電子ピアノの練習にヘッドホンは欠かせない存在である。しかし、電子ピアノに付属しているヘッドホンをそのまま使っていたり、音楽鑑賞用のものを代用していたりしないだろうか。実は、ヘッドホン一つで電子ピアノの音の聴こえ方は大きく変わり、練習の質や快適さに直結する。
音楽鑑賞用ヘッドホンは低音域が強調されるなど、特定の周波数に偏りがあるため、電子ピアノ本来の繊細な音を正確に再現するには不向きな場合がある。電子ピアノの練習では、演奏のニュアンスを忠実に再現するモニターヘッドホンが適している。本記事では、電子ピアノ用ヘッドホンの選び方を、開放型や密閉型といった構造の違いから、モニターヘッドホンがなぜ推奨されるのか、さらにはワイヤレスモデルの遅延問題まで、多角的に解説する。ソニーのMDR-CD900STやオーディオテクニカのATH-M40x、ゼンハイザーのHD 599、ヤマハのHPH-150、ローランドのRH-A7といった人気モデルの評価も交えながら、あなたに最適な一台を見つける手助けをする。
この記事を読むことで、以下の点について理解を深めることができる。
- 電子ピアノ用ヘッドホンの基本的な選び方と構造の違い
- 各メーカーの人気モデルの具体的な特徴と評価
- ワイヤレスヘッドホンのメリットと遅延に関する注意点
- 自分の練習環境や目的に合った最適なヘッドホンの見つけ方
電子ピアノ用ヘッドホン選びの基本と種類

- 電子ピアノ練習におけるヘッドホンの必要性
- 開放型ヘッドホンの特徴とメリット
- 密閉型ヘッドホンの特徴とメリット
- モニターヘッドホンを選ぶべき理由
- ワイヤレスヘッドホンの遅延と注意点
電子ピアノ練習におけるヘッドホンの必要性
電子ピアノが持つ最大の利点の一つは、ヘッドホンを使用することで時間や場所を選ばずに練習できる点である。これにより、深夜や早朝、集合住宅といった音に配慮が必要な環境でも、周囲を気にすることなく思う存分演奏に集中できる。
しかし、ヘッドホンの役割は単に音を外部に漏らさないことだけではない。質の高いヘッドホンを使うことで、電子ピアノ本体のスピーカーでは聞き取りにくい、演奏の微細なニュアンスやディテールを明確に捉えることが可能になる。ペダルの踏み加減による響きの変化や、タッチの強弱がもたらす音色の違いを正確に聞き分けることは、表現力を磨く上で極めて重要である。
多くの電子ピアノにはヘッドホンが付属しているが、これらは簡易的なものが多く、長時間の使用で耳が痛くなったり、音質に物足りなさを感じたりすることがある。実際に、カワイのCA401に付属するヘッドホンの音質に驚いたという口コミもある。適切なヘッドホンを選ぶことは、快適な練習環境を整え、演奏技術の向上をサポートするために不可欠である。
ヘッドホン選びを誤ると、練習の質が低下するだけでなく、耳への負担が増加する可能性もある。例えば、低音域が不自然に強調された音楽鑑賞用のヘッドホンでは、ピアノ本来のバランスの取れた音色を正確に把握できず、正しいタッチを習得する妨げになりかねない。したがって、電子ピアノの性能を最大限に引き出し、効果的な練習を行うためには、楽器の特性に合ったヘッドホンを慎重に選ぶ必要がある。
開放型ヘッドホンの特徴とメリット
開放型ヘッドホンは、オープンエアー型とも呼ばれ、ハウジング(耳を覆う部分の外側)がメッシュ状などの開口部を持つ構造になっている。この構造により、空気が自由に出入りできるため、音が内部にこもることがない。
自然で広がりのあるサウンド
開放型の最大のメリットは、その自然で広がりのあるサウンドステージである。音がこもらないため、まるでスピーカーで聴いているかのような開放感があり、ピアノの響きをリアルに感じることができる。特にクラシックや器楽曲のような、楽器の分離や空間表現が重要な音楽の再生に適している。密閉型ヘッドホンで感じられるような「頭の中で音が鳴っている」感覚とは異なり、「自分の周りで演奏されている」ような臨場感を得られるのが特徴だ。
長時間使用でも疲れにくい快適な装着感
空気の通り道があるため、熱や湿気がこもりにくく、長時間の練習でも耳が蒸れにくい。これにより、快適な装着感を維持しやすく、聞き疲れしにくいという利点がある。本体重量が軽いモデルも多く、側圧(頭を締め付ける力)も比較的弱めに設計されているため、身体的な負担が少なく、練習に集中しやすい。実際に、多くの楽器用ヘッドホンで長時間の快適性を重視した開放型モデルがラインナップされている。
