こんにちは!電子ピアノの沼にどっぷり浸かっている、当サイト「Digital Piano Navi」運営者の「ピア憎」です。
今回は、2020年の発売から数年が経過した今もなお、ピアノを愛する多くの人々から熱い支持を集める伝説的な名機、「カワイCA79」について、徹底的に、そして愛情を込めて掘り下げていこうと思います。ご存知の通り、後継機であるCA701が登場したことで、CA79は主に中古市場でその姿を見かけるようになりました。だからこそ、「今、このタイミングであえてCA79を選ぶ価値って本当にあるの?」と、多くの方が疑問に思っているのではないでしょうか。
最新モデルとの具体的な違いはどこにあるのか、実際に所有しているユーザーからの評判やリアルな口コミはどうなのか。そして、中古で購入する際に最も気になる価格の相場や、失敗しないためのチェックポイント、さらには時々耳にする鍵盤のクリック音といったトラブルは本当に大丈夫なのか…。そんな、あなたが抱えるであろう一つひとつの疑問や不安を、この記事でスッキリと解消していくことをお約束します。
これから電子ピアノの購入を真剣に検討している方、特に「タッチ感だけは絶対に妥協したくない」という強いこだわりを持つあなたにとって、カワイCA79が、いかに賢明で、そして満足度の高い選択肢となり得るか、きっと深くご理解いただけるかなと思います。それでは、一緒にCA79の魅力の深淵を覗いていきましょう。
- カワイCA79が持つ、スペック表だけでは語れない本質的な魅力と実力
- 後継機CA701や下位モデルCA59/49との、価格差以上の明確な違い
- 中古でCA79を購入する際に失敗しないための、具体的な価格相場とチェックポイント
- なぜ今なおカワイCA79が「最高の選択肢の一つ」と自信を持って言えるのか、その理由
今こそ知りたいカワイCA79の真価
まず最初に、カワイCA79が単なる「型落ちモデル」ではなく、なぜ今もって「名機」として語り継がれるのか、その核心に迫っていきたいと思います。このピアノの心臓部である鍵盤機構や音源技術、そして実際に弾いている人たちの生の声を通じて、このモデルだけが持つ本質的な価値を解き明かしていきましょう。
実際の評判とリアルな口コミ
カワイCA79の評価をリサーチすると、やはり最も多く、そして熱く語られているのが「鍵盤のタッチ感が別格」という声ですね。これは特に、長年アコースティックピアノ、特にグランドピアノに親しんできた経験者ほど強く感じているようです。「デジピュア(デジタルピアノ)特有の違和感がほとんどない」「これならクラシックの難しいパッセージもストレスなく練習できる」といった、非常にポジティブな口コミがSNSやレビューサイトで溢れています。
また、音に関しても「スピーカーの音が自然で、まるでピアノ本体が鳴っているかのように部屋全体に広がる」という評価が多く、特にオンキヨーとの技術提携によって実現された音響設計は高く評価されているポイントです。デザインの美しさを挙げる声も多く、インテリアとしての満足度も高いモデルと言えるでしょう。
所有者のリアルな声から見る評価
一方で、もちろんネガティブな評判が皆無というわけではありません。特に初期のロットでは「タッチパネルの反応速度が少しもたつくことがある」という指摘が見られました。また、木製鍵盤を採用する電子ピアノの宿命とも言える、特定の鍵盤を弾いた際の「カチカチ」「コトコト」という物理的なクリック音に関する書き込みも散見されます。
ただし、ここで重要なのは、タッチパネルのレスポンスについては、その後のソフトウェア・ファームウェアのアップデートによって大幅に改善されているという事実です。クリック音に関しても、全ての個体で発生するわけではなく、多くは内部のネジの増し締めといったメンテナンスで解消可能なケースがほとんどのようです。この点については、後のトラブルシューティングのセクションで詳しく解説しますね。
これらの評判を総合的に判断すると、カワイCA79は、電子ピアノを「楽器」として捉え、その基本性能、とりわけ演奏感を最重要視するユーザーから絶大な支持を得ているモデルである、と結論づけられるんじゃないでしょうか。
最高のタッチ感、Grand Feel III
カワイCA79の価値を語る上で、この「Grand Feel Action III(GFIII)」鍵盤の存在は絶対に外せません。正直なところ、私がカワイCA79を「名機」だと確信している理由の大部分は、この鍵盤機構がもたらす圧倒的な演奏体験にあると言っても過言ではないです。では、一体何がそんなに凄いのか、その秘密を技術的な側面から紐解いていきましょう。
