こんにちは!Digital Piano Navi運営者のピア憎です。
KORG D1が気になって検索してきたあなたは、「鍵盤タッチが最高」という評判を聞きつけつつも、「実際どうなの?」と迷っているんじゃないでしょうか。
KORG D1は、そのストイックな設計思想ゆえに、レビューや評価が極端に分かれやすいモデルなんですよ。特に「スピーカーなし」という最大のデメリットをどう捉えるかで、購入後に「後悔」するか「最高の相棒」になるかが決まります。
「DTMで使うマスターキーボードとしてMIDI接続はどう?」「16kgっていう重さは実際持ち運べるの?」といった具体的な疑問から、RolandのFP-30XやYamahaのP-225といったライバル機との比較、さらには中古での賢い探し方まで、気になるポイントがたくさんありますよね。
この記事では、KORG D1の良いも悪いも全部ひっくるめて、私が徹底的にレビューします。この記事を読めば、D1があなたの音楽ライフに本当に必要なのか、その答えがきっと見つかりますよ。
- スピーカーレス設計の明確なメリットとデメリット
- 最上位RH3鍵盤のリアルなタッチと評価
- DTMやライブでの具体的な活用シーン
- FP-30XやP-225など主要ライバル機との徹底比較
KORG D1の核心:鍵盤特化の魅力

まず、KORG D1が「なぜこれほどまでに弾き手に選ばれるのか」という核心部分を見ていきましょう。すべては「鍵盤」への異常なこだわりに集約されています。その代償として何を捨てたのか、その潔さがD1の魅力であり、同時に最大の注意点でもあるんですよ。
スピーカーなしという選択の理由
KORG D1の最大の特徴。それは、「内蔵スピーカーを搭載していない」ことです。これ、普通の電子ピアノに慣れていると「え?音が出ないの?」ってびっくりしますよね。でも、この「スピーカーなし」という大胆な割り切りこそが、D1の存在価値そのものなんです。
なぜ、あえてスピーカーを省略したのか。答えはシンプルで、「鍵盤のタッチ」という一点に開発リソースとコストを全振りするためです。
電子ピアノの価格は、主に「鍵盤機構」「音源」「スピーカー(アンプ)」の3要素で決まります。D1が目指したのは、発売当時5万円台という価格帯で、コルグの最上位デジタルピアノ(C1 Airなど)や、何十万円もするプロ向けワークステーション(KRONOS)に採用されている日本製の「RH3(リアル・ウェイテッド・ハンマー・アクション3)鍵盤」を搭載することでした。
この「最上級の鍵盤」と「手頃な価格」という、本来なら両立困難な命題をクリアするための答えが、「スピーカーの省略」だったわけです。
この選択は、2つの大きなメリットを生み出しました。
メリット1:圧倒的なコストパフォーマンス
まず、当然ながらスピーカーとアンプ部のコストが丸ごと浮きます。その分をRH3鍵盤に回せたことで、「この価格帯でこの鍵盤が手に入る」という、とんでもないコストパフォーマンスが実現しました。とにかく弾き心地を最優先したいピアニストにとって、これは何物にも代えがたい魅力ですよね。
メリット2:驚異的なスリムボディ
スピーカーを内蔵するということは、そのための容積(スペース)が筐体内に必要になります。スピーカーを省略したことで、D1は奥行きわずか26.3cmという、本格ハンマーアクション鍵盤搭載機とは思えないほどのスリムさを手に入れました。
一般的な電子ピアノは、スピーカーを内蔵するために奥行きが30cmを超えるものがほとんど。この数センチの違いが、設置の自由度を劇的に変えるんです。
スリムボディの恩恵
- DTM用のデスク(奥行き60cm程度)の上に、PCキーボードと並べて置ける。
- 狭い部屋やワンルームでも圧迫感なく設置できる。
- ライブハウスやスタジオへの持ち込み時、セッティングの自由度が上がる。
ただし、もちろん「スピーカーなし」は強烈なデメリットにもなります。ここを理解しないと絶対に後悔しますよ。
【最重要】D1は単体では絶対に音が出ません
KORG D1から音を聴くためには、必ず以下のどちらかが「別途」必要になります。
- ヘッドホン(自宅でのサイレント練習用)
- アンプ内蔵スピーカー(パワードスピーカー)(音を出して弾きたい場合)
「ピアノが届けばすぐに音が出せる」と思っていると、「音が出ない…不良品?」とパニックになるかもしれません。スピーカー非搭載は「機能省略」ではなく、「弾き心地に特化するための設計思想」であると理解することが、D1を選ぶための第一歩です。