周囲の音が聞こえることの利便性
ハウジングに開口部があるため、外部の音もある程度聞こえる。これは、練習中に家族からの呼びかけに応えたり、インターホンの音に気づいたりする必要がある場合に便利である。また、レッスン中に講師のアドバイスを聞きながら演奏するなど、コミュニケーションを取りながらの練習にも適している。
デメリット:音漏れと遮音性の低さ
開放型の構造的な特徴は、メリットであると同時にデメリットにもなり得る。音が外部に漏れやすいため、静かな環境で近くに人がいる場合、練習の音が迷惑になる可能性がある。そのため、家族がいるリビングや深夜の練習など、音漏れが気になる状況での使用には注意が必要である。同様に、外部の音も聞こえやすいため、交通量の多い道路の近くや生活音が大きい環境では、練習への集中が妨げられる可能性がある。自分の練習環境が、開放型のデメリットを許容できるかどうかを事前に確認することが重要である。
密閉型ヘッドホンの特徴とメリット
密閉型ヘッドホンは、クローズド型とも呼ばれ、ハウジングが固いシェルで完全に覆われており、外部と音響的に隔離されている構造を持つ。この構造が、密閉型ならではの音響特性と利便性を生み出している。
高い遮音性と音漏れの少なさ
密閉型の最大のメリットは、その高い遮音性にある。ハウジングが外部の音を物理的に遮断するため、周囲の騒音に邪魔されずに演奏に深く集中することができる。交通量の多い場所や、家族がテレビを見ているリビングなど、騒がしい環境で練習する場合に特にその効果を発揮する。
同時に、内部の音が外に漏れにくいという特徴も持つ。これにより、深夜や早朝の練習、あるいは公共の場での使用など、周囲への音漏れを最小限に抑えたい場合に最適である。自分の演奏が他人に聞かれる心配がないため、心理的な制約なく練習に没頭できる。
力強い低音再生と細かな音の再現性
密閉されたイヤーカップは、音、特に低音域のエネルギーを効率的に耳に届けるため、パワフルで深みのある低音再生が可能となる。また、外部ノイズが少ない環境で聴くことができるため、ピアニッシモのようなごく小さな音や、演奏の細かなニュアンス、余韻までもしっかりと聞き取ることができる。自分の演奏を詳細に分析し、表現力を磨きたいと考える奏者にとって、この没入感は大きな利点となる。
デメリット:長時間の使用による疲れと音のこもり
一方で、密閉型にはいくつかのデメリットも存在する。空気が流れない構造上、イヤーカップ内に熱や湿気がこもりやすく、長時間の使用で耳が蒸れたり、熱く感じたりすることがある。これにより、数時間ごとに休憩を取る必要が生じる場合がある。
また、側圧が強めに設計されているモデルが多く、長時間の装着で頭や耳に圧迫感を感じ、疲れやすいと感じる人もいる。特にメガネをかけている場合、フレームが圧迫されて痛みを感じることもある。
音質面では、音が内部で反響しやすいため、開放型に比べてサウンドステージが狭く、音がこもって聞こえる傾向がある。この「頭の中で鳴っている」ような感覚は、人によっては不自然に感じられることがある。これらのデメリットを軽減するため、イヤーパッドの素材や大きさ、本体重量などを考慮して、できるだけ快適な装着感のモデルを選ぶことが重要である。
モニターヘッドホンを選ぶべき理由

電子ピアノの練習用としてヘッドホンを選ぶ際、「モニターヘッドホン」という種類が特に推奨される。これは、一般的な音楽鑑賞を目的とした「リスニング用(オーディオ用)ヘッドホン」とは設計思想が根本的に異なるためである。
原音に忠実なフラットな音質
モニターヘッドホンの最大の特徴は、原音をありのままに、脚色なく再生することを目的としている点にある。特定の音域を強調するようなチューニングは施されておらず、低音から高音までバランスの取れたフラットな周波数特性を持つ。この特性により、電子ピアノが本来持つ音色や、演奏者のタッチによる繊細な音の変化を正確に聞き取ることができる。
一方、多くのリスニング用ヘッドホンは、音楽をより楽しく、迫力あるものに感じさせるため、低音域や高音域を強調するなどの「味付け」がされている。このようなヘッドホンで練習すると、ピアノ本来のサウンドバランスを誤って認識してしまい、正しい演奏表現の習得を妨げる可能性がある。
