「PX-S1100って、あれだけ薄いのに本当にピアノとしてちゃんと弾けるの?」。購入前にいちばん気になるのは、たぶんここじゃないでしょうか。
カシオ Privia PX-S1100は、奥行きわずか232mm。ハンマーアクション付き88鍵盤・スピーカー内蔵デジタルピアノの奥行サイズでは、2025年7月現在、カシオ調べで世界最小とされています。見た目だけなら、一般的な電子ピアノというより、かなりスタイリッシュなデジタル機器に近い印象ですよね。
だからこそ、「薄くした代わりに鍵盤を妥協しているんじゃない?」「スピーカーも小さくて音が軽そう」「初心者にはいいけど、経験者には物足りないのでは?」と不安になるのも自然かなと思います。
私は大手楽器店の鍵盤楽器売り場で10年以上、多くの電子ピアノに触れてきました。PX-S1100を見ても、最初は正直なところ「ここまで薄くすると、どこかにしわ寄せが来るんじゃないかな」と感じたんですよ。でも実際に弾いてみると、単なるデザイン家電ではありませんでした。
一方で、手放しで誰にでもおすすめできる機種でもありません。PX-S1100最大の魅力である薄型設計は、鍵盤タッチにも一定の個性を生んでいます。ここを理解しないまま「世界最小」という言葉だけで選ぶと、クラシック経験者ほど違和感を覚える可能性があります。
PX-S1100は、「88鍵ハンマーアクションは欲しい。でも大きな電子ピアノは置きたくない」という人にかなり強い一台です。奥行232mm、11.2kg、電池駆動、Bluetooth Audio/MIDI、USBメモリーへのWAV録音まで備えています。一方、鍵盤の奥側までアコースティックピアノに近い均一なタッチを最優先するなら、FP-30Xなども必ず比較したいところです。
この記事では、鍵盤、音質、スピーカー、Bluetooth、アプリ、ヘッドホン、スタンド、3本ペダルまで、購入前に知っておきたいところをまとめて見ていきます。良いところだけではなく、「ここは人を選ぶな」と感じる部分も含めて解説しますね。
まず現在の販売価格や在庫を確認したい方は、下の商品リンクで各ショップを比較してみてください。PX-S1100はオープン価格なので、販売店や時期によって価格差があります。本体だけなのか、スタンド付きなのかも確認しておくのがポイントですよ。
PX-S1100の基本スペック

細かいレビューに入る前に、PX-S1100の基本スペックを整理しておきましょう。数字を全部覚える必要はありませんが、奥行232mm・11.2kg・最大同時発音数192音・8W+8Wあたりは、競合機と比較するときの基準になります。
| 項目 | PX-S1100 |
|---|---|
| 鍵盤 | 88鍵 スマートスケーリングハンマーアクション鍵盤 |
| 音源 | マルチ・ディメンショナル・モーフィングAiR音源 |
| 最大同時発音数 | 192音 |
| 音色数 | 18音色 |
| スピーカー | 16cm×8cm楕円形×2 |
| アンプ出力 | 8W+8W |
| サイズ | 幅1,322×奥行232×高さ102mm |
| 重量 | 11.2kg(本体のみ・電池含まず) |
| Bluetooth | Audio/MIDI(付属WU-BT10使用) |
| 録音 | MIDI録音/USBメモリーへのWAV録音 |
| 電池駆動 | 単3形アルカリ乾電池6本・約4時間 |
| 付属ペダル | SP-3 |
| 対応3本ペダル | SP-34(別売) |
こうして見ると、単に「薄い電子ピアノ」ではなく、ポータブルモデルとしてかなり機能を詰め込んでいるのがわかります。特に11.2kgという重量と乾電池駆動は、据え置きだけでなく持ち運びも想定している人には大きな意味があります。
鍵盤タッチを本音レビュー
薄型でもハンマー式88鍵
PX-S1100を評価するとき、やっぱり最初に見るべきなのは鍵盤です。搭載されているのは「スマートスケーリングハンマーアクション鍵盤」。白鍵は象牙調、黒鍵は黒檀調の表面仕上げになっています。