このストイックなまでの割り切り。これがKORG D1の正体であり、多くのシリアスなプレイヤーを惹きつけてやまない理由なんですよ。
レビューで見るRH3鍵盤の評判

さて、D1がすべてを犠牲にしてまで搭載した「RH3鍵盤」。これが一体どれほどのものなのか、気になりますよね。先に結論を言うと、「この価格帯では最強」というレビューや評価は、決して大げさではありません。
RH3(リアル・ウェイテッド・ハンマー・アクション3)鍵盤は、コルグが誇る最上位の鍵盤アクションで、安心の日本製です。この鍵盤の最大の特徴は、グランドピアノのタッチを忠実に再現している点にあります。
多くのレビューで絶賛されているポイントは、主に以下の3点です。
- 低音部と高音部のリアルな重量差グランドピアノは、弦の太さやハンマーの大きさの違いから、低音部は重く、高音部にいくにつれて軽く(=鍵盤がスッと落ちるように)なっています。RH3鍵盤は、この鍵盤の重さの違いを4段階に分けて緻密に再現しています。これにより、ただ「重い」だけの鍵盤とは違う、非常にリアルな弾き心地と表現力が生まれます。
- 安定した打鍵感と戻りの速さ連打やトリルなど、速いパッセージを弾いた時の鍵盤の応答性が非常に高いのも特徴です。押した鍵盤がスッと戻ってくる感覚は、まさにフラッグシップモデル譲り。安価な鍵盤にありがちな「鍵盤が指についてこない」ようなストレスがありません。
- 重厚感のある「ピアノらしい」タッチRH3は、他社の同価格帯の鍵盤(例えばRolandのPHA-4やYamahaのGHC)と比較して、全体的にやや重めで、しっとりとした重厚感のあるタッチが特徴です。これが「アコースティックピアノの練習用として最適」と評価される理由ですね。
このRH3鍵盤は、前述の通りコルグの最上位ワークステーション「KRONOS 88」にも採用実績がある(※)ほど、プロの現場で信頼されている鍵盤です。(※採用モデルの詳細はKORG公式サイトの製品ページなどでご確認ください)
「5〜7万円クラスのピアノで、あのKRONOSと(ほぼ)同じ鍵盤が手に入る」と考えれば、そのコストパフォーマンスの異常さがわかるかなと思います。
タッチ・コントロールで好みの重さに調整可能
D1には、鍵盤のタッチの感度(弾く強さに対して音がどう反応するか)を調整する「タッチ・コントロール」機能が5段階で搭載されています。
- Light(軽め): 弱いタッチでも大きな音が出る設定。
- Normal(標準): 最もピアノらしい標準設定。
- Heavy(重め): 強く弾かないと大きな音が出ない設定。
- Stable(安定): 弾く強さによる音量変化が少ない設定。
- Fixed(固定): 常に一定の音量が出る設定(オルガンなどに)。
物理的な鍵盤の重さが変わるわけではありませんが、「Heavy」に設定すれば、よりダイナミックな表現の練習になりますし、「Light」にすれば指が疲れにくくなります。このあたりも、シリアスな練習者のニーズをよくわかっているなと感じますね。
もちろん、鍵盤の好みは人それぞれです。「RH3は重すぎる」と感じる人もいるかもしれません。ですが、「アコースティックピアノでの演奏」を最終的な目標に置いている人にとって、この重厚なRH3鍵盤がもたらす練習効果は、他のどの機種にも代えがたい大きなメリットになると、私は断言しますよ。
DTMとMIDI接続での使用感

KORG D1は、その設計思想から「DTM(デスクトップミュージック=PCでの音楽制作)」用のマスターキーボードとして、非常に高い人気を誇っています。ここ、すごく重要なポイントですよ。
なぜD1がDTMに最適なのか? それは「スピーカーがないから」という消極的な理由だけではありません。むしろ、「プロ仕様の接続端子」を備えている点が大きいんです。
その核心となるのが、伝統的な「5ピン MIDI IN/OUT端子」を搭載していることです。
「え? 今どきUSBじゃないの?」と思うかもしれません。確かに、最近の電子ピアノ(例えばFP-30XやP-225)は、PCとUSBケーブル1本で接続できる「USB MIDI」が主流です。しかし、D1はあえてUSB端子(Type B)を搭載せず、昔ながらの5ピンMIDI端子を選びました。
これが、DTMをある程度本格的にやっている層から絶大な支持を受けている理由なんです。
なぜ今、5ピンMIDI端子なのか?