演奏の細部を確認できる高い解像度
モニターヘッドホンは、音の分離(セパレーション)に優れ、一つ一つの音の輪郭をはっきりと捉えることができる。これにより、複雑な和音の中の特定の音や、ペダリングによる響きの変化、ミスタッチなどを明確に識別することが可能になる。プロのレコーディングスタジオでSONYのMDR-CD900STのようなモニターヘッドホンが標準的に使われているのは、まさにこの正確な音のモニタリング能力が求められるからである。
長時間使用を想定した設計
モニターヘッドホンは、プロの現場での長時間使用を前提に設計されていることが多い。そのため、軽量で側圧が適切に調整されており、疲れにくい装着感を持つモデルが多い。また、耐久性が高く、イヤーパッドなどの消耗品が交換可能な製品も多いため、長期間にわたって愛用することができる。
電子ピアノの練習は、自分の出した音を正確に聞き取り、それを改善していく作業の繰り返しである。そのためには、楽器の音を忠実に再現してくれるモニターヘッドホンが最適なツールとなる。
ワイヤレスヘッドホンの遅延と注意点
ワイヤレスヘッドホンはケーブルの煩わしさから解放され、非常に快適な練習環境を提供する。演奏中の体の動きを妨げず、見た目もすっきりするため、特に演奏動画の撮影やライブ配信を行う奏者にとっては大きな魅力となる。しかし、電子ピアノの練習にワイヤレスヘッドホンを使用する際には、「音の遅延(レイテンシー)」という重大な問題に注意が必要である。
Bluetooth接続の遅延問題
現在、市場で主流となっているワイヤレスヘッドホンの多くはBluetooth接続を採用している。Bluetoothはスマートフォンでの音楽鑑賞などには非常に便利だが、音声データを圧縮・伝送・復元する過程で必ず遅延が発生する。一般的なBluetooth(AACコーデック)では約0.12秒(120ミリ秒)もの遅延が生じるとされ、これは鍵盤を弾いてから音が聞こえるまでに顕著なズレとして感じられるレベルである。人間は一般的に0.02秒(20ミリ秒)を超える遅延で違和感を覚え始めると言われており、この遅延は正確なリズムでの演奏を著しく困難にする。
多くの電子ピアノに搭載されているBluetooth機能は、スマートフォンなどの外部音源をピアノのスピーカーで再生するための「受信」機能が主であり、ピアノの演奏音をヘッドホンに「送信」することを想定していない。
遅延を克服する専用ワイヤレスシステム
この遅延問題を解決するために、楽器演奏専用に開発された超低遅延のワイヤレスヘッドホンシステムが存在する。これらの製品はBluetoothとは異なる独自の無線技術(赤外線や2.4GHz帯デジタル通信など)と専用のトランスミッター(送信機)を使用する。
例えば、オーディオテクニカの「ATH-EP1000IR」はハイブリッド赤外線システムを採用し、遅延を0.001秒以下に抑えている。また、ヤマハの「YH-WL500」は2.4GHz帯の独自無線技術で、遅延を4ミリ秒以下に実現している。これらのシステムでは、トランスミッターを電子ピアノのヘッドホン端子に有線で接続し、そこからヘッドホン本体へ無線で音声を送信する。遅延は人間が体感できないレベルにまで抑えられており、有線接続とほぼ変わらない感覚で演奏が可能である。
導入の際の注意点
これらの専用ワイヤレスヘッドホンは非常に高性能だが、一般的な有線ヘッドホンやBluetoothヘッドホンに比べて価格が高価になる傾向がある。また、バッテリーで駆動するため、充電が必要であり、連続使用可能時間も確認しておく必要がある。ただし、多くのモデルではバッテリー切れの際に有線接続に切り替えられるよう、ケーブルが付属している。ワイヤレスの快適性は非常に魅力的だが、これらの特性を理解した上で、自身の予算や練習スタイルに合った製品を選ぶことが重要である。
電子ピアノ用ヘッドホンのおすすめモデル

- SONY MDR-CD900STの評価
- オーディオテクニカ ATH-M40xの評価
- ゼンハイザー HD 599の評価
- ヤマハ HPH-150の評価
- ローランド RH-A7の評価
- 最適なヘッドホンで電子ピアノ演奏を楽しもう