ここで大切なのは、「ハンマーアクション」という言葉です。安価なキーボードのように、バネだけで鍵盤を戻す軽い構造ではありません。カシオはハンマーの自重によるアクション機構を小型化し、この奥行232mmのボディに収めています。
ピア憎88鍵のピアノタッチが欲しいけれど、大型の据え置き電子ピアノは置けない。PX-S1100が強いのは、まさにこの条件です。
実際に鍵盤を弾くと、薄い本体から想像するより、きちんとハンマーの慣性を感じます。鍵盤表面もツルツルしただけの樹脂ではなく、指先が滑りにくい質感になっています。
さらに、PX-S1100は88鍵それぞれについて、重みや発音・消音タイミングの違いをデジタル制御しています。グランドピアノそのものと同じ構造という意味ではありませんが、低音から高音まで全部同じ感触の単純な鍵盤ではない、ということですね。
鍵盤の奥側は好みが分かれる
ただし、ここはかなり大事です。PX-S1100の薄さは魔法ではありません。奥行きを極端に短くしている以上、鍵盤機構にも物理的な制約があります。
アコースティックピアノでは、鍵盤の支点から手前までに十分な長さがあります。支点までの距離が長いほど、鍵盤の手前だけでなく奥側を押したときも、比較的自然な力で弾きやすくなります。
PX-S1100ではボディ自体が非常に浅いため、鍵盤の根元側、つまり黒鍵の間へ指を入れて弾くような場面では、手前側より重さを感じやすいです。ここは省スペース性と鍵盤タッチのトレードオフと考えたほうがわかりやすいかなと思います。
店頭で試すなら、鍵盤の手前だけを弾いて終わらせないでください。黒鍵を含むコードや、鍵盤の奥側へ指を入れるフレーズも弾いてみるのがおすすめです。そこで違和感が少なければ、PX-S1100の薄型設計はかなり大きなメリットになります。
ポップス、コード弾き、弾き語り、趣味のクラシックなら十分楽しめる完成度だと思います。一方、音大受験や高度なクラシック曲を長時間練習し、アコースティックピアノとのタッチ差をできるだけ減らしたいなら、鍵盤奥側の弾き心地まで含めてFP-30Xなどと比較したほうがいいですよ。
音質とスピーカーの実力
AiR音源は表情が自然
音の中心になるのは、カシオの「マルチ・ディメンショナル・モーフィングAiR音源」です。最大同時発音数は192音。家庭練習で普通に使っていて、発音数不足を強く意識する場面はかなり少ないでしょう。
この音源の良さは、「強く弾いたら単純に音量だけが大きくなる」という感じになりにくいところです。打鍵の強さに応じて音色の表情が変化し、音が減衰していく時間の変化まで含めて表現する設計になっています。
ピアノは、鍵盤を押した瞬間だけで音楽が決まるわけではありません。音が立ち上がり、伸び、ほかの弦と共鳴し、消えていく。その途中の表情が自然だからこそ、ゆっくりしたバラードを弾いたときにも電子音っぽさが出にくいんですよね。
ストリングレゾナンスやダンパーレゾナンス、ダンパーノイズ、キーアクションノイズといったアコースティックピアノ特有の要素も設定できます。「音色数が多いほうが高性能」とは限らず、PX-S1100は18音色に絞りながら、ピアノとしての表現をかなり重視した構成です。
8W+8Wでも意外に鳴る
内蔵スピーカーは16cm×8cmの楕円形が2基、アンプ出力は8W+8Wです。数字だけを見ると、11W×2のRoland FP-30Xなどに比べて控えめに見えます。
ただ、家庭の一室で練習する用途なら、単純に「W数が大きければ音が良い」という話でもありません。PX-S1100では、PX-S1000からスピーカーの振動板や内部構造が見直され、高音域のきめ細かさと低音域の余裕を改善したとカシオが説明しています。
私がこのクラスの電子ピアノを見るときは、大音量よりも小さめの音量で弾いたときに音が痩せすぎないかを気にします。自宅では、いつも最大音量で弾けるわけではないからです。PX-S1100は薄型のわりに音の芯が残りやすく、このサイズとのバランスはよく考えられていると感じます。