- 接続の安定性:DTM環境では、多くの機材を「オーディオインターフェース」という機材で一括管理します。5ピンMIDI端子を使えば、D1をオーディオインターフェースのMIDI INに接続でき、PCとはオーディオインターフェース経由で安定したMIDI信号のやり取りが可能です。USB接続は手軽ですが、PCの環境によっては遅延(レイテンシー)が発生したり、他のUSB機器と干渉したりする可能性がゼロではありません。
- ハードウェア音源との連携:PCを介さず、外部のハードウェア音源モジュール(昔のシンセサイザーなど)と直接MIDIケーブルで接続して鳴らしたい場合、5ピンMIDI OUT端子は必須です。
- プロの現場での信頼性:ステージやスタジオなど、絶対にトラブルが許されない環境では、シンプルで堅牢な5ピンMIDI接続が今でも標準的に使われています。
もちろん、RH3鍵盤がもたらす「ベロシティ(打鍵の強弱)表現の正確さ」もDTMに最適な理由の一つです。安いキーボードだと、いくら強く弾いても弱く弾いてもMIDI情報が「ベタ打ち」のようになってしまいがちですが、D1ならピアニストの繊細なニュアンスをそのままDAW(音楽ソフト)に記録できます。これは、打ち込みのクオリティを格段に上げてくれますよ。
DTMでの活用法については、もっと詳しく知りたい方もいるかもしれませんね。D1とPCの具体的な接続方法や設定については、以前まとめた記事がありますので、そちらも参考にしてみてください。
→ 関連記事:KORG D1とPC接続(DTM)の具体的な方法と魅力
手軽なUSB接続はできません!
繰り返しになりますが、KORG D1にはPCと直接つなぐためのUSB端子(Type B to Host)がありません。
もし、あなたのPC環境にオーディオインターフェース(MIDI IN/OUT付)がない場合、D1とPCを接続するためには、別途「USB-MIDIコンバーター(変換ケーブル)」という機材が必要になります。この点は、手軽にDTMを始めたい人にとっては明確なデメリットとなるので、必ず覚えておいてくださいね。
KORG D1は、「USBケーブル1本で手軽に」という現代のトレンドとは逆行し、「接続の安定性と拡張性」というプロの要求に応えたモデルなんです。この玄人好みな仕様が、D1を「ただの電子ピアノ」ではなく、「DTMに最適なマスターキーボード」たらしめているんですよ。
購入前に知るべきデメリット

ここまでD1の魅力を熱く語ってきましたが、もちろん良いことばかりではありません。むしろ、D1のメリットは、そのまま強烈なデメリットと表裏一体です。ここをしっかり理解しておかないと、「こんなはずじゃなかった…」と後悔することになりますよ。
私が考えるD1の主なデメリットは、以下の3点です。
【最重要】スピーカー非搭載という割り切り
もう何度も言っていますが、これが最大のデメリットです。D1単体では音が出ません。
ピアノが届いても、ヘッドホンか外部スピーカーがなければ、D1は「世界一高価な(そして重い)置物」です。家族や友人に「ちょっと弾いてみてよ」と言われても、「ごめん、スピーカー繋がないと音出ないんだ」となってしまいます。この「手軽に音が出せない」というストレスは、想像以上に大きいですよ。