特徴1: 白鍵も黒鍵も「完全木製」で、グランドピアノに迫る「長さ」
市場にある多くの電子ピアノが、コストと構造上の制約からプラスチックと木材を組み合わせたハイブリッド鍵盤を採用する中、GFIIIは白鍵も黒鍵も、鍵盤の主要部分がすべて木材で作られています。これは、アコースティックピアノが持つ、指先に伝わるしっとりとした触感や自然な振動を再現するために不可欠な要素です。
しかし、GFIIIの真価はそれだけではありません。最も重要なのは、鍵盤の長さ、特に指で押す部分から内部のアクションが動く支点(バランスピン)までの距離が、カワイのグランドピアノに匹敵するほど長く設計されている点です。短い鍵盤だと、鍵盤の奥側を弾こうとするとテコの原理で急に重くなり、繊細なコントロールが非常に難しくなります。GFIIIの長い鍵盤は、鍵盤の手前を弾いても、黒鍵の間の奥まった部分を弾いても、タッチの重さがほとんど変わらないのです。この「どこを弾いても均質でリニアなコントロール性」こそが、ピアニストが求める表現力を最大限に引き出してくれるんですね。
特徴2: バネを一切使わない、ハンマーの自重による自然な鍵盤の戻り
GFIIIのアクションは、鍵盤を押し込むと、その反対側がシーソーのように跳ね上がり、音域ごとに重さが変えられたハンマーを突き上げるという、グランドピアノと全く同じ構造原理に基づいています。そして、指を離した際には、バネの力に頼ることなく、純粋にハンマーの重さだけで鍵盤が自然に元の位置に戻ります。これにより、指に感じる不自然な反発感が一切なく、まるで鍵盤が指に吸い付いてくるかのような、滑らかで高速なトリルや同音連打が可能になります。
さらに、この自然なタッチ感を補助するのが、88鍵すべてに搭載された「カウンターウェイト」です。鍵盤内部に埋め込まれたこの「おもり」が、弱い力で鍵盤を弾くピアニッシモ演奏時のコントロール性を劇的に向上させ、鍵盤が軽くなりすぎるのを防ぎ、確かな手応えを与えてくれます。
特徴3: グランドピアノ特有のクリック感「レットオフ・フィール」の精巧な再現
グランドピアノの鍵盤を、ごくごくゆっくりと静かに押し込んでいくと、鍵盤が完全に下りきる直前で「カックン」という、わずかな手応え(抵抗感)があるのに気づくでしょう。これが「レットオフ」と呼ばれる機構で、グランドピアノのアクションが持つ独特の感覚です。GFIIIには、この繊細なクリック感を再現する「レットオフ・フィール」が搭載されています。これは、ピアニストが指先の感覚で発音の瞬間を正確に捉え、より高度な演奏表現を行うための重要なフィードバックとして機能します。
SK-EXレンダリング音源の響き
どれほど素晴らしい鍵盤を備えていても、そこから生まれるサウンドが貧弱では意味がありません。その点においても、カワイCA79は一切の妥協をしていません。その心臓部には、カワイが世界に誇るフラッグシップ・コンサートグランドピアノ「Shigeru Kawai SK-EX」の音を、かつてないレベルで再現するために専用設計された、革新的な音源システム「SK-EXレンダリング音源」が搭載されています。
「サンプリング」と「モデリング」のハイブリッドが生む究極のリアリティ
従来の多くの電子ピアノが採用してきた「サンプリング音源」は、ピアノの音を録音し、鍵盤が押されたらその音を再生するというシンプルな仕組みでした。これに対し、SK-EXレンダリング音源は、録音技術と演算技術を高度に融合させたハイブリッド方式を採用しています。
- マルチチャンネル・サンプリング: ピアノの音を単にステレオ(左右2ch)で録音するのではなく、演奏者の耳の位置、響板の近く、フレームの近くなど、ピアノの周囲の様々な場所にマイクを設置して個別に録音します。これらの音を演奏状況に応じてインテリジェントに合成することで、単一のスピーカーから音が出ているのではなく、まるで巨大なグランドピアノ全体が目の前で鳴り響いているかのような、驚くほど立体的で奥行きのある音場を創り出します。
- 88鍵共鳴モデリング: こちらはリアルタイムの物理モデリング技術です。ペダルを踏んだ時に全ての弦が共鳴する複雑な響き(ダンパーレゾナンス)、弾いた弦の倍音に他の弦が共振する現象(ストリングレゾナンス)、さらにはダンパーのない高音域の弦や、弦の振動しない部分(アリコート)までもが共鳴する音を、すべてリアルタイムで計算して生成します。