SONY MDR-CD900STの評価
SONY MDR-CD900STは、1989年の発売以来、日本の多くのレコーディングスタジオで「業界標準」として使われ続けている、伝説的なモニターヘッドホンである。プロの現場で絶大な信頼を得ているこのモデルは、電子ピアノの練習においてもその真価を発揮する。
原音に忠実なサウンド
MDR-CD900STの最大の特徴は、音源が持つ情報を一切脚色せず、極めて正確に再生する能力にある。独自開発のドライバーユニットは、音の輪郭を鮮明に描き出し、微細な音の変化や広がりまで忠実に表現する。これにより、電子ピアノの繊細な音色や、演奏者のタッチによるニュアンスの違いをありのままにモニタリングすることが可能だ。低音を不自然に強調することがないため、ピアノ本来のバランスの取れたサウンドを正確に把握し、練習することができる。
優れた定位感と解像度
このヘッドホンは音の定位、つまり音がどの方向から聞こえるかを非常に明確に表現する。左右のパンニングはもちろん、リバーブのかかり具合から生まれる前後の距離感、周波数バランスによる上下の配置感まで、音の空間的な位置を正確に捉えることができる。この高い解像度は、自分の演奏を客観的に分析し、表現を磨き上げる上で強力な武器となる。
プロ仕様の堅牢性と実用性
プロの過酷な使用環境に耐えうるよう、堅牢な作りになっている。また、長年のロングセラー製品であるため、イヤーパッドなどの交換部品が容易に入手でき、メンテナンス性が高いのも大きな利点だ。長時間の使用を想定し、約200gと軽量に設計されており、側圧も適切で疲れにくい。
注意点
MDR-CD900STは業務用として開発されたため、一般的なヘッドホンとはいくつかの点で仕様が異なる。プラグは6.3mm標準プラグであり、3.5mmミニジャックに接続するには変換アダプタが必要になる。また、ケーブルは着脱式ではなく、折りたたみ機構もない。音質面では、そのあまりにもフラットで分析的なサウンドが、人によっては「音楽的な楽しさに欠ける」と感じられる可能性もある。
しかし、電子ピアノの音をありのままに聞き、演奏技術を向上させたいと真剣に考える奏者にとって、プロと同じ基準で音を判断できるMDR-CD900STは、非常に価値のある選択肢と言えるだろう。インピーダンスは63Ωとなっており、多くの電子ピアノで問題なく駆動できる。
オーディオテクニカ ATH-M40xの評価
オーディオテクニカのATH-Mシリーズは、プロの現場から個人の音楽制作まで幅広く支持されているモニターヘッドホンである。その中でもATH-M40xは、優れたコストパフォーマンスとバランスの取れた性能で、電子ピアノの練習用としても非常に人気の高いモデルだ。
バランスの取れたフラットな音質
ATH-M40xの最大の魅力は、その全周波数帯域にわたってフラットで自然なサウンドである。多くの密閉型ヘッドホンが低域を強調しがちなのに対し、M40xは特定の音域を誇張することなく、原音に忠実なモニタリングを可能にする。この特性は、クラシックやインストゥルメンタル音楽の再生に非常に適しており、電子ピアノの繊細な音色やダイナミクスを正確に捉えることができる。上位モデルのATH-M50xがより力強い低音レスポンスを持つとされるのに対し、M40xのよりニュートラルなサウンドは、ピアノ練習にはむしろ好ましいと評価されている。
快適な装着感と高い遮音性
プログレードの素材を使用したイヤーパッドとヘッドバンドは、快適な装着感と高い耐久性を両立している。耳全体を覆うオーバーイヤー型であり、密閉型構造と合わせて優れた遮音性を発揮する。これにより、周囲の騒音を効果的に遮断し、演奏に深く集中することが可能だ。音漏れも少ないため、時間を気にせず練習できる。
高い実用性とコストパフォーマンス
ATH-M40xは、実用面でも多くの工夫が凝らされている。ハウジング部分は90度回転するスイベル機構を備えており、片耳でのモニタリングにも対応する。また、用途に応じて使い分けられるように、ストレートとコイル状の2種類の着脱式ケーブルが付属するのも大きな利点だ。これにより、万が一の断線時にもケーブル交換で対応できる。ヘッドバンドは折りたたみが可能で、コンパクトに収納・持ち運びができる。