自宅練習は必ずヘッドホンでする人、あるいはすでに高音質なモニタースピーカーを持っているDTMユーザー以外は、ピアノ本体とは別に「スピーカー代」も予算に組み込んでおく必要があります。
現代の「便利機能」がことごとく非搭載
KORG D1は2018年発売のモデルです。そのため、ここ数年で当たり前になった「便利機能」が一切搭載されていません。
D1に「ない」機能リスト
- Bluetooth Audio/MIDI:スマホとワイヤレス接続して、好きな曲をピアノのスピーカーから流したり、アプリと連携したりする機能は一切ありません。
- USB端子 (to Host):前述の通り、PCとUSBケーブル1本でつなぐ機能はありません。MIDI接続にはインターフェースか変換ケーブルが必須です。
- USBオーディオインターフェース機能:Yamaha P-225などが搭載する、PCとUSB接続するだけで高音質なオーディオ録音とMIDI送受信が同時にできる機能も、もちろんありません。
これらの機能は、Roland FP-30XやKawai ES120といったライバル機には標準搭載されています。「ピアノ練習アプリを使いたい」「手軽にPCとつなぎたい」と考えているライトユーザーにとって、D1は絶望的に不便なピアノだと言えます。
付属品がかなりチープ(特にペダル)
D1には譜面台とダンパー・ペダルが同梱されていますが、これらがかなり簡易的なものです。
- 譜面台:本体背面の穴に差し込むだけの、薄いプラスチック板です。角度調整などは一切できません。まぁ、譜面が置ければ良いという割り切りですね。
- ダンパー・ペダル(DS-1Hではない):これが一番の問題かもしれません。付属するのは、オン/オフしか感知しない「スイッチタイプ」の簡易ペダルです。グランドピアノのような「ペダルの踏み込み具合で響きが変わる」ハーフペダル機能に一切対応していません。
クラシックや本格的なポップスを弾く上で、ハーフペダルは必須のテクニックです。付属のペダルではその練習が全くできないため、シリアスな練習をしたい人は、別売のハーフペダル対応ペダル(例:KORG DS-1H)を別途購入することがほぼ前提となります。これも追加予算として考えておくべきですね。
KORG D1は、「弾く」こと以外に関わるほぼ全ての利便性を切り捨てています。この不便さを許容できるかどうかが、D1を選ぶ上で最も重要な分かれ道になりますよ。
16kgの重さと持ち運びの現実

KORG D1の魅力の一つに、「奥行き26.3cmのスリムな筐体」があると紹介しました。このスリムな見た目から、「これならスタジオやライブに気軽に持ち運べるかも?」と期待する人も多いんじゃないでしょうか。
ここで現実をお伝えしなければなりません。D1は、本体重量16kgあります。この「16kg」という数字、あなたが想像しているよりも、かなり重いです。
インプットされたレビュー情報(※出典:各種ECサイトやブログレビュー)によれば、「けっこう重たい」「不用意に持ち上げると腰抜けそうになります」「相当筋力のある男性でないと持ち歩きは厳しそう」といった声が多数見られます。
スリムな筐体は、本格的なRH3鍵盤という「重い」機構を、ギリギリまで切り詰めた結果です。決して「軽量化」を優先したわけではないんですね。
「スリム = 軽量」ではありません!