この二つの技術が組み合わさることで、デジタルピアノにありがちだった「音が途中で途切れるような無機質さ」が完全に払拭され、無数の共鳴が複雑に絡み合いながら減衰していく、アコースティックピアノならではの生命感あふれる豊かな響きが生まれるのです。
CA59やCA49との決定的な違い
カワイのCAシリーズはラインナップが豊富ですが、もしあなたが「本格的なピアノ演奏」を視野に入れているのであれば、下位モデルであるCA59やCA49と、このCA79との間には、価格差以上に越えられない壁が存在することを理解しておく必要があります。その違いは、主にピアノの三大要素である「鍵盤」「音源」「スピーカー」に明確に現れています。
違い①:鍵盤アクションのグレード
最も大きな違いは、やはり鍵盤アクションです。CA59やCA49には「Grand Feel Compact(GFC)」という木製鍵盤が搭載されています。これも非常に優れたアクションではありますが、その名の通り「コンパクト」設計。つまり、CA79の「Grand Feel III (GFIII)」に比べて、鍵盤の長さ、特に支点までの距離が短いのです。前述の通り、この長さは演奏性、特に鍵盤の奥側を弾いた際のコントロール性に直接影響します。趣味で楽しむレベルであればGFCでも十分な満足感が得られるかもしれませんが、より高度な楽曲に挑戦したり、グランドピアノでの演奏を想定した練習を行ったりする場合には、GFIIIの持つ均質でリニアなタッチが圧倒的なアドバンテージとなります。
違い②:メイン音源のクオリティ
音源システムにも明確な階層差があります。CA79のみが、カワイの最上位音源である「SK-EXレンダリング音源」を搭載しています。これはサンプリングとモデリングを融合させた特別な音源です。一方、CA59/49に搭載されているのは、高品質なステレオサンプリング音源である「HI-XL」や「PHI」です。これらも素晴らしい音源ですが、共鳴の複雑さや音の立体感、そして演奏者のタッチに対する音色の変化の滑らかさにおいて、SK-EXレンダリング音源が持つリアリティには及びません。
違い③:スピーカーシステムの構成
音の出口であるスピーカーシステムも、モデル選びの重要な判断基準です。CA79がウーファー、トップスピーカー、ツイーターからなる合計6つのスピーカーを搭載しているのに対し、CA59は4スピーカー、CA49は2スピーカー構成です。スピーカーの数が多ければ多いほど、それぞれのユニットが担当する音域が最適化され、より解像度が高く、かつ立体的な音場を再現できます。特にCA79のトップスピーカー+ディフューザーが生み出す「上からの音のシャワー」は、下位モデルでは味わうことのできない、臨場感あふれる演奏体験をもたらしてくれます。
寸法や重さ、設置前の注意点
その素晴らしい性能に心を奪われ、「よし、CA79にしよう!」と決意を固める前に、一つだけ冷静になって確認しなければならない重要なポイントがあります。それは、この電子ピアノを自宅に迎え入れるための物理的な条件、つまり寸法と重さです。特に中古品を個人売買などで手に入れる場合、この点を軽視すると後で大変なことになりかねません。
必ず確認すべき基本スペック
- 外形寸法: 幅145cm × 奥行47cm × 高さ94cm(※譜面台を倒した状態の高さです)
- 重量: 約76.0kg(プレミアムローズウッド調など)、約79.0kg(黒色艶出し塗装)
見ての通り、重さは76kg以上。これは、成人男性が2人がかりで持ち上げるのも非常に困難な重さです。しかも、ただ重いだけでなく、大きくて重心も偏っているため、素人が運ぼうとすると、ピアノ本体はもちろん、家の壁や床、そして何より自分自身の身体を傷つけてしまうリスクが非常に高いです。分解して運ぶことも可能ではありますが、鍵盤アクション部分やスピーカーボックス部分だけでもかなりの重量があり、作業には専門的な知識も必要とします。
設置前にシミュレーションすべきこと
無事に搬入できたとしても、それで終わりではありません。快適なピアノライフを送るために、設置場所についても事前にしっかりシミュレーションしておきましょう。
- 設置スペースの確保: 幅145cm、奥行47cmのスペースに加え、演奏者が座る椅子のスペース(最低でも60cm程度)と、ピアノの周りを人が通れるだけの動線を確保できるか確認しましょう。