これらの高品質な性能と実用性を備えながら、比較的手頃な価格で入手できる点が、ATH-M40xが広く支持される理由である。
注意点
密閉型であるため、サウンドステージ(音の広がり)は開放型ヘッドホンに比べるとやや狭く感じられることがある。また、遮音性は平均的で、非常に騒がしい環境での使用には限界があるかもしれない。それでも、電子ピアノの練習用として必要な性能は十分に満たしており、初心者から上級者まで、幅広い層におすすめできるバランスの取れた一台と言えるだろう。
ゼンハイザー HD 599の評価
ゼンハイザーはドイツの老舗音響機器メーカーであり、そのヘッドホンは世界中のオーディオファンから高い評価を得ている。HD 599は、同社のHD 500シリーズの中でも特に人気が高く、電子ピアノの練習用としても多くのユーザーに選ばれているモデルである。
卓越したサウンドステージと自然な音質
HD 599は開放型ヘッドホンであり、その最大の魅力は広大で立体的なサウンドステージにある。ゼンハイザー独自のトランスデューサー技術と「E.A.R. (Ergonomic Acoustic Refinement)」テクノロジーにより、音が耳に直接届くのではなく、まるで自分の周りの空間で鳴っているかのような、自然で臨場感あふれる音響体験を提供する。楽器の音が様々な方向から聞こえ、素晴らしい奥行きと分離感を生み出すため、特にクラシック音楽やインストゥルメンタル曲の演奏に適している。音質はニュートラルでバランスが良く、クリアな高音と中音、そして開放型としては十分な質を持つ低音を再生する。
究極の快適性
装着感の良さもHD 599が絶賛される大きな理由の一つである。大型のイヤーカップは耳全体を優しく包み込み、厚手で豪華なベロア素材のイヤーパッドは、肌触りが非常に柔らかく、通気性にも優れている。これにより、長時間の練習でも圧迫感や蒸れを感じにくく、「ヘッドホンを着けていることを忘れる」ほどの快適さを実現している。
デザインと付属品
アイボリーとブラウンを基調とした洗練されたデザインも特徴的である。付属品として、電子ピアノなどの音響機器に直接接続できる6.3mmプラグ付きの3mケーブルと、ポータブル機器向けの3.5mmプラグ付き1.2mケーブルの2種類が同梱されており、様々な用途に対応できる。
注意点
開放型であるため、構造上、音漏れは避けられない。また、外部の音を遮断する効果もほとんどないため、静かな環境での使用が前提となる。本体がやや大きくかさばるため、持ち運びには向いていない。
しかし、自宅の静かな環境で、最高の快適さと自然で広がりのあるサウンドを求め、電子ピアノの練習に没頭したい奏者にとって、ゼンハイザー HD 599は非常に満足度の高い選択肢となるだろう。
ヤマハ HPH-150の評価
ヤマハは世界的な楽器メーカーとして、電子ピアノ本体だけでなく、その音を最適に再生するためのアクセサリー開発にも力を入れている。HPH-150は、ヤマハが電子楽器の音色を忠実に再現することを目指して開発した、楽器演奏用の開放型モニターヘッドホンである。
楽器の音色を忠実に再現するチューニング
HPH-150は、電子楽器のサウンドをありのままに、クリアかつナチュラルに再生することに特化して設計されている。特定の音域を強調することなく、低音から高音までフラットでバランスの取れた音質が特徴だ。これにより、電子ピアノが持つ本来の豊かな音色や繊細な表現を正確にモニタリングすることができる。ハウジング部に設けられた特殊なフィン構造が空気の流れを最適化し、重心の低い安定した音質を実現している。
長時間練習を支える快適な装着感
長時間の練習でも疲れにくいように、快適な装着感が追求されている。約163gという軽量設計に加え、耳に優しくフィットするベロア素材のイヤーパッドを採用。肌触りが良く、通気性にも優れているため、蒸れにくく快適な状態を保つことができる。また、ハウジング部分は耳の角度に合わせて調整できるスイベル機構を備えており、個々のユーザーに最適なフィット感を提供する。
演奏に配慮した実用的な設計
ケーブルは、演奏の邪魔になりにくい片出しタイプを採用している。プラグは3.5mmステレオミニプラグだが、多くの電子ピアノに採用されている6.3mm標準ジャックに対応するための変換プラグが付属しており、幅広い機器で使用可能だ。