D1の16kgという重量は、「持ち運べない重さ」ではありません。ですが、「駅の階段を担いで上り下りする」ような頻繁な持ち運びには、はっきり言って向いていません。車での移動が前提か、体力にかなり自信がある人向け、と考えた方が無難です。
ライバル機との重量比較
D1の16kgがどれくらい重いのか、スピーカーを内蔵している主要なライバル機と比較してみましょう。
| 機種名 | 重量 | スピーカー | 鍵盤機構 |
| KORG D1 | 16.0 kg | なし | RH3 |
| Roland FP-30X | 14.8 kg | あり | PHA-4 |
| Kawai ES120 | 12.5 kg | あり | RHC |
| Yamaha P-225 | 11.5 kg | あり | GHC |
| KORG B2 | 11.4 kg | あり | NH |
(※各重量は本体のみのおおよその数値です。正確な仕様は各メーカーサイトをご確認ください)
この表を見ると衝撃的じゃないですか? D1は、スピーカーを内蔵している主要ライバル機の「すべて」よりも重いんです。特にYamaha P-225やKORG B2と比較すると、4kg以上の差があります。4kgといえば、2Lのペットボトル2本分以上ですから、その差は歴然です。
D1は、スリムな見た目に反して「重い」というギャップが激しいモデルです。もしあなたが「持ち運びやすさ」を少しでも重視するなら、D1は選択肢から外した方が賢明かもしれません。
持ち運びを考えるなら、別売で専用のソフトケース(SC-D1)も用意されていますが、ケースに入れれば当然16kg+αとなります。この重さを許容できるか、店頭などで実際に持ち上げてみて確認することを強く推奨しますよ。
もし、持ち運びの頻度が高いのであれば、こちらの記事で紹介しているような軽量モデルも併せて検討してみてください。
→ 関連記事:持ち運びやすい88鍵ピアノの選び方とおすすめモデル
D1はあくまで「最上級の鍵盤を搭載した、設置しやすいスリムなピアノ」であり、「軽量なポータブルピアノ」ではない、ということを肝に銘じておきましょう。
KORG D1の導入:比較と購入ガイド

D1の強烈な個性がわかったところで、次は「じゃあ、他の機種と比べてどうなの?」という現実的な比較に入っていきましょう。特にライバルとされる人気機種との違いや、スタンド、中古市場まで、購入に必要な情報をまとめますよ。
競合機FP-30Xとの比較
KORG D1の購入を検討する際、ほぼ間違いなく比較対象になるのが、Rolandの超人気モデル「FP-30X」です。この2機種は、同じ価格帯でありながら、性格が「真逆」と言っていいほど異なります。
一言でいうと、FP-30Xは、D1が切り捨てた「ほぼ全て」の便利機能を搭載した万能優等生モデルです。
まずは、その違いを比較表で見てみましょう。あまりの違いに驚くかもしれませんよ。
| 比較項目 | KORG D1 | Roland FP-30X |
| 鍵盤 | RH3鍵盤(日本製) | PHA-4 スタンダード鍵盤 |
| スピーカー | なし | あり (11W x 2) |
| Bluetooth | なし | あり (Audio / MIDI) |
| USB (to Host) | なし | あり |
| 5ピン MIDI I/O | あり | なし |
| 同時発音数 | 120音 | 256音 |
| 音色数 | 30音色 | 56音色 |
| ヘッドホン端子 | 1系統 (Mini) | 2系統 (Mini / 標準) |
| 重量 | 16 kg | 14.8 kg |
(※仕様は変更される場合があります。正確な情報は公式サイトをご確認ください)
見ての通り、機能面ではFP-30Xの圧勝です。
FP-30Xは、パワフルな内蔵スピーカー、スマホと連携できるBluetooth(オーディオ再生もMIDI送受信もOK)、USB端子、256音という余裕の同時発音数、2系統のヘッドホン端子と、D1が持っていない便利機能をすべて網羅しています。しかも、これだけ詰め込んで、重量はD1より軽い(14.8kg)んです。
「じゃあ、D1を選ぶ理由って何?」となりますよね。D1がFP-30Xに対して明確に勝っている(というか、D1にしかない)点は、たった2つです。