- 床の強度と水平: 重量があるため、床がしっかりしている場所に設置するのが理想です。必要であれば補強ボード(インシュレーター)などを敷くと、床への負担を軽減し、振動を抑える効果も期待できます。
- 設置環境: 直射日光が当たる場所や、エアコンの風が直接当たる場所、過度な湿気がある場所は、木材や電子部品の劣化を早める原因になるため避けましょう。
これらの準備を怠らなければ、カワイCA79はきっとあなたの部屋で最高のパートナーになってくれるはずです。
タッチパネルの操作性と機能性
カワイCA79は、その卓越した演奏性能だけでなく、現代のデジタル楽器ならではの優れた操作性と機能性も兼ね備えています。その中心となるのが、鍵盤左側の拍子木部分にスマートに埋め込まれた、5インチのカラー液晶タッチパネルです。これにより、まるでスマートフォンのような直感的でストレスフリーな操作が可能になっています。
直感操作を可能にするユーザーインターフェース
このタッチパネルのおかげで、音色の変更、メトロノームのテンポ設定、内蔵曲の再生、録音・再生といった基本的な操作が、説明書をほとんど読まなくても、画面に表示されるアイコンをタップしたりスワイプしたりするだけで簡単に行えます。特に、CA79の真髄とも言えるピアノの音色を細かくカスタマイズできる「バーチャルテクニシャン」機能では、タッチカーブや弦の共鳴、ハンマーの硬さといった専門的なパラメータを、グラフィカルな画面を見ながら調整できるため、非常に分かりやすいです。
先ほども少し触れましたが、発売当初の一部のレビューでは「タッチパネルの反応が少しもたつく」という意見も見られました。しかし、これはその後のソフトウェア・アップデートによって着実に改善されており、現在では快適な操作感を実現しています。中古で購入を検討する際は、可能であればソフトウェアのバージョンを確認し、もし古ければアップデートすることを念頭に置いておくと良いでしょう。
練習と楽しみを広げる多彩な接続性
CA79は、現代のデジタルライフスタイルに欠かせないBluetooth接続機能を標準で搭載しており、これがピアノの楽しみ方を大きく広げてくれます。
これらの先進的な機能が、伝統的なピアノの演奏感と見事に融合している点も、カワイCA79が多くの人から愛される理由の一つと言えるでしょう。
カワイCA79の中古購入完全ガイド
新品での販売が終了した今、カワイCA79を手に入れるための主戦場は中古市場となります。しかし、中古の電子ピアノ購入は、新品を買うときとはまた違った知識と注意が必要です。ここでは、最も気になる後継機との比較から、失敗しないための個体の見極め方、そして購入後に長く愛用するためのメンテナンス方法まで、あなたが安心してCA79を迎え入れるための完全ガイドをお届けします。
後継機CA701との違いを比較
中古のCA79を検討する上で、誰もが一度は頭をよぎるのが「あと少し予算を足して、後継機のCA701の新品を買った方が良いのでは?」という迷いだと思います。もちろん最新モデルには最新の魅力がありますが、この2機種に関しては、驚くべき事実があります。それは、ピアノの命とも言える鍵盤アクション(Grand Feel III)が、CA79とCA701で全く同じものが採用されているという点です。
つまり、「最高のタッチ感」を求めるのであれば、CA79を選ぶことでCA701と同等の演奏体験が得られる、ということです。これは中古モデルを選ぶ上で非常に大きなアドバンテージになります。では、具体的に何が違うのか、主要な変更点を比較表で見ていきましょう。
| 特徴 | カワイ CA79 (旧モデル) | カワイ CA701 (後継機) | ピア憎の洞察 |
|---|---|---|---|
| 鍵盤アクション | Grand Feel Action III | Grand Feel Action III | 全く同じ。タッチ感は同等。 |
| メインピアノ音源 | SK-EX コンサートグランド | SK-EX コンペティショングランド | 音のキャラクターが違う。CA79は重厚で落ち着いた響き、CA701はより明るく輪郭がはっきりした響き。これは完全に好みの問題。 |
| スピーカーシステム | 6スピーカー (ディフューザー付) | 6スピーカー (拡散性が向上) | 基本構成は同じ。CA701でディフューザーの形状などが微調整されているが、劇的な差ではない。 |
| タッチパネル | 5インチ 光沢液晶 | 5インチ アンチグレア液晶 | CA701は光の反射が抑えられ、視認性が向上。指紋も付きにくい。これは明確な改善点。 |