ホールシミュレーターは4種類、サラウンドは2種類を選択できます。ただしエフェクトは、かければかけるほど良いわけではありません。普段の基礎練習では控えめにして、気持ちよく演奏したいときに残響を足す、くらいの使い分けがいいかなと思います。
Bluetoothとアプリ連携
WU-BT10が標準付属
PX-S1100の便利なところが、ワイヤレスMIDI & AUDIOアダプター「WU-BT10」が付属していることです。本体のUSB Type A端子へ差し込むことで、Bluetooth AudioとBluetooth MIDIの両方が使えます。
Bluetooth Audioは、スマホやタブレットで再生した音楽をPX-S1100のスピーカーから鳴らす機能です。Bluetooth MIDIは音そのものではなく、どの鍵盤をいつ、どの強さで弾いたかという演奏情報をアプリなどとやり取りする仕組みです。
Bluetooth Audioなら、YouTubeや音楽配信サービスのお手本音源をPX-S1100から再生しながら、自分も一緒に弾けます。別にBluetoothスピーカーを置かなくていいので、机まわりをスッキリさせたい人には便利ですよ。
ただし、Bluetooth Audioは構造上どうしても遅延が発生します。音楽を聴いたり、伴奏を流したりする用途には便利ですが、スマホ上のソフト音源を鳴らして、その音をBluetooth Audioで返しながらリアルタイム演奏する、といったシビアな用途には向きません。
低遅延を優先するMIDI制作やDAW連携なら、有線USBを選ぶのが基本です。有線とBluetoothの接続方法やPC側の設定は、PX-S1100のMIDI接続ガイドで詳しくまとめています。
CASIO MUSIC SPACE連携
スマホやタブレットでは、カシオのアプリ「CASIO MUSIC SPACE」を利用できます。PX-S1100ではBluetooth接続時に、ピアノロール、楽譜表示、曲に合わせた演奏、リモートコントローラーなど、対応する機能を利用できます。
このリモートコントローラーが、PX-S1100とはかなり相性がいいんですよね。本体はミニマルな外観を優先しているため、物理ボタンを大量に並べる設計ではありません。細かな設定ではFUNCTIONボタンと鍵盤を組み合わせる操作も使います。
毎日使うグランドピアノ音色だけなら困らないのですが、「タッチ感度を変えたい」「エフェクトを調整したい」「普段使わない設定を変更したい」となると、操作を覚えるのは少し面倒です。アプリ側から視覚的に操作できるのは、スペック表以上に便利なところかなと思います。
録音機能も意外に充実
PX-S1100には、MIDIレコーダーとオーディオレコーダーの2種類があります。
MIDIレコーダーは、演奏情報を本体へ記録する機能です。2トラック、1曲、合計約10,000音符まで録音できます。右手と左手を分けて録るような練習にも使えます。
一方のオーディオレコーダーでは、USB Type A端子に接続したUSBメモリーへ、演奏を16bit/44.1kHzステレオWAVとして保存できます。最大99曲、1曲あたり最大約25分という仕様です。
自分の演奏をスマホ録音ではなく、電子ピアノ内部の音として残したい人には便利ですね。弾いた直後に聞き返すと、自分では気づかなかったテンポの揺れやミスタッチが驚くほどわかります。練習機能としてもかなり実用的です。
PX-S1100ではUSB Type A端子が追加され、USBメモリーへのオーディオ録音が可能になりました。一方、前モデルPX-S1000にあったAUDIO IN端子はPX-S1100ではなくなっています。外部音源を取り込む用途は、基本的にWU-BT10によるBluetooth Audioを使う形です。
ここまでの機能を見て、「自分の使い方ならPX-S1100が合いそうだな」と感じた方は、価格を一度比較してみるといいですよ。本体単品だけでなく、スタンド付きセットかどうかも商品ページで確認してください。
夜のヘッドホン練習は?