D1がFP-30Xに勝る、たった2つのポイント
- 5ピンMIDI IN/OUT端子の搭載DTMやライブで、オーディオインターフェースや外部音源と安定接続したいプロ・ハイアマチュア層にとって、これはUSB MIDIには代えられない絶対的なメリットです。
- RH3鍵盤のフィーリング(好み)これが最大の分岐点です。FP-30Xの「PHA-4鍵盤」も非常に評価の高い鍵盤ですが、RH3と比べるとやや軽快で、カチッ(コツコツ)とした感触があります。対してD1の「RH3鍵盤」は、より重厚でしっとりとした、グランドピアノに近い重みを感じられます。「PHA-4のコツコツ感が苦手」「RH3の重厚な沈み込みが好き」という人にとっては、他のすべての機能を犠牲にしてでもD1を選ぶ価値があります。
結論として、この2機種の選び方は非常に明確です。
- FP-30Xがおすすめな人:「1台で完結させたい」「Bluetoothで手軽に楽しみたい」「アプリ連携したい」「USBでPCに繋ぎたい」…つまり、一般的な家庭ユーザーやライトなDTMユーザーのほぼ全員。
- D1がおすすめな人:「FP-30Xの便利機能は一切不要」「RH3鍵盤のタッチが何よりも最優先」「5ピンMIDI端子が必須」…つまり、弾き心地に異常なこだわりを持つピアニストか、特定のDTM/ライブ環境を持つ人。
これほどキャラクターが違うと、むしろ迷わないかもしれませんね。あなたが「便利さ」と「鍵盤の好み」のどちらを優先するか、で決まりますよ。
P-225やB2との比較
D1のライバルはFP-30Xだけではありません。Yamahaの「P-225」や、同じKORGの「B2」も強力な比較対象です。この2機種との違いも見ていきましょう。
vs Yamaha P-225:手軽なDTMの優等生
P-225は、大ベストセラー機P-125の後継モデルで、D1の発売(2018年)より後(2023年頃)に登場した、新設計の強力なライバルです。
P-225の最大の武器は、「USBオーディオインターフェース機能」を内蔵している点です。これは、PCとUSBケーブル1本で接続するだけで、「高音質なオーディオ録音」と「MIDI送受信」が同時に完結する機能です。これはDTM環境において、別途オーディオインターフェースやMIDIインターフェースが必要なD1に対し、利便性で格段に勝ります。
さらに、重量も11.5kgと非常に軽量で、スピーカーも内蔵しています。
では、D1の優位点はどこにあるのか? それはやはり「鍵盤の格」です。
- KORG D1: RH3鍵盤(最上位アクション)
- Yamaha P-225: GHC鍵盤(ポータブル機用に新開発された鍵盤)
P-225のGHC鍵盤もよくできていますが、あくまでポータブル機向けのコンパクトな設計です。対するD1のRH3鍵盤は、コルグの最上位据え置き機にも使われる本格的なアクション。鍵盤の「弾きごたえ」「重厚感」「表現力」という点では、RH3に軍配が上がると感じる人が多いでしょう。
P-225 vs D1 の選び方
- P-225がおすすめ:「軽さ」「スピーカー内蔵」「USB1本で手軽にDTM」を重視する人。
- D1がおすすめ:「利便性より鍵盤の本格的なタッチ(RH3)」「5ピンMIDIの安定性」を重視する人。
P-225は「多機能で堅実な優等生」、D1は「鍵盤に特化した玄人好み」と、キャラクターが明確に異なりますね。
vs KORG B2:鍵盤の「格」が違う弟分
これはKORG社内のラインナップ比較です。B2はD1より下位に位置づけられる、スピーカー内蔵のエントリーモデルです。
B2の優位点は明確です。D1より安価な価格帯、15W x 2の強力な内蔵スピーカー、USB端子(Audio/MIDIサポート)、そして約11.4kgという軽さ。まさに「D1にないもの」を全部持っています。
一方、D1の優位点は、唯一にして最大。それは「鍵盤」です。
- KORG D1: RH3(リアル・ウェイテッド・ハンマー・アクション3)鍵盤
- KORG B2: NH(ナチュラル・ウェイテッド・ハンマー・アクション)鍵盤
この2つの鍵盤は、天と地ほどの差があると言っても過言ではありません。B2のNH鍵盤は、価格を考えればよくできたエントリー向けの鍵盤ですが、RH3の重厚感、追従性、表現力と比べてしまうと、どうしても「軽い」「チープ」と感じてしまいます。