| 筐体デザイン | 高さ94cm (譜面台倒) | 高さ97cm (譜面台倒) | CA701の方が背が高く、よりアップライトピアノらしい堂々としたデザインに。譜面台周りも洗練されている。 |
| 市場価格 (目安) | 中古: 13〜18万円前後 | 新品: 25万円〜 | 約10万円以上の価格差。コストパフォーマンスではCA79が圧倒的に有利。 |
中古相場と賢い買い方
カワイCA79の中古価格は、その個体の状態、年式、付属品の有無、そして何より販売経路によって大きく変動します。賢い買い物をするためには、まずこれらの相場観を掴んでおくことが重要です。
販売経路別の価格相場とメリット・デメリット
- 楽器店の整備済み中古品: 約16万円 〜 19万円程度
- メリット: 専門スタッフによる点検・整備済みで安心感が高い。多くの場合、3ヶ月〜1年程度の保証が付く。配送・設置まで任せられる。
- デメリット: 個人売買に比べて価格は高め。
- 個人売買(メルカリ、ヤフオクなど): 約12万円 〜 15万円程度
- メリット: 最も安く手に入れられる可能性がある。掘り出し物が見つかることも。
- デメリット: 状態の判断が自己責任。保証がなく、トラブルのリスクも。配送手配を自分で行う必要があり、結果的に高くつくケースも。
私の個人的な意見としては、特に電子ピアノのような精密機器の購入に慣れていない方は、多少価格が高くても保証が付いている楽器店での購入を強くおすすめします。購入後の安心感が全く違います。
失敗しない!中古購入時のチェックリスト
もし店頭で実物を確認できる、あるいは個人売買で出品者に質問できる機会があれば、以下のポイントは必ずチェックしてください。
これらのポイントを丁寧に確認することで、購入後の「こんなはずじゃなかった…」という事態を未然に防ぐことができます。
故障?クリック音などのトラブル
中古の電子ピアノを検討する際に、多くの方が不安に感じるのが「故障」のリスクだと思います。特に、カワイの木製鍵盤モデルで時々インターネット上で話題になるのが、特定の鍵盤を弾いた時に発生する「カチッ」「コトッ」という物理的な異音、通称「クリック音」の問題です。
クリック音の正体と対処法
まず知っておいていただきたいのは、このクリック音は、電子回路の故障といった深刻なものではなく、多くの場合、アクション機構の調整で改善可能だということです。木材は湿度や温度の変化によってわずかに収縮・膨張します。その影響や、長年の演奏による振動で、内部のアクション部品を固定しているネジがごくわずかに緩んでしまうことがあります。この緩みが、部品同士が接触する際の異音(クリック音)の主な原因と考えられています。
もし購入したCA79でクリック音が発生した場合の対処法は、以下の通りです。
- 購入店に相談する: 保証付きの中古品であれば、まずは購入した楽器店に連絡しましょう。保証期間内であれば、無償で出張修理・調整をしてもらえるはずです。
- メーカーの修理窓口に相談する: 保証がない場合や個人売買で購入した場合は、カワイの公式修理サポートに連絡します。専門の技術者が原因を特定し、適切な調整を行ってくれます。(この場合は有償修理となります)
その他のマイナートラブルと初期対応
クリック音以外にも、万が一のトラブルに備えて基本的な初期対応を知っておくと安心です。
- 電源が入らない: 電源アダプタやケーブルが、本体とコンセントにしっかり差し込まれているか、まずは確認しましょう。意外とこれが原因のことが多いです。
- 音が出ない: 本体ボリュームやヘッドホンの音量がゼロになっていないか確認。ヘッドホンを挿している場合は、一度抜いてみて本体スピーカーから音が出るか試してみましょう。
- 動作がおかしい・フリーズする: 一度電源をオフにし、電源プラグをコンセントから抜いて数分間放置する「放電リセット」を試してみてください。これで改善することがあります。
アップデートで性能を維持する方法
カワイCA79は、単なるハードウェアの塊ではありません。その動作の多くは内部のソフトウェアによって制御されており、このソフトウェアを最新の状態に保つことで、楽器の性能を最大限に引き出し、長く快適に愛用し続けることができます。中古で購入した場合、ファームウェアが古いバージョンのままになっている可能性が高いので、ぜひアップデートを行いましょう。
アップデートの重要性:特に「v2.08」は画期的!