マンションやアパートでは、スピーカーよりヘッドホンで弾く時間のほうが長い人もいますよね。PX-S1100は本体前面側にステレオミニのヘッドホン端子を2つ備えています。
2人同時に聞けるので、家族と一緒に演奏を確認したり、簡単なレッスンで先生と生徒が同時に聞いたりできるのは便利です。
一方で、ここは誤解しやすいところです。PX-S1100にはホールシミュレーターやサラウンドなどのサウンドモードがありますが、ローランドの「ヘッドホン・3D・アンビエンス」のような名称の専用ヘッドホン音場機能がPX-S1100に搭載されていると公式仕様からは確認できません。
そのため、ヘッドホン重視で選ぶなら「端子が2つある」だけで判断せず、実際に自分のヘッドホンを持参して試奏するのがおすすめです。電子ピアノは同じ音源でも、ヘッドホンによって低音の量感や高音の刺さり方がかなり変わります。
どのタイプを選べばいいかわからない場合は、電子ピアノ用ヘッドホンのおすすめと選び方も参考にしてみてください。密閉型と開放型では、周囲への音漏れだけでなく、長時間練習したときの聞こえ方も変わります。
スタンドとペダルの選び方

CS-68Pなら本体を固定できる
PX-S1100は机や汎用キーボードスタンドでも使えますが、据え置き中心なら専用スタンドCS-68Pもかなり相性がいいです。
CS-68PではPX-S1100本体をネジで固定できるため、単に机の上へ置くより安定した状態で演奏できます。スタンド使用時のサイズは幅1,324×奥行366×高さ740mm、本体を含む重量は22.3kgです。
ここで意外と重要なのが高さです。PX-S1100は奥行きが23.2cmしかないので、「普通のテーブルに置けばいいや」と考えやすいのですが、テーブルの天板が高いと鍵盤面も高くなります。すると肩が上がり、手首の角度も不自然になりやすいんですね。
短時間遊ぶだけなら机置きでも十分ですが、毎日30分、1時間と練習するなら、鍵盤の高さと椅子の高さまでセットで考えたほうがいいです。薄い電子ピアノだからこそ「どこにでも置ける」のですが、どこに置いても正しい姿勢になるわけではありません。
3本ペダルはSP-34
本体には1本タイプのダンパーペダルSP-3が付属します。とりあえずピアノを始めるならこれでも弾けますが、クラシック曲を練習したり、ハーフペダルまで使いたくなったりすると、3本ペダルが欲しくなってきます。
PX-S1100で使用できる3本ペダルはSP-34です。カシオ公式FAQでも、旧型のSP-32やSP-33は使用できないと案内されています。中古品やフリマで安い3本ペダルを見つけても、型番だけは必ず確認してください。
SP-34ではダンパーペダルのハーフペダルに対応します。踏み込み量によって響きを調整できるので、単純なON/OFFだけのペダルより表現の幅が広がります。
CS-68PはPX-S1100本体を固定するための専用スタンドです。一方、SP-34は独立した3本ペダルユニットで、据え置き電子ピアノのようにスタンドへ一体固定する専用ペダルボードではありません。設置する床材によっては位置が動かないかも確認しておきましょう。
自宅で据え置き中心なら、PX-S1100本体だけでなくCS-68Pまで含めて価格を比較するのがおすすめです。「あとでスタンドを追加したら予算オーバーだった」という失敗を避けやすくなります。
PX-S1100のデメリット
ここまで読むと、かなり万能な電子ピアノに見えるかもしれません。でも、購入前に知っておきたい弱点もあります。むしろ、ここを納得できるかどうかがPX-S1100選びでは大切です。
鍵盤奥側は重さを感じる
最大の注意点は、やはり鍵盤奥側のタッチです。極薄設計との引き換えに、アコースティックピアノや奥行きのある上位電子ピアノとは感触が違います。
黒鍵を多用するクラシック曲や、奥側まで深く指を入れて高速パッセージを弾く人ほど、この差には気づきやすいと思います。
だからといって「PX-S1100の鍵盤は悪い」と決めつけるのも違います。むしろ、奥行232mmまで薄くしながらハンマーアクション88鍵を成立させるための設計上の性格と考えるのが妥当です。
操作はアプリ前提だと楽
もうひとつは操作性です。フラットなタッチパネルは見た目がとてもきれいですが、すべての機能に専用ボタンがあるわけではありません。
音色や設定を頻繁に変える人には、「FUNCTIONを押しながら鍵盤を押す」という操作を面倒に感じる可能性があります。一方でCASIO MUSIC SPACEのリモートコントローラーを使えば、かなりわかりやすくなります。
私はこのタイプを選ぶなら、アプリも含めてひとつの製品として考えたほうがいいと思っています。「スマホを使わず、本体の物理ボタンだけで全部操作したい」という人には、別の機種のほうが合うかもしれません。
光沢パネルは指紋が目立つ
これは演奏性能とは関係ありませんが、光沢のあるフラットパネルは指紋が目立ちやすいです。PX-S1100のデザインが好きで選ぶ人ほど、意外と気になる部分かもしれません。