KORGは、ユーザーに非常に明確な選択肢を提示しているんです。
KORGが出した明確な答え
- 「スピーカー内蔵・多機能・軽量・安価」が欲しいなら → B2を選んでください。ただし鍵盤(NH)はエントリー向けです。
- 「鍵盤のタッチ(RH3)を最優先」するなら → D1を選んでください。ただしスピーカーも便利機能も全部諦めてください。
もしあなたが「KORGのピアノが欲しいけど、B2とD1で迷っている」なら、考えるべきは一つだけ。「RH3鍵盤のタッチに、B2との価格差と不便さを受け入れるだけの価値を見出せるか」です。ぜひ楽器店で弾き比べて、この決定的な鍵盤の違いを体感してみてください。
付属品ペダルと推奨スタンド

KORG D1を購入する際、本体以外にも「ほぼ必須」となるアクセサリーがいくつかあります。特にペダルとスタンドは、練習の質や設置環境に直結するので、しっかり選びたいところです。
【最重要】ペダル問題:ハーフペダル対応が必須
デメリットの項でも触れましたが、D1に付属するペダルは、オン/オフしかできない「スイッチ」です。これでは、アコースティックピアノの練習にはなりません。
ピアノの表現において、ペダルを半分だけ踏んで響きをコントロールする「ハーフペダル」は必須技術です。これを練習するためには、必ず別売のハーフペダル対応ペダルが必要になります。
付属ペダルは「おまけ」と考えよう
KORG D1で本格的な練習をするなら、別売のハーフペダル対応ペダル(KORG DS-1Hなど)の購入は必須と考え、最初から予算に組み込んでください。このペダルがあるのとないのとでは、練習の質がまったく変わってしまいますよ。
DS-1Hは金属製で重量感があり、踏み心地もピアノに近くなるので、満足度も格段に上がります。付属のペダルは、軽すぎて演奏中に動いてしまうストレスもあるので、早めの買い替えがおすすめです。
スタンド選びの3つの選択肢
D1は本体のみで、スタンドは付属しません。どう設置するかは、あなたの環境次第です。
ここで一つ注意点。D1の本体裏側には、滑り止めのゴム足が数カ所ついています。このゴム足の位置関係で、幅の狭いテーブルや小型の台の上に置こうとすると、足がはみ出して安定しないケースが報告されています。
床に直接置く(いわゆる「床置き」)のは、姿勢が悪くなるので絶対にNGです。以下の3つの選択肢から、あなたの環境に合うものを選びましょう。
- 専用スタンド (ST-SV1)メーカー純正のオプションです。見た目が非常にスタイリッシュで、D1に完璧にフィットします。デザイン性を重視するならこれ一択ですが、価格がやや高めなのがネックです。
- 汎用X型スタンド最も一般的で安価なスタンドです。「キーボードスタンド」として売られているもので、折りたたんで持ち運べるのがメリット。ただし、構造上、演奏中に多少の揺れが出やすいのと、足元が狭くなるのがデメリットです。
- 汎用テーブル型スタンド(DTMデスク)私がDTMユーザーに最も推奨するのがこれです。4本足のテーブル型(またはDTMデスクのキーボードスライダー)に設置する方法。安定性が抜群で、足元にペダルを置くスペースも広々とれます。D1のスリムな奥行き(26.3cm)は、デスク上への設置に最適なんですよ。
ピア憎のおすすめ
- リビングなどでおしゃれに置きたい人: 専用スタンド (ST-SV1)
- ライブなどで持ち運ぶ人: 汎用X型スタンド(安定性より携帯性)
- DTMや自宅での安定した練習を求める人: 汎用テーブル型スタンド or DTMデスク
あなたの演奏スタイルに合わせて、最適な設置方法を選んでくださいね。
中古価格の相場と選び方

「KORG D1が欲しいけど、新品はちょっと高い…」そう考えるなら、中古市場を覗いてみるのも一つの手です。D1は2018年発売のロングセラーモデルなので、中古市場でも比較的多く流通しています。
まず、新品の価格ですが、2024年現在も現行モデルとして販売されており、実勢価格はだいたい74,000円台(税込)あたりが中心のようです。
対して、中古市場(ヤフーオークションやメルカリなど)での取引価格は、かなり幅があります。インプットされた情報(※出典:過去のオークション落札履歴)によれば、付属品や状態によって、安いもので25,000円前後、美品やスタンド付きで50,000円程度で取引されている例も見られます。