カワイはCA79の発売後も、ユーザーからのフィードバックを元に、何度か機能改善や不具合修正を含むソフトウェア・アップデートをリリースしています。その中でも、特に重要で画期的なのが、2021年10月に公開されたバージョン「v2.08」です。
このアップデートの最大の目玉は、ピアノの音色を専門の調律師のように細かく調整できる「バーチャルテクニシャン」機能の中に、新たに「ユーザー」という項目が追加されたことです。これが何を意味するかというと、88ある鍵盤一つひとつの音量(ボイシング)、音程(チューニング)、そしてタッチに対する反応(タッチカーブ)を、個別に微調整して保存できるようになったのです。
例えば、長年弾き込むうちに「このソの音だけ、なんだか少し音が大きく(または小さく)感じるな…」とか、「部屋の反響のせいで、このあたりの音域が少しこもって聴こえるな…」といった、個体差や経年変化、設置環境による微妙な音のばらつきを、ユーザー自身の手で完璧に補正できます。これは、自分の楽器を常に最高のコンディションに保ちたいと願う全てのピアニストにとって、まさに夢のような機能と言えるでしょう。
アップデートの実行手順
アップデート作業は、PCとUSBメモリがあれば、誰でも簡単に行うことができます。
- アップデートファイルのダウンロード: まずは、PCでカワイの公式サイトにアクセスし、CA79のサポートページから最新のソフトウェア・アップデートファイルをダウンロードします。(出典:河合楽器製作所 公式サイト ソフトウェアアップデート情報)
- USBメモリの準備: ダウンロードしたファイル(zip形式)を解凍し、中にある更新ファイル(.sys形式)を、空のUSBメモリの最も上の階層(ルートディレクトリ)にコピーします。USBメモリは事前に「FAT32」形式でフォーマットしておく必要があります。
- アップデートの実行: CA79の電源がオフの状態で、USBメモリを本体の「USB to DEVICE」端子に挿入します。その後、鍵盤の一番右にある4つのキー(E, A, B, C)を同時に押しながら電源ボタンを押します。
- 完了まで待つ: 画面にアップデート開始のメッセージが表示されたら、指を離してOKです。アップデートが完了し、自動的に再起動するまで、絶対に電源を切ったりUSBメモリを抜いたりしないでください。
この一手間を加えるだけで、あなたのCA79は最新の性能を手に入れることができます。ぜひ挑戦してみてください。
今、カワイCA79を選ぶべき理由
さて、ここまで様々な角度からカワイCA79を徹底的に分析してきましたが、いよいよ最後の結論です。「発売から数年が経過した今、数多ある電子ピアノの中から、あえて中古のCA79を選ぶべきなのか?」という問いに対し、私の答えは、「YES、間違いなく最高の選択肢の一つです」と自信を持って断言できます。
その最大の理由は、これまで何度も繰り返してきた通り、このピアノが搭載する「Grand Feel III」鍵盤がもたらす、圧倒的にリアルなタッチ感にあります。電子ピアノを選ぶ上で、何を最も重要視するかは人それぞれですが、もしあなたが「アコースティックピアノ、特にグランドピアノに近い本物のタッチで練習すること」を何よりも優先するのであれば、この価格帯でCA79の右に出るモデルは、現行品を含めても見つけるのは難しいでしょう。
後継機であるCA701が、同一の鍵盤アクションを搭載しながらも30万円近い価格帯へとシフトした今、その半額程度で、しかも極めて状態の良い個体が中古市場で手に入るCA79は、まさに「隠れた狙い目」「知る人ぞ知る賢い選択」と言えるのではないでしょうか。
現行モデルの20万円以下の新品(例えばカワイCNシリーズや他社エントリー〜ミドルクラス)を購入する選択肢ももちろんありますが、それらとCA79を比較した場合、鍵盤の構造、材質、そして設計思想の次元が全く異なります。ピアノの上達を目指す上で、日々の練習で触れる鍵盤の質がどれほど重要か、経験者の方なら痛いほどお分かりになるはずです。
この記事が、あなたが最高の電子ピアノと出会うための一助となり、カワイCA79という素晴らしい楽器の真価を知るきっかけになれば、私にとってこれ以上の喜びはありません。