ただ、凹凸の少ないパネルなので拭き取り自体は簡単です。柔らかいクロスを近くに置いておけば、それほど大きな問題ではありません。
競合4機種を比較
PX-S1100だけを見て決めるより、同じ価格帯・用途のライバルと比較したほうが後悔しにくいです。よく候補になるのがRoland FP-30X、Yamaha P-225、Kawai ES120Filoです。
| 項目 | PX-S1100 | FP-30X | P-225 | ES120Filo |
|---|---|---|---|---|
| 鍵盤 | スマートスケーリングHA | PHA-4スタンダード | GHC | RHS |
| 奥行き | 232mm | 284mm | 272mm | 280mm |
| 重量 | 11.2kg | 14.8kg | 11.5kg | 12.5kg |
| 最大同時発音数 | 192 | 256 | 192 | 192 |
| アンプ出力 | 8W+8W | 11W×2 | 7W×2 | 10W×2 |
| Bluetooth Audio | ○ WU-BT10使用 | ○ | ○ 受信のみ | ○ |
| Bluetooth MIDI | ○ WU-BT10使用 | ○ | × | ○ |
| 電池駆動 | ○ | × | × | × |
FP-30Xとの違い
Roland FP-30Xは、PHA-4スタンダード鍵盤を搭載し、エスケープメントも備えています。最大同時発音数256音、11W×2のスピーカーという点も強いですね。
一方で重量は14.8kg、奥行きは284mm。PX-S1100より約5cm深く、約3.6kg重くなります。「持ち運びより鍵盤タッチを優先」という人ならFP-30X、「奥行きと軽さを優先」という人ならPX-S1100が比較しやすいでしょう。
P-225との違い
ヤマハP-225はGHC鍵盤、ヤマハCFXサンプリング音源、VRM Liteを搭載した人気モデルです。奥行272mm、11.5kgなので、PX-S1100ほどではありませんが十分コンパクトです。
注意したいのはBluetooth。P-225は公式仕様上、Bluetoothオーディオ受信には対応しますが、Bluetooth MIDIには対応していません。USB TO HOSTはMIDI/オーディオに対応するので、PCやスマホとの有線接続なら利用できます。
この2機種で迷っているなら、P-225とPX-S1100の比較記事で、鍵盤・音・機能をさらに細かく比べています。
ES120Filoとの違い
Kawai ES120Filoは、レスポンシブ・ハンマー・アクション・スタンダード鍵盤を採用。重量12.5kg、奥行280mmで、Bluetooth AudioとBluetooth MIDIの両方に対応しています。
カワイのピアノらしい音や鍵盤の感触が好きなら、かなり有力な比較候補です。PX-S1100ほど極端な薄型ではありませんが、それでもポータブル電子ピアノとして十分コンパクト。詳しい特徴はES120Filoのレビューで解説しています。
PX-S1100が向く人
設置スペースを最優先したい人、88鍵ハンマーアクションが欲しい人、部屋の見た目も重視する人、大人の再開組、ポップスや弾き語りを楽しみたい人、たまに持ち運びたい人、Bluetooth MIDIも使いたい人には、PX-S1100の特徴がかなり噛み合います。
特に相性がいいと感じるのは、大人になってピアノを再開する人です。「実家にはアップライトがあったけれど、今の部屋には置けない。でも61鍵キーボードでは物足りない」というケースですね。
PX-S1100なら88鍵を確保しながら奥行23.2cm。本体だけなら、使わないときに移動させることも現実的です。「ピアノを置くために部屋を作り替える」のではなく、今の生活へピアノを入れやすい。この点はかなり大きな魅力だと思います。
また、電源のない場所でも単3形アルカリ乾電池6本で約4時間動作します。イベント、小規模な演奏、撮影など、AC電源が確保しにくい場面にも持ち出せます。専用ケースを使えば、11.2kgという重量は88鍵ハンマーアクション機としては比較的扱いやすい部類です。
別機種も比較したい人
クラシック中心で鍵盤奥側の弾きやすさを重視する人、アコースティックピアノとのタッチ差をできるだけ減らしたい人、Bluetoothアダプターを付けずに無線機能を内蔵してほしい人、よりパワフルな本体スピーカーを重視する人は、FP-30X・P-225・ES120Filoも試奏してから決めるのがおすすめです。
特にお子さんがピアノ教室へ通い、先生からアコースティックピアノに近い練習環境を求められている場合は、「コンパクトだから」という理由だけで即決しないほうがいいです。先生の方針によって求める鍵盤タッチも違いますから、可能なら相談してみてください。
購入前に確認したいこと
本体価格だけで決めない