この価格差は、主に以下の要因によるものです。
- 付属品の有無: 専用スタンド(ST-SV1)や専用ケース(SC-D1)、ハーフペダル(DS-1H)がセットになっていると、価格は高くなります。
- 製造年と状態: ロングセラーゆえに、初期(2018年頃)のものと、最近(2022年頃)のものでは状態が異なります。当然、新しくてキレイな方が高価です。
- 送料: 16kgもある「重くて大きい」楽器なので、送料がかなりかかります(出品者負担か落札者負担かで総額が大きく変わります)。
中古購入時のチェックポイント(特にフリマアプリ)
中古の電子ピアノ、特にD1のようにスピーカーがないモデルは、購入時に注意が必要です。故障の切り分けが難しいためです。
- ヘッドホン端子の状態:D1の音出しはヘッドホンが基本です。端子にガリ(ノイズ)や接触不良がないか、出品者に必ず確認しましょう。
- LINE OUT端子の状態:ライブやスタジオで使う予定があるなら、L/R両方のLINE OUT端子から正常に出力できるかの確認も必須です。
- 全鍵盤の音出しと戻り:RH3鍵盤は頑丈ですが、酷使されていればヘタりや異音が出る可能性もあります。「全ての鍵盤で音が出るか」「鍵盤の戻りが悪くないか」は最低限確認しましょう。
- 付属品の確認:「ACアダプター」「譜面台」「付属ペダル」が揃っているか。特にACアダプターがないと動作確認すらできません。
中古楽器の購入、特に個人間取引(フリマアプリなど)は、常に自己責任となります。価格相場はあくまで目安と考え、商品の状態や付属品、送料をよく確認し、総額で判断することが重要です。不安な場合は、保証が付く楽器店の中古品を選ぶ方が賢明かもしれませんね。
KORG D1が最適なユーザーは?

さて、ここまでKORG D1のすべてを徹底的に解説してきました。もうお分かりかと思いますが、D1は「万人におすすめできる万能ピアノ」ではありません。
2018年の発売から時間が経過し、競合製品はスピーカーやBluetoothを標準搭載してきました。その結果、D1は「特定のニーズを持つユーザーにとって、今なお最高の選択肢」へと、そのポジションをより先鋭化させています。
最後に、KORG D1が「最高の相棒」になる人と、「後悔する」人を明確にまとめておきましょう。
KORG D1を強く推奨するユーザー像
- 鍵盤の質を最優先する人:「スピーカーも機能もいらないから、とにかく一番いい鍵盤(RH3)を安く手に入れたい」という、弾き心地に最もこだわるピアニスト。
- DTM環境が整備されている人:すでにモニタースピーカーとオーディオインターフェース(MIDI IN/OUT付)を持っており、ベロシティ表現に優れたマスターキーボードとしてD1のRH3鍵盤と5ピンMIDI端子を活用したい制作者。
- ライブ環境での使用がメインの人:内蔵スピーカーは一切不要で、PAミキサーに直接高音質で出力できる標準LINE OUT端子と、外部音源も制御できるMIDI OUT端子を必要とするステージプレイヤー。
KORG D1の購入を再検討すべきユーザー像
- 内蔵スピーカーが必須の人:「ピアノ本体から音が出る」ことを望む、ほぼすべての初心者および一般的な家庭ユーザー。D1では音が出ません。
- 手軽な接続性を求める人:スマートフォンとBluetoothで接続して練習したり、USBケーブル1本で手軽にPCと接続したいライトユーザー。D1は絶望的に不便です。
- 頻繁に持ち運びたい人:16kgという重量が負担になると感じる人。もっと軽量なモデル(P-225やES120など)を選ぶべきです。
KORG D1は、「弾き心地」というピアノの本質的な価値を追求するため、あえて現代の利便性(スピーカー、Bluetooth、USB)をすべて切り捨てた、ストイックな製品です。
その明確すぎるトレードオフをあなたが正確に理解し、自身の使用目的と「これだ!」と合致するならば、発売から数年が経過した現在でも、D1は依然として比類のないコストパフォーマンスを提供してくれます。
便利さよりも「本物のタッチ」を求めるあなたにとって、このKORG D1は、きっと最高の相棒になってくれますよ。


