏者のタッチによって豊かに変化するさまを電子ピアノで再現するために、技術の粋を凝らしている。

予算別電子ピアノ グランドピアノに近いおすすめモデル

電子ピアノを選ぶ際、グランドピアノに近い本格的な演奏感を求めるのであれば、ある程度の予算を考慮する必要がある。特に、過去にアコースティックピアノを弾いていた経験がある方や、住宅事情でグランドピアノを置けないけれど本格的に演奏したいと考える方には、25万円以上の予算を推奨する。この価格帯から、上位の木製鍵盤やハイブリッドピアノが選択肢に入り、音源やスピーカーの質も格段に向上する。

ここでは、予算別にグランドピアノに近い感覚で演奏できるおすすめモデルを紹介する。

10万円以下のモデル(ピアノを始めたばかりの初級者向け)

初めてピアノを始める方や、続くかどうかわからないけれど試してみたいという方には、手頃な価格帯でもタッチ感や音質にこだわったモデルがおすすめだ。

  • CASIO Privia PX-S1100:世界最小クラスのスリムボディでありながら、グランドピアノの響きを再現する独自の音源と、繊細なタッチを可能にする「スマートスケーリングハンマーアクション鍵盤」を搭載している。音質にこだわりたい初級者に適したモデルである。
  • Roland FP-10:コンパクトなポータブルピアノながら、鍵域によって異なるハンマーアクションと高精細センサーを採用し、エスケープメントの再現によってグランドピアノのリアルなタッチを実現している。

10~20万円のモデル(テクニック強化を目指す中級者向け)

この価格帯は電子ピアノの平均価格帯であり、より難易度の高い曲に挑戦したい中級者におすすめのモデルが揃っている。

  • KAWAI CA401:カワイの人気モデルであるCAシリーズの木製鍵盤を採用し、グランドピアノと同じシーソー式アクション構造「グランド・フィール・スタンダード・アクション」を搭載。ショパン国際コンクールで使用されるSK-EXの音色を採用し、リアルなタッチと音色を同時に楽しめる。内蔵のレッスン曲も充実している。
  • YAMAHA Clavinova CLP-735:ヤマハ「クラビノーバ」シリーズの中でも音とタッチに重点を置いたモデルだ。グランドタッチ-エス™鍵盤、エスケープメント、そしてヤマハ最高峰のCFXとベーゼンドルファー「インペリアル」の音色を収録している。
  • Roland DP603:スタイリッシュなデザインと、アコースティックピアノの発音プロセスを再現する「スーパーナチュラル・ピアノ・モデリング音源」が特徴だ。木材と樹脂のハイブリッド鍵盤と多様な練習機能を備えている。

20~30万円のモデル(総合的な演奏力の向上を目指す上級者向け)

演奏会やコンクールで高難度の曲に挑戦する上級者には、演奏性と機能性、そして見た目の美しさも兼ね備えたモデルが選択肢となる。

  • CASIO Privia PX-S7000:楽器店大賞2023受賞の人気モデル。カシオの最先端技術とスタイリッシュなデザインが融合し、「スマートハイブリッドハンマーアクション鍵盤」と「キーオフシミュレーター機能」で本格的なタッチと繊細なニュアンス調整を可能にしている。
  • Roland LX705:ハイスタンダードモデルとして、4つのスピーカーによる「アコースティック・プロジェクション」で迫力あるサウンドを実現。木材と樹脂のハイブリッド鍵盤も高く評価されている。

30万円以上のモデル(本格的なタッチを求める方におすすめ)

この価格帯は、中古のアップライトピアノが購入できるほどの高額となるが、消音機能や省スペースといった電子ピアノならではのメリットを重視する本格派向けだ。

  • CASIO CELVIANO GP-510BP:カシオ最高峰のデジタルピアノであり、世界三大ピアノメーカー「C.ベヒシュタイン」と共同開発した「ベルリン・グランド」音色を収録。グランドピアノの繊細なタッチを体感できる木製鍵盤と独自のアクション構造を持つ。筆者個人の試奏では、最もアコースティックピアノに近いタッチと音質を実感できたという感想が示されている。
  • KAWAI CA901:カワイCAシリーズの最高峰モデルで、88鍵すべて木製鍵盤の「グランド・フィール・アクションⅢ」を搭載。国際コンクールで公式採用されるフルコンサートグランドピアノ「SK-EX」の音色と響きを再現するために開発された「SK-EXレンダリング音源」を備え、まるでコンサートホールで演奏しているかのような臨場感を味わえる。響板スピーカーを搭載し、音に包まれる感覚はグランドピアノそのものだ。
  • YAMAHA Clavinova CLP-775:グランドピアノのタッチを再現する「グランドタッチ™鍵盤」に加え、高・中・低の3Wayスピーカーとアコースティックピアノの振動を再現する「トランスデューサー」を搭載。ヤマハCFXとベーゼンドルファー「インペリアル」の音源、さらに「グランドアコースティックイメージング」によるリアルな響きが特徴である。

これらのモデルは、技術の進化により、高レベルのピアニストも満足できる演奏体験を提供している。自分に最適な一台を見つけるためには、最終的には実際に楽器店で試奏し、自身の感覚で決定することが重要だ。

電子ピアノ グランドピアノに近い選び方のまとめ

電子ピアノ選びでグランドピアノに近い性能を求めるならば、鍵盤タッチ、音、そして表現力の三つの要素が特に大切になる。これらの要素を具体的に評価するために、鍵盤の構造、音源の種類、スピーカーの数の三つのチェックポイントを押さえることが重要だ。

  • 鍵盤構造は樹脂、木製、ハイブリッド鍵盤がありハイブリッドと木製鍵盤が本物に近い
  • 上位の木製鍵盤は支点までの距離が長くグランドピアノに近い自然なタッチがある
  • 連打性やトリルなど速いパッセージでは鍵盤の戻りの速さと安定性が重要となる
  • ペダル操作は「踏む」「踏まない」だけでなくハーフペダルなど繊細な操作が求められる
  • 電子ピアノのペダルはグランドピアノと同じ役割を持つように設計されていることが多い
  • サンプリング音源は実際のピアノ音を録音し忠実な再現を目指す方式である
  • モデリング音源はタッチに応じ音をリアルタイムで生成し変化に富んだ表現ができる
  • スピーカーの数が多いほど音が立体的になりグランドピアノの音色に近づく
  • スピーカー配置は音の広がりと表現力に影響し奏者を包み込むような響きを生む
  • メーカーごとの音色はタッチにより豊かに変化し演奏表現力を養う上で欠かせない
  • 予算を25万円以上とすることで上位木製鍵盤やハイブリッドピアノが選択肢に入る
  • 据え置きタイプか卓上タイプかは演奏姿勢やフォームを保つ上で重要な選択肢となる
  • 鍵盤数はアコースティックピアノと同じ88鍵盤を選ぶことで演奏の幅が広がる
  • 音質を追求するなら同時発音数256音以上のモデルを選ぶのが望ましい
  • サイレント機能やBluetooth連携など便利機能やヘッドホン端子の有無も確認が必要だ
ピア僧

1976年、北海道生まれ。

電子ピアノ選びに迷っていませんか?

Digital Paino Navi運営者のピア憎です。私自身、数々の電子ピアノを弾き比べ、その魅力を追求してきました。この経験と知識を活かし、あなたの最適な一台を見つけるお手伝いをします。

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