PX-S1100はオープン価格です。実売価格は販売店、キャンペーン、カラー、在庫状況によって変わるため、「○万円なら必ず買い」と固定して考えるより、その時点の複数ショップを比較したほうが確実です。
そして、本体価格だけを見ると予算を読み違えやすいです。たとえば据え置きならCS-68P、本格的にペダルを使うならSP-34、夜練習するならヘッドホンが必要になるかもしれません。
逆に、すでに安定したキーボードスタンドとヘッドホンを持っていて、ペダルは付属SP-3で十分なら、本体だけで始めることもできます。自分に必要なものだけを足すのが、PX-S1100を安く導入するコツです。
置き場所を実測する
「奥行23.2cmなら置けそう」と思っても、譜面立て、ケーブル、演奏するときの椅子、腕を動かすスペースまで考える必要があります。
購入前には本体サイズの幅1,322mmだけでなく、左右に少し余裕を持たせて測ってください。専用スタンドを使う場合は奥行366mmになります。
また、ラインアウト、電源、ペダルなどの接続もあるため、壁に完全に密着させる前提で考えないほうが安心です。
できれば実機を試奏する
スペックだけでは絶対に判断できないのが鍵盤タッチです。特にPX-S1100は、省スペース性と鍵盤奥側の感触がセットになった機種なので、試奏の価値が大きいです。
店頭ではグランドピアノ音色を選び、弱く弾く、強く弾く、黒鍵を含むコードを押さえる、鍵盤奥側を弾く、速いフレーズを弾く、という順番で試してみてください。
5分でも十分です。「この鍵盤なら毎日触りたい」と感じるかどうか。電子ピアノでは、この感覚がスペック表以上に大事ですよ。
PX-S1000との違い
中古でPX-S1000を見つけて、S1100と迷っている人もいると思います。外観と基本コンセプトはかなり似ていますが、S1100にはいくつか実用的な改善があります。
| 項目 | PX-S1000 | PX-S1100 |
|---|---|---|
| Bluetooth | Audio内蔵 | Audio/MIDI(WU-BT10) |
| USB Type A | なし | あり |
| USBメモリーWAV録音 | 非対応 | 対応 |
| AUDIO IN | あり | なし |
| スピーカー | 従来仕様 | 振動板・内部構造を改良 |
特にBluetooth MIDIを使いたい人や、USBメモリーへ演奏をWAV録音したい人はPX-S1100を選ぶ理由があります。一方、単純にピアノとして弾くだけで中古PX-S1000との価格差が大きいなら、状態次第ではS1000を検討する余地もあります。
よくある質問
PX-S1100レビュー総評
カシオ Privia PX-S1100を一言で表すなら、「ピアノのために生活空間を大きく変えたくない人のための、88鍵ハンマーアクション電子ピアノ」だと思います。
奥行232mm、重量11.2kg。それでいて88鍵ハンマーアクション、AiR音源、8W+8Wスピーカー、Bluetooth Audio/MIDI、USBメモリーへのWAV録音、乾電池駆動まで備えています。
この薄さだけを見れば「デザイン優先かな」と思いやすいのですが、実際にはピアノとしてかなり真面目に作られています。楽器店でさまざまな電子ピアノを見てきた私からすると、PX-S1100のおもしろさは、「本格的な据え置き電子ピアノを小さくした」のではなく、最初から現代の住環境に合わせてピアノを作り直したところにあると感じます。
ただし、その薄型化には鍵盤奥側のタッチというトレードオフがあります。ここを無視して「世界最小だから一番いい」と考えるのはおすすめしません。
逆に言えば、試奏して鍵盤タッチに違和感がなく、「この薄さなら毎日出しっぱなしにできる」「このデザインなら部屋に置きたい」と感じたなら、PX-S1100はかなり有力です。
電子ピアノは、スペックが少し上の機種より、毎日自然に座って弾ける一台のほうが、結果的に長く付き合えることがあります。これは私が楽器店で多くのお客様を見てきて強く感じるところです。
購入前には、①置き場所を実測する、②鍵盤の奥側まで試奏する、③本体だけでなくスタンド・ペダル・ヘッドホンを含めた総額を見る。この3点だけは確認してみてください。
条件が合えば、PX-S1100は「部屋が狭いから88鍵ピアノを諦める」という悩みをかなりきれいに解決してくれる一台です。
PX-S1100が自分に合いそうだと感じたら、最後に各ショップの価格・在庫・付属品を比較してみてください。同じPX-S1100でも、本体単品、スタンドセット、椅子やヘッドホン付きなど販売内容が違う場合があります。必要のないセットを買わず、自分の練習環境に合った組み合わせを選ぶのがいちばんですよ。
参考:カシオ Privia PX-S1100公式製品ページ/ヤマハ P-225公式仕様/Roland FP-30X公式製品ページ/カワイ ES120Filo公式製品ページ。製品仕様・価格・付属品・販売状況は変更される可能性があるため、購入時は各メーカーおよび販売店の最新情報をご確認ください。