開放型としての特性
開放型であるため、音がこもらず自然な広がりを持つ一方で、音漏れが生じやすく、外部の音も聞こえやすいという特性がある。そのため、静かな室内での個人練習に向いている。
ヤマハの電子ピアノを使用しているユーザーはもちろんのこと、楽器本来の音を素直に聞きながら、快適に長時間の練習に取り組みたいと考えているすべての電子ピアノ奏者にとって、HPH-150は非常にコストパフォーマンスの高い選択肢と言えるだろう。
ローランド RH-A7の評価
ローランドもまた、電子ピアノやシンセサイザーなどの電子楽器で世界的に知られるメーカーである。RH-A7は、同社がデジタルピアノなどの電子楽器演奏に最適化した開放型(オープンエアー)のモニターヘッドホンであり、ロングセラーモデルとして根強い人気を誇る。
電子楽器に最適化されたサウンド
RH-A7は、ローランドのピアノが持つ表現力やダイナミックレンジを素直に再生できるよう特別に設計されている。煌めくような高音から、存在感のある低音まで、バランス良くナチュラルに再生する能力を持つ。電子楽器メーカー自身が手がけたヘッドホンならではの、楽器との相性の良さが最大の強みである。40mmのドライバーを搭載し、クリアで自然なサウンドは、ピアニッシモの繊細なタッチからフォルテッシモの力強い打鍵まで、演奏のニュアンスを余すところなく捉える。
快適な装着感とレッスンでの利便性
開放型構造のため、音がこもらず、長時間の練習でも聞き疲れしにくい。本体重量は約200gと軽量で、通気性の良い構造は快適な装着感を維持するのに役立つ。特に、柔らかい布製のイヤーパッドは着け心地が良く、安定したフィット感を提供する。
また、開放型であるため外部の音が聞こえやすいという特性は、レッスンにおいて大きなメリットとなる。ヘッドホンを装着したまま講師のアドバイスを聞き取ったり、会話をしたりすることが可能で、スムーズなコミュニケーションを妨げない。
実用的な仕様
ケーブル長は3mと十分に余裕があり、演奏中の動きを妨げにくい。プラグは3.5mmステレオミニプラグで、6.3mm標準プラグへの変換アダプタも付属しているため、ほとんどの電子ピアノに接続できる。
注意点
開放型であるため、音漏れは避けられず、遮音性も低い。そのため、使用する環境を選ぶヘッドホンであると言える。しかし、自宅での個人練習やレッスンといった、電子ピアノの主な使用シーンにおいては、そのデメリットよりも快適性やコミュニケーションの取りやすさといったメリットが上回る場合が多いだろう。

最適なヘッドホンで電子ピアノ演奏を楽しもう
電子ピアノの練習において最適なヘッドホンを選ぶことは、単に音を聴く以上の重要な意味を持つ。本記事で解説したポイントを以下にまとめる。
- 電子ピアノの練習には、原音に忠実なモニターヘッドホンが最適である。
- 開放型は自然な音の広がりと快適な装着感が魅力だが、音漏れに注意が必要だ。
- 密閉型は高い遮音性で練習に集中できるが、長時間の使用で疲れやすい場合がある。
- ワイヤレスは快適だが、Bluetooth接続は遅延が大きく、楽器練習には専用の超低遅延モデルが必須となる。
- SONY MDR-CD900STはプロ標準の正確無比なサウンドを提供する。
- オーディオテクニカ ATH-M40xはフラットな音質と実用性を両立した高コストパフォーマンスモデルである。
- ゼンハイザー HD 599は広大なサウンドステージと究極の快適性を誇る。
- ヤマハ HPH-150は電子楽器の音を忠実に再現するために開発されたモデルだ。
- ローランド RH-A7は楽器メーカーならではのチューニングとレッスンでの利便性が特徴である。
- 自分の演奏環境、練習時間、予算、そして求める音質を総合的に考慮することが重要だ。
- ヘッドホンのインピーダンス(抵抗値)も音量に影響するため、確認すると良い。
- イヤーパッドの素材(ベロア、レザーなど)は装着感や蒸れにくさに影響する。
- ケーブルの長さやプラグの形状(L字型など)も使い勝手を左右する要素である。
- 可能であれば、実際に楽器店で試聴し、装着感や音質を確かめることが最も確実な選び方だ。
- 適切なヘッドホンは、演奏の細かなニュアンスを聞き取る助けとなり、技術向上に直結する。